昨夜のミックスダブルスの快勝はともかく、現在、錦織選手がフランスのツォンガ選手と現在四回戦を戦っております。ウェブでのスコアだけを生中継で見ておりますが、第一セット5:2で最後の粘りを見せています。しかし、ツォンガ選手は200kmを超すサービスを連発、錦織選手のサーブはそれよりもまだ30kmは遅い。なんと今、6:2で第一セットを失いました。ツォンガ選手には錦織選手は勝利したこともあり、まだ望みは捨てられません。どちらかというとスロースターターの錦織選手には気をもませられます。早くツォンガ選手の剛球にアジャストして欲しい。しかし、無機的にスコアだけが進む方が、何故か頭で試合を想像して興奮してしまいます。そうとう頭のデジタル化が進んだのか?気をつけなくてはなりません。
http://www.australianopen.com/en_AU/scores/index.html

 と書いていましたが、途中の会議が終わってみれば、錦織選手がフルセットで勝利を収めました。ベスト8進出です。ここまで来れば、伊達選手とペアを組んで、ロンドンオリンピックで金メダルを狙うのも、許してしまいたくなります。次は世界ランク4位のマレー選手に挑戦です。

 さてバイオです。

 まずは、高病原性トリインフルエンザH5N1株を、哺乳類(フェレット)に継代感染させて、よりフェレットに感染する能力を増強した株に関する研究成果(中核は感染力を増した株に共通のH5N1の5ヶ所の変異配列)をめぐり、昨年からもめにもめていた問題がとうとう研究の60日間の自主凍結宣言にまで拡大しました。自主的に研究を凍結(モラトリアム)し、世界中の研究者や政府関係者を集め、H5N1に関する論文発表の規制手法とパンデミックの抑止に必要なウイルスの変異配列などの重要情報をどうやって特定の研究者にだけアクセスする仕組みを作るかをなど議論します。このフォーラムは世界保健機関が主催し、2月下旬にスイスGenevaで開催するとの報道もあります。
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/01/in-dramatic-move-flu-researchers.html

 背景にはバイオ研究者の自由な研究に対する米国政府による規制への不満が、当然存在します。論文掲載規制に関して詳細は下記をご覧願います。
http://www.sciencemag.org/content/335/6064/20.full

 まるで、1975年、遺伝子操作の黎明期に、想定外の新生物をこの技術が生み出してしまうのではないかという懸念を背景に、遺伝子組み換え実験をモラトリアムし、やはり世界中の研究者を招集したアシロマ会議の再現です。これは科学者コミュニティーからの懸念から発し、自主規制を定めた会議でした。科学研究の自由を科学者自ら制約した画期的な成果でした。社会と科学の調和を目指した自主的な活動でした。

 しかし、今回の自主凍結宣言は科学者の自主的な規制というのとは大きく実態が異なります。バイオテロ防止を名目に、米国政府の圧力によって論文の発表が規制されたことに、科学者と科学誌が対抗するために全世界の科学者を招聘したというのが、現状です。むしろ科学の自由を求めたインフルエンザ研究者のストライキに近いと考えます。感染症研究者のパンデミックを防止したいという必死の努力をどう評価するのか?今回の研究自体は継代感染という強毒性病原体を作り上げる古典的な手法を使った研究に過ぎず、もしこの情報を活用してバイオテロ用のH5N1を開発するためには、高度な知識と高度な設備が必要であるに、すぐに情報の公開がバイオテロに繋がるというのは、考え過ぎではないか?という意見も勿論あります。一方で、バイオ技術の普及は急速に進んでいるため、強毒性突然変異体のRNAゲノム情報をバイオテロに転用するリスクは高まっている。極めて高い致死率であり、パンデミックが起こる可能性もあるため、この研究は一線を越えてしまったと考える米国政府関係者や研究者も存在するのです。そして一番重要な点は今も地球上でH5N1に感染した患者が発生しており、中国でも今年2人目の死亡例が報告されたばかりです。目前のパンデミックの危機を防止することの方が、米国のテロ対策より重要であることは言うまでもありません。研究のモラトリアム自体の倫理性すら問われる状況ですが、一方でバイオテロのリスクを少しでも減らしたいという米国政府の要求も分からない訳ではないという宙ぶらりんの状況です。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2852654/8348467?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120121/159111/

 Nature誌とScience誌は、米国National Science Advisory Board for Biosecurity (NSABB)からの要請で、東京大学医科学研究所河岡教授らとオランダ Erasmus医療センターのRon Fouchierらの感染性を高めたH5N1株の2つ論文に関し重要情報をあえて伏せて掲載することを認めるに当り、実は条件をつけていました。それは、パンデミックの防止などに貢献する医学研究者に限定して重要情報にアクセスできるシステムの開発です。しかし、これは遅々として進まず、米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のスタッフがNSABBに昨年の夏に通報し、10月半ばにはこれらの論文をNSABBが事前にレビューして、掲載規制に踏み切って以降、まだ特定の研究者に限定して、これらの論文の重要情報にアクセスできるシステムは稼動していないようです。米国政府としてはバイオテロの対策のために、情報公開は極力制限したいのでしょう。加えて日本や米国のH5N1研究に関しても直接、間接的に資金援助している米国政府としてはスポンサーとしての権力も行使したいのでしょう。通常の軍事研究なら研究成果非公開で研究契約を結ぶ米国政府も今回の研究に関してはNIAIDが機能せず、研究そのものを非公開にできませんでした。背景には、地球的なパンデミックを考えると、人によるテロの前に、自然によるテロともいえるH5N1パンデミックに関する抑止することが重要だという世界の世論があります。もし、米国が非公開でH5N1を研究していることが暴露されれば、米国こそH5N1のバイオテロを検討していると、痛くも無い腹を探られることになります。研究を止めないためにも、一刻も早く、限定的な重要情報アクセスのシステムと、その情報をどういう手続きで解禁するかの原則を練り上げる必要があると思います。
http://oba.od.nih.gov/biosecurity/biosecurity.html

 勿論、学問の自由のためには、このようなシステムは少なければ少ないほど良いと思います。従来はこうした先端研究の悪事への転用をデュアルユースと名づけて、政府の規制よりは、科学者に対する啓蒙活動によって悪用を抑止しよう、あるいはできる、というのが主流でしたが、その主体であった米国NSABB自らが、バイオテロを懸念する政府の圧力に方針を転じたのです。ただし、規制の泥沼によって、パンデミックの防止や抑止が破綻するようであれば、科学者も米国政府も地球の市民に責任を負わなくてはなりません。一刻も早い、合意形成が求められています。
http://oba.od.nih.gov/biosecurity/biosecurity.html

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/