毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。

 最初に、2週間前のメール原稿内容の続報を説明させてください。

成果発表でオープンアクセス誌の存在感高まっています
【日経バイオテクONLINE Vol.1690】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120203/159362/

 その後、PLoSジャーナルの発行元の都合で、予定されていたオンライン公表の日時が2週間余り遅れてしまった事例がありました。詳細は近く報道できる予定です。きちんとしたデータが整っていれば、ジャーナルに論文を掲載するというポリシーなので、情報量が急増している現在、出版の準備が大変になっていることは容易に想像できます。当方も出版社に勤務しておりますので。

 この事情は、1週間前の日経バイオテク/機能性食品メールの原稿冒頭でも紹介させていただきました。

復興庁、奇食と生卵、県産小麦ビール、世界3大バイオマス【機能性食品 Vol.40】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120210/159513/

 さて今週の話題に移りますが、昨日は、東京大学大学院薬学系研究科長で薬学部長教授、創薬オープンイノベーションセンター長の長野哲雄博士に、お話をうかがうことができました。

 大学の薬学部教育が、薬剤師の資格取得を目的とする課程については全面的に6年制に移行してから6年が経ち、2012年春に初めての卒業生が誕生します。と同時に、この6年制の学部教育を終えられた方の一部がさらに進学する大学院である博士課程(4年制)が2012年4月から各大学に設置されます。

 この資格取得のための教育とは別に、創薬研究を主とする研究者育成のための薬学部教育は4年制です。全国で一番熱心に薬学研究者育成を進めているのが、東大です。学部定員80人のうちの72人を、この4年制に割り振りました。次の多いのは、東北大学で、80人のうち60人が4年制です。京都大学など他の有力大学は80人のうち50人を4年制としました。

 4年制の学部の卒業者は、次いで2年制の修士、さらに3年制の博士に進みます。東大の定員は、学部の4年制が72人、2年制修士が100人、3年制博士が50人です。学部の6年制は8人で、これに続く4年制の博士は10人です。

 大学院の収容人員は全部で47%増えることになるそうです。学生の定員を増やすことは文部科学省で認められたが、これに伴う教員の増員は認められなかったとのこと。東大の学内で補充できるよう、働きかけているとのことです。

薬学修士の新設は名大と武蔵野大、総数は文科省が2月中に取りまとめ、京大は定員満たず2次試験
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120208/159445/

2012年春新設の名大大学院創薬科学、27人定員に30人合格発表、競争率は2倍弱
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159414/

 今週もう1つ取り上げたい話題は、遺伝子組み換えカイコによるバイオ医薬品の開発です。今週水曜日(2012年2月15日)に前橋県庁で、公開シンポジウムが開催され、ヒトの治療薬をカイコで生産する場合に、どのようなことが課題となるか、議論されました。

 日本の養蚕は、明治時代より近代国家への発展を支えてきました。かつて外貨の稼ぎ頭だった日本のカイコ産業は、前年比15%減少のマイナス成長が長らく続いていて、いまや産業としては虫の息状態といってさしつかえないかと思います。生糸の国内生産量はピーク時の300分の1です。蚕糸業が盛んだったのは大昔と思っていたのですが、今回の取材で改めて驚いたのは、平成初め頃はまだまだ一定規模の産業規模があったという事実です。

 平成元年(1989年)には全国で5万7000戸の養蚕農家があり、10万俵の生糸が生産されていました。それが20年余り経過した現在では、養蚕農家数も生糸生産量もおよそ100分の1に減ってしまいました。

 昭和51年(1976年)以降、日本では繭生産費が繭価格を上回ってしまったというのですから、産業として成り立ちようがないとも思えます。

 ダイヤモンド社から2012年1月27日に発行された地球選書004「シルク大国インドに継承された日本の養蚕の技」(山田浩司著)を読みまして、日本の養蚕技術が現在の世界の生糸の生産にいかに役立っているかがよく分かりました。

 一方で、日本の生糸生産コストは中国やインドなどに比べ4倍とも5倍ともいいます。カイコを大量飼育して絹糸を作る技術などは日本が世界で最も優れているようですが、付加価値を高めた養蚕業を育成できないと、産業として生き残れません。

 その期待がカイコの遺伝子組み換え技術に集まっています。群馬県は「富岡製糸場と絹産業遺産群」を世界遺産として登録すべく、働きかけを進めています。順調に行けば、2014年に世界遺産に登録になる見込みのようです。晴れて世界遺産になったときに、群馬の養蚕業が消えかけているのは避けたいと、遺伝子組み換え技術を核にして養蚕業を再生させたいと、群馬県は生物研とともに熱心に取り組んでいます。

