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  - バイオプラスチック:一カ月遅れの “年頭所感” -
                  バイオインダストリー協会 大島一史部長
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 昨年末の新聞紙上には2011年を振り返り、また2012年を展望する記事が多数掲載されていましたが、その中で12月28日付け日経紙朝刊のコラム「十字路」には「日本の強み再発見の年に」と題した増田貴司氏(東レ経営研究所)の囲み記事に興味を惹かれました。

 そこでは、冒頭に 「2012年は日本独自の強みを意識し、それを生かして世界市場を開拓する日本企業の動きが活発になる」 とし、その理由として4つの理由を挙げていました。第一は東日本大震災をきっかけとして『日本人の強さ』を自身が再発見したこと、第二に『日本独自の強み』を活かす事が世界市場で勝つ上で有効である事に気がついたこととしています。

 さらに第三にいわゆる新興国市場であっても品質への意識が高まってきており、「品質ニッポン」のブランドやそれを生み出す日本の組織能力が高く評価される時代が到来したことと、また第四として世界経済の変調から中国におけるバブル崩壊懸念や欧州の「日本化」が進む中で、バブル崩壊後の信用収縮と長期デフレを経験済みの唯一の国である日本の企業は『激しい環境下でも成長する術』を身につけていることが指摘されています(以上、『』は筆者挿入)。

 経済学に疎い筆者ですが、この記事が特に印象に残ったのは、第一から第三までの指摘事項がバイオプラスチック(BP)の分野にも重なることが多いと受け取ったからでした。

 第一の『日本人の強さ』は、民間企業技術者の辛抱強さにも通ずるところがあります。材料開発や製造プロセスの最適設計を求めて気の遠くなるような条件の中から解を見つけていくさまは “職人芸” とも言われます。何にでも『道』を究めずにはおけない日本人だけの性格(“英語で話す「日本の謎」”(講談社バイリンガル・ブックス:初版96年10月18日))をうかがわせます。新たなBPの開発には合成技術・分析技術・品質設計・成形技術や市場開拓戦力などを背景に地道な(つまり日の当たらない、人事査定にも恵まれない)取り組みがことの外に必要です(この点、理解されやすいエネルギーや燃料の開発の方が有利な環境にあるでしょう)。

 第二の『日本独自の強み』は、例外も多々あるものの、成果が生まれるまでの長い期間(すなわち、経済的利潤を生まない長い期間)の取り組みを認める経営者、もしくは部門長がいることとつながっています(そのようなケースがあると言い換えても可)。BPの分野に照らしてみれば、ポリ乳酸(PLA)については我が国でも1980年代から製造と製品化に取り組んでいる企業が多数ありました。有力と見なされていながら撤退が相次いだものの、今も真摯に取り組んで、2000t/年を超える市場開拓を果たしている企業も数社見られます。まさに “継続は力” を見る思いで、短期な取り組みで成果を求める経営者の企業では実現しなかったことでしょう。

 第三の「品質ニッポン」は、これもBPの分野で見れば、一般には不適とされてきたPLAの品質改良に取り組み、長期耐久性消耗品の部材への展開を可能とした事例にも見られます。さらには、ごく普通のポリオレフィンとみられるポリエチレンにおいても、単なるエチレン連鎖とするのではなく、末端基や側鎖の種類と導入量の最適化や分子量分布の制御など、肌理の細かい品質設計がなされて初めて高品質な規格袋や包材となる例でも見られます。まさに、我が国のBPを含めたプラスチックとその成形加工技術の高さは “ジャパン・クオリティ” の紛れもない背景と思うところです。

 増田氏が指摘された第四の「日本の企業は激しい環境下でも成長する術を身につけている」ことがBPの開発と普及に取り組んでいる企業にも当てはまり、第一から第三までの特質を持つ企業の努力が稔る2012年となる事を祈りたい想いです。以上を一カ月遅れの年頭所感とさせていただきます。