こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週、福岡県久留米市にあるバイオベンチャーや、県の工業技術センターなどを取材してきました。全てではありませんが、既に幾つか日経バイオテクONLINEに掲載したのでぜひ記事をお読みください。

福岡県生食研、地元企業に有用な商品開発目指して県産品の食材ライブラリ作製
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120220/159652/

 福岡県工業技術センターの生物食品研究所は、県内に4カ所ある工業技術センターの研究所の1つで、主に、食品やバイオ分野で、県内中小企業の技術開発、製品開発に寄与する目的で研究開発に取り組んでいる組織です。

 この研究所は2000年に大きな発見をします。昆虫に対して毒性を示し、微生物農薬や遺伝子組み換え作物(GMO)に利用されるバチルス属の細菌Bacillus thuringiensisに着目して1990年ごろからその株を集めるなど研究を行っていたのですが、あるタイプのB. thuringiensisが有する結晶性たんぱく質が、ヒトのがん細胞に選択的な毒性を示すことを見いだし、パラスポリンと名付けました。

 この発見は国際的にも注目されたようで、世界各国で同様の発見が相次ぎ、パラスポリン国際分類命名委員会が立ち上がりました。2001年には、B. thuringiensisの発見100周年を記念した国際会議がパラスポリン発見の地である久留米市で開かれています(ちなみに、1901年にB. thuringiensisを発見したのも石渡繁胤という日本人でした)。その後、パラスポリンの構造や、受容体、抗腫瘍のメカニズムなどが解析され、生物食品研究所でも大手製薬企業と共同で医薬品として利用する研究を進めてきたといいます。下記の記事などはその研究成果の1つでしょう。

記者発表、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、正常細胞にダメージが少ない新しい抗がんタンパク質を開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9620/

 ところが、医薬品という出口を目指すと、共同研究の相手は大手製薬企業となり、地元の中小企業の経営に貢献することにつながっていきません。赤尾哲之所長は、「パラスポリンから医薬品を生み出すのをあきらめたわけではないけれど、地元企業の役に立つのか考え直した」と口にします。

 そこで現在、同研究所では、B. thuringiensisを研究する過程で集めた5000株のバチルス属ライブラリー(納豆菌もバチルス属です)の中から植物の病原菌を抑える物質を分泌する株、抗カビ活性を有する株、不飽和脂肪酸の高分解能を有する株などをスクリーニングしてきて、土壌改良材や抗かび剤、畜産用の防臭剤などを開発して地元企業から発売するなど、農水畜産分野や食品分野での技術開発を中心とするようになったということです。同研究所ではバチルス属ライブラリーに引き続き、乳酸菌などの微生物や、食材に関するライブラリーを作製し、同様の戦略で地元企業に寄与する研究開発を進めているということです。詳しくはぜひ、日経バイオテクONLINEでお読みください。

 かつて、バイオといえば「出口は医薬品や再生医療などの医療分野」ととらえられていた時期があります。ハイリターンを期待する投資家から見ればそういう理屈になるのかもしれませんが、それでは産業のすそ野は広がっていきません。とりわけ地域経済の振興がテーマである地方行政においては、「ローテクかもしれないけれど、食品、農業分野を志向し、地元企業のビジネスにつなげる」といった取り組みがもっとあってもいいのかもしれません。とりわけ、中国や東南アジアの市場をにらめば、「ローテク」と思われるような技術でも市場を作り出すチャンスはまだまだあるような気がします。

 話題は変わりますが、久留米に行った一番の目的は、BONACという核酸医薬の技術を有する会社を取材することでした。特許が公開されたと聞いて取材を申し込んだのですが、実にユニークな技術です。核酸医薬の研究開発からは、グローバル大手製薬を含め、多くの企業が手を引いて行ったと言われていますが、まだまだチャンスはありそうだと期待が膨らみます。ちょっと長めの記事をまとめましたので、ぜひお読みください。文章だけでは分かりにくいかもしれないので、最後に図を載せておきました。

BONAC、RNAi医薬開発のためのプラットフォーム技術確立、長鎖RNAの合成が高収率でできる革新技術
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120221/159698/

 最後にお知らせです。「日経バイオテクONLINEを2週間(50本まで)無料で」お読みいただけるトライアルキャンペーンを、再度、3月末まで実施しています。トライアルのご利用はお一人につき一度限りですが、まだご利用いただいていない方はぜひお試しください。

https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120201/159312/

 本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明