こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先日、金融関係の方とバイオベンチャーのことで話をする機会がありました。昨年は上場バイオベンチャーが5社増加し、今年も順調に増えていきそうだという話をする中で、「でも、既に上場している企業の中には上場時に言っていたようには事業展開できていないところもありますが、上場廃止にはならないのですか」とお聞きしたところ、「日本は退場させるのはほとんど困難でしょう。オリンパスだって上場廃止にならなかったぐらいですから」とのことでした。

 確かに、「入るのは困難だけど一度入ればずっと留まれる」というのは、株式市場だけでなく日本社会の至るところで見受けられる現象です。今の状況を正確には知りませんが、私が学生時代は「日本の国立大学は入るのは困難だけど、入ってしまえば誰でも絶対卒業できるのが欧米の大学と異なる」と言われていました。企業も同じで、一度正規の社員になればクビになることはまずありません。働く側にすればそれが生活の安定につながる面はありますが、社会の仕組みとしてこれで本当にいいのか、ということをふと考えてしまいます。

 以前、米国でベンチャー企業を経営している人から、「会社の発展段階によって必要となる社員のスキルが違うので、設立間もない時期に非常に貢献してくれ人でも成長に応じて退社してもらった」という話を聞かされ、これが米国のベンチャー企業のダイナミズムに結びついているのだと痛感したことがあります。これだけ変化が激しく、企業のビジネスモデルも常に見直さなければならない時代なのに、社員を入れ替えることができないというのは、日本企業の競争力という点で不利なのは間違いありません。

 先日、ある大臣がプレゼンしている資料で見たのですが、日本の大卒女性の生涯年収は、出産後、同じ会社で働き続けた人と、一度退職して仕事に就いた人とで非常に大きな差があるということでした。「だから同じ会社で働き続けることができるように、育児支援制度を充実させることが重要」ということでしたが、果たしてそうでしょうか。同じところにとどまり続けた人に比べて、退職して別の仕事に就いた人の方があまりにも不利益な社会の仕組みこそが是正されるべきのように思われます。働く側にしても、1つの職場にとどまって、自分の適性と違ったことをやるよりも、適正に応じたところに身軽に移れるようになった方が、能力を存分に発揮できるはずです。税と社会保障の一体改革の中では「就労促進」なども議論されていますが、日本人の働き方にダイナミズムをもたらすような視点もぜひ取り入れてもらいたいものです。話を戻せば株式市場にしても同じで、本当に必要なところに資金を供給するためには、もっと新陳代謝がスムーズに行われるようにすることが必要です。それが日本企業の競争力につながるものと確信しています。

 話は変わりますが、昨日、協和発酵キリンの社長交代が発表されました。新社長に就任するのは抗体関連の研究者として有名な花井専務です。抗体医薬カンパニーとして成果を挙げつつある同社が、新社長のリーダーシップの下、どのように変貌を遂げていくのかがみものです。

 協和発酵キリンが社長交代を発表、抗体事業育てた花井専務が就任へ
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120131/159271/

 ちなみに、協和発酵キリンは2012年のバイオ企業番付で、東の正横綱になりました。バイオ医薬の事業の進捗が評価されました。番付の顔ぶれは下の記事でご覧ください。

 日経バイオテク1月30日号「リポート」、2012年バイオ企業番付
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120201/159280/

 なお、本日から3月末まで、2週間、50本を上限とする日経バイオテクONLINEの無料試読キャンペーンを行っています。無料試読のお申し込みはおひとりにつき一度限りですが、ぜひこの機会にお試しください。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明