皆さん、お元気ですか?
 
 梅は咲いたか、桜はまだかいな?という唄が似合う季節だというのに、近所の白梅も、湯島天神の梅もまだ固い蕾のままです。厳しい冬の証です。光はすっかり春になっていますが、まだまだ寒波の到来も予想されており、まったく今年は初めから気を許せません。異常乾燥も加わり、インフルエンザA型とB型の流行も猖獗を極めています。早く症状緩和だけではなく、感染を予防するワクチンの実用化を急がなくてはなりません。キーワードは粘膜免疫です。上気道でのIgA型抗体を誘導するワクチンの実用化を急がなくてはなりません。輸入も当然、検討すべきではないでしょうか?

 さてRNAiです。

 今年に入ってから、今まで常識では考えられなかった、はっきり言えば教科書では教えられてきたことと違う、細胞内でのRNA分子の挙動に関して続々と論文発表が行われてきました。理化学研究所の林崎氏がゲノムのほとんどの領域が転写されており、想像を絶するRNA分子が生命活動に関与していることを、2005年に発見して以来、機能不明なncRNA(たんぱく質をコードしないRNA)の研究が急速に進んで来ました。それによるとDNAのデッドコピーとしてしか認識されていなかった、RNA分子は細胞内で実に、生き生きと自らの分子構造をダイナミックに変化させているのです。Crickの出したセントラルドグマにすっかり騙されており、ncRNAの発見でそれが崩れていたと思っていましたが、私の中のRNAのイメージは合いも変わらず、セントラルドグマから影響を受けた、受身の分子というイメージでした。これは反省しなくてはなりません。昨年、東京大学医学部ガンゲノムプロジェクトの小川准教授が、RNAスプライシングの異常が骨髄異型成の原因であることを突き止めましたが、間違いなく、mRANやncRNAのダイナミックな変化/代謝が疾患や生命維持に関係することが分かってくると思います。

 2012年2月12日には中国のゲノム企業BGI社のグループがNature Biotechnology誌で発表しましたが、多数のmRNAが転写後に編集されることが分かりました。漢人のゲノム配列と次世代シーケンサーで大量解析したRNA配列に違いがあることから、この研究が開始されました。今回発表された成果では、2万2688種のRNAで編集が行われていたことが確認されました。その93%が塩基配列のAがI(イノシン)に変換され、Gとして翻訳される編集プロセスでした。これに関与する酵素は、アデノシンデアミネースで、欠損すると重症な免疫不全を起こします。つまり、こうしたRNAの編集が生物学的な意味を持つことを示しています。加えて、BGI社は44種のmiRNAにも編集が起こることを突き止めました。ncRNAでも転写後の編集が生命現象に影響を深く与える可能性があります。

 もう一つ、びっくりしたのが、2012年2月1日にPloS ONE7(2):e30733,doi;10,1371/jounal.pone.0030733でSalzman J et alらが発表した環状RNA分子の存在でした。RNA はふにゃふにゃした分子なので、うどんのたまのようなイメージで細胞中を漂っていると思っていましたが、米Stanford大学の研究者たちはそのイメージを見事に崩してしまいました。麺類ではなく、細長いドーナッツもあったのか!!

 RNA分子が繋ぎかえられるスプライシングの際に、環状のRNAもかなり多量に生産される可能性を示しました。従来のRNA分子の分離法では無視されていた環状RNAが一体どんな機能を示すのか?推測ですが、環状になれば酵素分解による耐性を獲得できるかもしれません。種子やすい臓のベータ細胞などに存在する超寿命mRNAの謎に迫ることができる、と空想はどこまでも膨らみます。

 まだまだRNAワールドの深淵は見えない。是非とも若手研究者はこのチャンスに殺到していただきたい。

 今月もどうぞお元気で。

      日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満