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  - 考察:温故知新(?)バイオプラスチック -
                  バイオインダストリー協会 大島一史部長
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 新年明けましておめでとうごございます。

 年末年始にかけて、温故知新に倣って「新プラスチック時代の幕開け」(生分解性プラスチック実用化検討委員会;委員長=土肥義治氏(理化学研究所高分子化学研究室長(当時);現・社会知創成事業本部長)を読み直しました。これは平成7年(1995年)3月にまとめられた提言書で、生分解性プラスチック(BdP)の実用化に向けた18の課題と対応策を整理したものです。委員長の下に、産学官に加えて消費者の立場からの有識者学識者18名の委員が参加しています。今の時点で見直しても、これだけの各界代表を集め、徹底した外部/内部環境と強み/弱み分析を進めて18課題と対応をまとめた迫力を感じます(今、バイオプラスチック(BP))の実用化課題を同等の戦力で取りまとめることが出来るのだろうかと自問せざるを得ない想いです)。

 しかしながら20年近く前に提言されたBdPの実用化18課題は、今直面しているBPの実用化課題と重なる場面が極めて多いと、改めて受け取っておりますので、今月はこの観点からBPの実用化/普及に向けた課題に想いをはせたいと存じます(以下、18課題を共通するコンセプトごとにまとめて記載します)。

課題-1:BdPの定義
課題-2:生分解性試験方法の開発・標準化
課題-3:生分解性の識別表示
課題-18:国際的な制度、基準の調和

 今やBdPはISO(国際標準化機構)による国際標準化試験法が整備され、これに基づいた基準(認定スキーム)が世界各国で定められ、定義および識別表示制度が運用されています。この課題は基本的には解決済みと言ってよいでしょう。

 一方、BPについては本稿でも既に触れておりますが、ISOレベルでの標準試験法は整備されておらず(*)、米国材料試験法としての “ASTM D 6866” がバイオマス由来炭素含量測定法を定め、各国ともこの試験法を利用してバイオマス由来物質であることを担保している状況です。1950年代に行われた大気中核実験の影響で放射性炭素(C14)が人工的に生成され、特に木質系バイオマスに蓄積されている影響が未だに残っており、我が国の様に木質バイオマスを樹脂強化材或いは増量材として使用する例が多い場合、この試験法ではバイオマス由来量の定量性に論点が残り、未解決問題となっています。
(*)試験法国際標準化に向けた作業部会が制定された段階です。

課題-4:分解生成物及び添加剤の安全性確認
課題-5:製品用途に応じた安全性確保
 我が国をはじめ、米国、EUや中国でもそれぞれの国情に合わせた化学物質の安全性確認手順に則って担保されたBdPや添加剤がポジティブ・リストとして公開されていますが、BPについても同様な手順で安全性の担保がなされています。

課題-6:適切な用途開発の推進
課題-7:素材の改良
 厳密に言えばBdPにとっては未解決要素が今だにあると言えるかも知れません。BPにとっても同様と思われます(本稿12月号)。

課題-8:リサイクル・システムにおける位置づけ
課題-9:コンポスト化処理の普及促進
 廃棄物法や容リ法では生分解性やコンポスト化特性のコンセプトは考慮されておらず、BdPの位置づけはあくまで “プラスチック” です。
 この点はBPも全く同じ扱いです。上記の法が制定された当時には想定されていませんでしたが、今やバイオマス含量が樹脂含量を超えるバイオマス/樹脂複合系資材が実用化されており、これらは非樹脂扱いとされています。技術の進展に対応しきれない法の限界があまり知られていない様に思われます。

課題-10:経済性の確保(初期需要の創出など)
 これは全ての資材・商品に共通する課題です。

 この他、認識度に係わる課題(課題-11:各種イベントでの使用、課題-12:環境保全分野での初期需要喚起、課題-13:モデル事業の実施、課題-14:消費者の理解と啓発、課題-15:環境調和性の評価とPR)、それにその他の課題(課題-16:名称の見直し、課題-17:国際市場の拡大)が列記されておりますが、BdPとBPに限ったことではありません。

 この様に見てくると、BPの実用化に向けては、共通する課題、個別資材毎の課題が入り交じっていますが、1.定義や品質に係わる技術課題、2.法上の扱い、および3.コスト問題に集約されます。次号以降ではこれら各課題の今後の見通しをご紹介出来れば良いのですが……(先月号で、今月は “明かるい話” をと申しましたが、思いつきで読み直した旧い提言書に目を覚まされ、新たな想いをまとめた次第です)。