こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 昨日は、バイオ関係者からなるBaNZaIの勉強会に参加しました。BaNZaIは、昨年、一昨年のバイオジャパンでパネルディスカッションを行ったのでご存知の方もおられると思いますが、バイオベンチャーに関係する多様なプロフェッショナル(患者、起業家、官僚、アカデミア、弁護士、会計士、ベンチャーキャピタリスト、商社、コンサルタント、製薬企業など)で構成される勉強会?です。昨日の勉強会では、元武田薬品工業でライセンスを担当され、現在MSDのシニアディレクターである加藤光一さんの講演をお聞きしました。

 加藤さんには実は2001年に、当時在籍していた日経ビジネス編集部で、「ケーススタディー─武田薬品工業、『人は石垣』で国内独り勝ち」という記事を執筆した際に取材させていただいたことがあります。それ以降もいろいろなところでお会いしていたのですが、昨日、武田薬品時代のことも少し話されていたので懐かしくて、当時の記事を引っ張り出してきて読んでみました。それで改めて痛感させられたのは、ほんの10年ちょっとの間に、武田薬品という会社も、製薬業界も、あるいは日本の社会全体が大きく変化したことです。記事では、グローバルプレーヤーを目指して急ピッチで社内改革を進める模様を紹介させていただいたのですが、今から見ればまだまだドメスティックな印象がぬぐえません。そもそも「人は石垣」などという言葉が、いろんな意味で今や死語といっていいのかもしれません。

 少し脱線してしまいました。

 昨日の講演では、製薬産業において中国のプレゼンスが高まっていること、MSD(米Merck社)のオープンイノベーションについてと、MSDがアカデミアやバイオベンチャーなど外部に求めることなど、主に3つのテーマでお話しいただきました。製薬産業においてオープンイノベーションの名の下に、外部に創薬シーズを求める動きが加速していることは今さら言うまでもありませんが、MSDはその流れをリードしてきた会社の1つです。その同社が、外部のシーズを評価し、導入するためにいかに手間暇をかけているのかがよく分かりました。とにかく膨大な数の案件を、秘密保持契約を結ばない段階で大きく絞っていくわけで、バイオベンチャー側にとっては“ノンコン”(コンフィデンシャルでない)段階での交渉がかなり重要になるといえそうです。

 それから、企業内部の研究所から出てきたシーズよりも外部から入れた化合物の方が成功確率は高く、コストも安いという指摘や、製薬企業が有するコーポレートベンチャー(製薬企業独自のVC)が重要であり、MSDも昨年9月にVCを設けたことを説明していただきました。また、製薬企業のインライセンスの競争が激しくなっており、最近ではグローバルの市場の一部をバイオベンチャー側に残すなど、売り手に有利な契約が増えつつあるとのことでした。

 加藤さんが講演の中で特に強調しておられたのは、「米国で投資を検討する際に調査を依頼できる法律事務所や会計事務所、コンサルタントが豊富におり、1件数万ドルから10万ドルぐらい出せば徹底的に調査をしてくれるので、極めて有用だった」ということです。もちろん日本にもそうした人たちはおり、VCの方々は「投資する際には当然活用している」とのことでしたが、米国に比べればまだまだ層が薄いのは確かでしょう。

 別の製薬企業のライセンス担当の方が離されていましたが、米国では「エコシステム」と称してバイオベンチャーの関係者が共存共栄する道を模索する動きが活発なようです。製薬企業のコーポレートベンチャーも、複数企業が協調して出資するケースが多いそうで、製薬企業としてはライバルであっても、必ずしも競争関係にあるわけではありません。日本でもオープンイノベーションを促し、バイオ産業を振興していくためには、多様な人たちが生存できる生態系を作り上げていくことが重要なのでしょう。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明