今月も日経バイオテクONLINEの Webmasterの宮田が執筆させていただきます。著者の選定に今尚難渋しております。皆さんのお知恵を是非ともお寄せ願います。現在、一人ご推薦をいただいております。

 本日から南半球でテニスの全豪選手権が始まります。時差が無いので比較的楽に視聴できる大会ではありますが、さすがに会社をさぼって見るわけにも参りません。今回の大会では男子では錦織選手、そして女子では伊達選手が予選を免除され、本戦にストレートインしました。このところ好調の錦織選手は期待が持てそうです。しかし、伊達選手はすごい。昨年後半に故障してランキングも188位と低迷していましたが、10月末のフランス10万ドル大会で優勝、その後、準優勝を2つもぎ取り、ランキングを81位まで上げて、本戦出場を確保しました。41歳。まあ、一種の良い意味で化け物です。全豪では、錦織・伊達でミックスダブルスに出場する予定です。ひょっとしたら優勝してしまうかも知れません。ナブラチロバもびっくりの伊達選手の活躍、日本人女性は強く、長持ちであることを世界に知らしめるかも知れません。

 さてプロテオームです。

 本日のNBTOLのランキングでお知らせしましたが、中国アモイ市のXiamen Innovax Biotech社が中国政府から2012年1月11日、世界初のE型肝炎ワクチン「Hecolin」の製造販売認可を獲得しました。名実ともに、世界に通用する中国製バイオ新薬の誕生です。
http://www.innovax.cn/en/news_detail.aspx?newsid=336&CateID=1731

 詳細に調べてみると、Hecolinは大腸菌を宿主にウイルス様粒子(VLP)を製造することに成功したという優れモノのワクチンでした。現在までに、B型肝炎ワクチンとヒトパピローマワクチンでVLPワクチンが、欧米で商業化しています。VLPはウイルスのDNAやRNAなどゲノムを欠いた空のウイルス粒子です。組み換えたんぱく質抗原は単一分子では免疫原性が低く、注射してもなかなか抗体や細胞性免疫を十分誘導できない。このため、ワクチンを開発している企業は新規の強力な免疫誘導物質(アジュバント)の開発に狂奔しています。VLPはウイルスの殻たんぱく質と抗原たんぱく質の融合たんぱく質で構成された中空ウイルス。分子量が大きくなり、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞にどん食されて、免疫原性を示します。つまり、免疫を誘導する力の強いワクチンをVLPなら開発できるのです。

 従来のVLPワクチンは酵母や昆虫細胞を宿主に製造した製品に限定されています。ところがXiamen Innovax Biotech社は大腸菌でVLPワクチン、Hecolinを製造できたと発表しているのです。これが本当なら製造コスト、安全性などで他の宿主を利用したVLPワクチンを凌駕できる可能性があります。同社は既に、ヒトパピローマワクチンと性器いぼのVLPワクチンの臨床開発にも着手しており、大腸菌で製造したVLPワクチンの技術プラットフォームは、かなり幅広いワクチンの生産に活用できる可能性があります。中国のベンチャー企業もバイオテクノロジーで世界をリードする独創技術の開発に成功したのです。ワクチンのコストダウンは、新興国や発展途上国市場を制するためには、不可欠な技術であると考えます。

 勿論、欠点もあります。大腸菌は糖鎖を蛋白質に結合できないので、ワクチン原料として糖たんぱく質のVLPが必要な場合は商品化は難しいでしょう。

 VLPワクチンの日欧米中での商品化は、今後は単純な組み換えたんぱく質の商品化だけでなく、たんぱく質複合体を合成する次世代の技術の商品化が始まったことも意味します。

 今後、複数のたんぱく質で構成される機能性たんぱく質複合体を製造する技術の開発競争が日米欧中、そして多分、インドを巻き込んで、繰り広げられる時代となるのは確実です。大腸菌の発酵技術では世界水準の我が国の企業も智恵を絞らなくてはなりません。

 皆さん、どうぞ今月もお元気で。

        日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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