こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 日本で抗体医薬といえば中外製薬と協和発酵キリンですが、この2社がほぼ同時期に社長交代を発表しました。
協和発酵キリンが社長交代を発表、抗体事業育てた花井専務が就任へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120131/159271/

中外製薬社長に小坂専務執行役員が昇格、経営トップは引き続き永山現社長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120202/159316/

 協和発酵キリンの発表は1月31日。次期社長は取締役専務執行役員の花井陳雄氏。花井専務は研究者出身で、抗体のADCC活性を強化するポテリジェント技術の開発に携わり、ポテリジェント技術を事業展開する米BioWa社の社長も務めていました。本誌に登場することも多かったので、このメルマガの読者の方にもおなじみの人物でしょう。

 翌日の2月1日には中外製薬が、小坂達朗取締役専務執行役員を代表取締役社長に昇格させる人事を発表しました。永山治社長は会長に就任します。

 どちらも社長交代ですが、意味合いはかなり異なります。松田社長は取締役も辞任して相談役に退きます。文字通り経営の一線からは引退ということでしょう。記者会見でも最初は2人で質疑応答に対応していましたが、松田社長は自分への質問が終わると「私がいるとしゃべりにくいから」と言って、会見場からいなくなってしまいました。

 一方の中外製薬では、永山社長は引き続き代表取締役であり、現在は兼務している最高経営責任者(CEO)と最高執行責任者(COO)のうち、COO職を小坂次期社長に委譲します。会見で私は、「社長、会長という役職と、COO、CEOという役職はどちらが重要なのか。社長交代後の経営トップはどちらなのか」と質問してみました。それに対して永山社長は、「当社はRocheグループの一員であり、CEO、COOの方が実態を分かりやすく表している。私が経営トップということだ」と説明してくれました。

 日本では社長、会長、あるいはCEO、COOという役職に法的な裏付けがないため、両方の呼称を採用していて代表取締役が複数人いた場合、トップマネジメントの役割分担や上下関係が役職を見ただけでははっきりしないということがよくあります。当人達の間でも認識にずれがあり、それが原因で指揮命令系統が混乱したり、内紛が起きたりする事例は時々、見聞きします。最近では、ソニーの業績低迷の一因に挙げられています。中外製薬では、CEOが代わったときが本当の意味でのトップ交代になるのでしょう。

 ところで、昨日はアンジェスMGが奇妙なリリースを発表しました。同社の創業者で取締役でもある森下竜一阪大教授に対して、遺伝子治療薬の発明の対価として支払った7500万円の返還を請求するという内容です。経緯が少々複雑なので、以下の記事を読んでいただきたいいのですが、このリリースを見た誰もが最初はアンジェス経営陣と森下教授の関係に何かあったのかと思ったはずです。
アンジェスMGが創業者森下教授に7500万円返還を請求、原因は旧住友製薬との発明譲渡契約
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120210/159469/

 いろいろ取材してみましたが、今のところそういう状況ではなく、問題が発生したのが通期決算の発表直前であり、それを延期させないためにはこういう処理方法しかなかったようです。この件については今後、関連した動きがあるはずですから、取材を続けます。