今月も日経バイオテクONLINEの Webmasterの宮田が執筆させていただきます。著者の選定に今尚難渋しております。

東京には既に、春の気配が立ち込めてまいりました。とはいうものの、まだ梅は咲いていません。厳冬の影響は花の目覚めも遅らせています。本来なら素晴らしい紅梅がしているはずの英国大使館で、昨日から個の医療のシンポジウムを取材しています。残念ながら現在のところ個の医療はゲノムとトランスクリプトームのレベルで留まっています。しかし、こうした研究から10個以下のバイオマーカーの組み合わせまでに落とし込めれば、プロテオーム(ELISAの組み合わせとなるかも知れませんが)の出番がやってきます。

 我が国の診断機器・診断薬企業、シスメックスがこうしたプロテオーム様解析サービスの商業化を2012年1月31日に、踏み切りました。残念ながらこの先駆的サービスはまだ我が国の健康保険制度の壁に阻まれて、研究支援受諾サービスと言う位置づけですが、そうはいってもがん患者の抗がん剤や標的医薬の選択に資する情報提供を医療機関に行うことができます。事実上のプロテオーム様個の医療支援サービスが始まったと考えて良いでしょう。
http://www.sysmex.co.jp/news/press/2012/120130.html

 今回、シスメックスが開始したのが、早期乳がんの再発リスクに関する研究用検査受託サービス「C2Pブレスト」です。価格は検査1回で20万円。同社が永年開発してきたプロテイン・チップと蛍光免疫法を組み合わせた(C2P:Cell Cycle Profiling)を活用し、患者の乳がんの組織に存在する細胞周期関連たんぱく質を定量解析します。結果は、再発の可能性が高い、中程度、低いという3段階評価で記述されます。C2Pはプロテインチップを活用したと書きましたがが、抗体やソママーを基盤に張り付けた通常のプロテインチップとは異なり、患者の乳がん組織から抽出したたんぱく質を膜に固定し、細胞周期関連たんぱく質群と結合する複数の種類の抗体で検出する方法です。逆プロテインチップともいうべき技術です。イムノブロッティングの応用とも言えるでしょう。この方法を駆使すれば、乳がん組織の細胞のどれぐらいの割合が、細胞周期のG0、G1、S、G2、M期のそれぞれのステージに存在するかを判別できます。まさに、乳がん組織の細胞分裂のプロファイリングが可能となったのです。こうした検査結果に基づけば、手術後に化学療法が必要かどうか?より合理的に判断することが可能となると期待されます。患者にとっては不要な、しかも副作用のある化学療法を避けることができます。

 C2Pブレストをあくまでもプロテオーム様サービスと記述したのは、網羅的にたんぱく質を解析している訳ではなく、細胞周期という生物学の研究成果に基づき、鍵となるたんぱく質の挙動のみを計測している方法であるためです。プロテオーム解析から、疾患のバイオマーカーとなるいくつかの鍵たんぱく質を絞り込み→複数のELISAや蛍光免疫法などで検出するたんぱく質プロファイルがプロテオームの臨床応用や商業化の道筋であることを、シスメックスが示したと言えるでしょう。

 まだ、このサービスでどのたんぱく質を測定していのるのか?取材の途上で詳細は分かりません。競合する商品としてOncoType DX(21種の遺伝子のRT-PCRに基づく再発可能性スコア)を、我が国でも研究支援サービス(45万円)としてSRLが07年から開始しています。C2Pブレストは国際的なスタンダードとなっているOncoType DXに対して、価格だけではなく臨床的優位性や補完性を証明する長い道のりが待っています。シスメックスの関係者がこのメールを読んでいたら、是非とも詳細を取材させていただきたい。そして取材の調整は是非ともメールで願います。実は編集部に電話をいただきましたが、電話では私を捕まえることは殆ど不可能です。御手数ですが、電脳上で調整させてください。
http://www.atpress.ne.jp/view/5484

 皆さん、どうぞ今月もお元気で。春はもうすぐです。

        日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満