 カイコの遺伝子組み換え技術の進歩や、実用化拡大の現状については、近く、日経バイオテクの特集記事としてまとめます。

遺伝子組み換えカイコによるバイオ医薬品開発の課題、国立衛研の川崎ナナ部長らが7点抽出
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120217/159623/

公開シンポ「カイコ産業の未来」で群馬に120人、組換えカイコの飼育が前年比10倍、「世界遺産の登録前に蚕糸業の灯を消すな」が合言葉
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120216/159613/

 メール原稿の締め切り時間になりました。最後に、ここ2週間で直接取りまとめた約20本の記事リストとポイントを紹介させていただきます。

※直近2週間の記事

遺伝子組み換えカイコによるバイオ医薬品開発の課題、国立衛研の川崎ナナ部長らが7点抽出
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120217/159623/
○課題の抽出はまずは大きな前進です。

公開シンポ「カイコ産業の未来」で群馬に120人、組換えカイコの飼育が前年比10倍、「世界遺産の登録前に蚕糸業の灯を消すな」が合言葉
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120216/159613/
○富岡製糸場も見学してみたいと考えております。

キリンHDの2011年決算、健康プロジェクト「プラス-アイ」はキリンビバレッジ「ぽっぽ茶」販売好調
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120215/159585/
○2010年に比べ2011年は減少してしまいました。

かがわ糖質バイオフォーラムに130人、日清食品の中川社長と東京海洋大の矢澤特任教授が講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120215/159584/
○香川県知事と香川大学長があいさつなさいました。

理研SSBCと九大生体防御研、免疫を制御するDOCK2たんぱく質複合体の立体構造をPNAS誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120213/159558/
○構造生命科学の成果です。

理研BASE、次世代シーケンサーのデータ解析精度を向上できるプログラム公開、英Bioinformatics誌で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120213/159554/
○成果はオープンに活用されます。

復興庁、奇食と生卵、県産小麦ビール、世界3大バイオマス【機能性食品 Vol.40】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120210/159513/

「精子と卵子のDNAメチル化の完全地図を年内に」とPLoS Genetics誌に論文発表した東京農大の河野友宏教授、サンプル量を100分の1に減らせるPBAT法も活躍
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120209/159468/
○PBAT法のような技術革新にも注目しています。

9社協賛のオルニチン研究会第3回セミナーに百数十人、シジミ薬膳料理も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120209/159449/
○オルニチンは、協和発酵バイオの代表的な機能性素材です。

薬学修士の新設は名大と武蔵野大、総数は文科省が2月中に取りまとめ、京大は定員満たず2次試験
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120208/159445/
○京大の修士入学試験では合格者が定員に満たなかったと聞きびっくりしました。

理研PSCと農業生物資源研、玄米のオミックス成果をPlant Journal誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120208/159444/
○植物のオミックスは日本は強いようです。

免疫生物研、三笠研究所を組換えカイコ向け施設で活用へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120208/159443/
○北海道の施設をカイコに活用する考えです。

2012年春新設の名大大学院創薬科学、27人定員に30人合格発表、競争率は2倍弱
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159414/
○入学志願者が多く集まりました。

社福協の健康食品フォーラム第25回に300人、東大の佐々木敏教授が「日米欧の健康栄養研究」基調講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159413/
○土台が崩れないようにするために、日本の健康栄養研究の強化が望まれます。

玉川大学がLED植物工場を着工、西松建設と産学連携
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159412/
○照明のLED化で、適した波長構成などもしやすくなります。

オリエンタル酵母、遺伝子改変動物の販売36系統に、免疫生物研の3系統を追加
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159411/
○アカデミアで開発されたGM実験動物も多く扱っています。

不二製油、紫綬褒章の前田裕一常務が研究本部長兼つくば研究開発センター長に4月着任
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120207/159410/
○コンビニ商品にも活用されている大豆多糖類の需要は拡大しているようです。

サントリー、黒烏龍茶と胡麻麦茶の交通広告で「人間ドック健診協会推薦」を訴求
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120206/159373/
○「人間ドック健診協会推薦」のマーケティング活用に注目です。

写真追加、国リハが日本人網膜色素変性症の主要な原因遺伝子を解明、2月6日に記者説明会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120206/159372/
○レベルの高いジャーナルで論文発表しました。

成果発表でオープンアクセス誌の存在感高まっています【日経バイオテクONLINE Vol.1690】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120203/159362/