「おはようございます」(爆笑)

 昨夜、5時間53分にわたる全豪オープン史上最長の試合で敗れた、スペインのナダル選手のスピーチは秀逸でした。フルセットマッチの死闘で、午後7時から始まった決勝戦は、深夜零時を過ぎても、誰も帰らない。15分の休憩で体力を回復し、観客を労うことができるナダルはやはり超一流選手です。どっちが勝っても不思議ではないぎりぎりの戦いでした。第一セットを先取したナダルがいよいよ返り咲くかと期待しましたが、結局は昨年からグランドスラム3連勝のジョコビッチが、神のいたずらとしか言いようのない両者の微妙なショットの差で、栄冠に輝きました。しかし、初めて見ましたが、試合後両選手は表彰式の準備の間、立つことすらできない。椅子を用意してもらって呆けたように並んで座るだけ。燃えがらのような二人は、明日のジョーの最後のシーンそっくり。人間はここまで身体と魂を燃やし尽くすことができるのですね。まだまだ仕事が足りません。

 さてバイオです。

 先週、全国を飛び回っておりましたが、共通のキーワードにぶち当たりました。

 それは中分子薬。特定の一派が唱えているのではなく、各方面の多様な研究者が同じ結論に達しています。どうやら本物です。ポスト抗体医薬の本命は、分子量1万から1000までの中分子となる。既に分子量1000以下の低分子薬は医薬品産業の基盤を形成しています。加えて、抗体医薬やワクチンなど分子量1万以上の医薬品は今や本格的な実用化時代に突入しました。年末に整理してみましたが、抗体医薬は現在、地球上で41種類が発売されるまでに至りました。

 では、ポスト・バイオ医薬は何か。冒頭のごとく、一部を除き今まで誰も真剣に医薬品として検討してこなかった中分子薬となることは間違いなさそうです。この医薬品の特徴はバイオ医薬ではつきものの免疫原性を欠くこと、またバイオ医薬では困難な経口投与が、今後のDDS技術の発展によって、可能となる確率が高いことなど、従来のバイオ医薬のアキレス腱を補う利点を期待できます。

 加えて、最もアドレナリンが分泌するのが、中分子薬が低分子医薬では難しいたんぱく質たんぱく質相互作用を阻害したり、模倣したりすることが可能である点です。今までの低分子薬が酵素阻害剤など明確なたんぱく質のポケットにすっぽりはまる分子を如何に合成するかが、腕の見せ所だったのですが、たんぱく質・たんぱく質相互作用は相互作用する領域の面積が広く、低分子薬ではたんぱく質相互作用を調整したり、断ち切ったりすることは殆ど不可能でありました。中分子薬はバイオ医薬が現在、主に担っているたんぱく質相互作用作動・阻害薬を置き換える可能性があります。なおかつ、経口投与、そして低コストなど低分子医薬の利点も兼ね備える可能性があります。

 勿論、天然物由来のライブラリー以外に中分子化合物のライブラリーが存在しないこと、中分子医薬のコンピュータ支援薬剤設計システムとDDSが未熟なことなど、問題は山積みです。しかし、もはや効率良く医薬品を生みだすことができなくなった低分子医薬、今や医療経済に対する影響が最も重大になったバイオ医薬。これらの問題を解決するには、中分子医薬という概念が重要となったと、判断しています。

 1990年台初頭に「抗体など医薬品にならん」と我が国の大手製薬企業は重大な戦略的誤断を犯しました。今回も「中分子など、医薬品にならん」と食わず嫌いする愚は犯さないでいただきたい。2度目のミスは、我が国の創薬研究と製薬企業にとって致命的です。

 東京は本当に寒い。日本海側では豪雪も心配されます。どうぞお気をつけ願います。
 今週も、皆さんどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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