現在、雪深い弘前に向けて移動中です。先週は那覇、来週も那覇ですが、その中休みにしては、青森は厳しい日程です。気温差25℃近い。しかし、どうしても北上したかったのが青森県がバイオ振興政策を昨年末にまとめ、それをうけて「プロテオグリカンをコアとした津軽ヘルス&ビューティークラスタ」形成に踏む出したためです。そのキックオフのシンポジウムの取材が目的です。同時に弘前のクラスターのキーマンとのインタビューも予定しています。香川県が希少糖によってバイオクラスターの離陸に成功したように、果たして津軽がサケの頭から抽出したプロテオグリカンを中核に何をしようというのか?原料確保と科学的機能解析による商品群とブランド形成に成功できるのか?見定めてまいりたいと思っております。勿論、冬の津軽も堪能することもできれば幸いですね。

 さてバイオです。

 中国でまた世界初のバイオ医薬が誕生しました。組み換え血小板増殖因子(トロンボポエチン)に次いで、2012年1月11日に中国科学技術省のがE型肝炎ウイルスワクチンの販売を認可しました。2011年11月に中国食品医薬品局が認可したことを受けて、政府が認可しました。トロンボポエチンの場合には、米Genentech社、米Amgen社、そして我が国のキリンビールも組み換トロンボポエチンの製造には成功しましたが、CHOを宿主に製造した製剤にしても、大腸菌を宿主にして製造した後にポリエチレングリコール(PEG)を化学的に結合した製剤でも、臨床試験で患者にトロンボポエチンの自己抗体が出現したために開発が中断されました。そのため、中国が世界で初めて商品化しても、本当に大丈夫か?抗原性を無視して商品化を進めただけではないかと疑惑が残る状態でした。

 しかし、今回、アモイ市のXiamen Innovax Biotech社が商品化の認可を取得した製品は確かに、世界で誰も商業的製造に成功しなかったE型肝炎ワクチン「Hecolin」です。臨床試験フェーズ3の結果は、英国の医学専門雑誌Lancet2010年11月15日号に掲載されています。9万7356人の健康な志願者に対して前向きの二重盲験が行われた結果、HecolinがE型肝炎の感染を防止することが証明されました。効果は国際的にも認められたと考えて良いでしょう。Hecolinこそ、世界的が認めた中国発のオリジナルバイオ医薬の第一号であると、私は考えています。中国もとうとうバイオジェネリックだけでなく、バイオ新薬を生む国となったのです。多分、新薬を創製できる能力のある国家は地球上で今まで6カ国程度と言われておりましたので、とうとう中国が第七番目の新薬開発国の仲間入りをしたのです。何回も中国に取材に行っておりますが、「化学合成医薬では欧米日の後塵を拝するばかりだ。中国も特許薬で世界市場に打ってでるためには、遺伝子治療などバイオ医薬に資源を投入する必要がある」という声を政府や学者、そしてバイオ・医薬企業の関係者から耳にタコができるほど聞かされていましたが、とうとうその夢を実現したのです。
http://www.innovax.cn/en/index.aspx

 E型肝炎は汚染された水や食品などによって経口感染する肝炎ウイルスで、アジア地域では極めて重要な疾患です。東南アジアだけでも毎年650万人の新規患者が発生しています。中国でも患者数は増加しており、肝炎のなかではE型肝炎は最大の患者数を占めるまでになっています。我が国でも散発的に流行がありますが、B型やC型肝炎ほど注目はされていません。しかし、今後、我が国が中国やアジアと経済関係を濃厚化するにつれてE型肝炎ウイルスは無死できない感染症となるはずです。アジアの医療問題を常に解決してきた日本でしたが、E型肝炎ウイルスに関しては中国に先を譲った格好です。

 実は、中国でE型肝炎ワクチン商品化のニュースを聞いた時に、私は北京の企業が商品化したものだと一瞬誤解しました。米Chiron社から戻った北京の血液学研究所の研究者が創立したベンチャー企業もE型肝炎のワクチンを開発していたためです。米国からの技術導入なら、さもありなんと、一人合点して調べて見たら、別の企業でした。きっと米国から還流した海亀組の中国人研究者はXiamen Innovax Biotech社にも努めているでしょうが、Hecolinはどうやら中国の独自技術が花開いたものであると推定しています。大腸菌を宿主にしたウイルス様粒子(VLP)生産技術が同社のコア技術です。免疫原性を高めることができるため、Hecolinは水酸化アルミニウムというありふれた免疫増強剤が添加されているだけ。三回投与で感染を防止できます。もし本当(多分本当ですが)なら、この企業の技術は幅広いウイルスに対するワクチン開発のプラットフォームとなるはずです。同社は子宮頸がんワクチンと性器いぼに対するワクチンの臨床開発にも着手しています。

 我が国では武田薬品が2012年1月1日にワクチン開発部を社内に設立して、ワクチン事業のグローバル展開に着手しました。しかし、まだ同社のワクチン事業には切り札となる商品も技術もないというのが現状です。武田のワクチンが世界で通用するためには、政治力だけでなく、やはり独創的な技術力(ワクチンのプラットフォーム)が欲しいところ。中国のワクチン技術、バイオ技術にも目配りしなくてはならない時代となったのです。技術の詳細はNBTOL/Targeting Proteomics/Mailで報道します。以下のサイトからお申込みいただくか、本日申し込みしても来月送信になるので日経バイオテクONLINEの記事検索で、明日、宮田で検索してご覧願います。
●Targeting Proteomics/Mail
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/btjtpms/index.html
●日経バイオテクONLINE
https://bio.nikkeibp.co.jp/

 既に日は延びています。夕方も明るくなりつつあります。春はもうすぐです。
 今週も、皆さんどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

P. S. 日経バイオテクONLINEに掲載されている購読者向けの有料記事を、2週間・50記事まで無料で提供する“新春キャンペーン”を実施中。日ごろのニュースのほか、日経バイオテク本誌の記事を図表も含めてONLINE上でご覧いただけます。ぜひ、この機会に日経バイオテクONLINEをお試しください。キャンペーンは1月18日まで。お急ぎお申し込みください。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/order.html#cam