現在、那覇に向かうため羽田空港のラウンジで、皆さんにメールを書いております。琉球大学で産学連携のコーディネーターの方々にお会いする他、明日は沖縄のバイオベンチャー群を取材する予定です。ここ10年来の我が国政府の資金投入により、沖縄にバイオベンチャーのクラスターが姿を現しつつあります。世界最高を目指す沖縄大学院大学が昨年11月開設され、さらには内閣府が支援したクラスター計画でゲノム解析とメタボローム解析による資源ゲノム学と資源ゲノム産業の拠点形成も進み始めました。冷え込む東京から避寒しただけではありません。来週は雪の弘前に向かう予定です。本日、北陸や東北の日本海側に向かう飛行便はほとんど「到着できない可能性があります」という条件付きの飛行となっています。豪雪地帯の方はお気をつけいただきたいと願っております。

 さて、個の医療です。今年一年のバイオを展望したメールは9日の日経バイオテクONLINEメールをご覧願います。下記のサイトの記事検索でアクセス願います。個の医療メール含め、バックナンバーをご覧いただけます。検索のキーワードは WMの憂鬱 もしくは 宮田 です。
 https://bio.nikkeibp.co.jp/

 内閣官房の医療イノベーション推進室長の人事が発表されました。東京大学大学院の松本洋一教授が就任しました。しかし、これで民主党政権があまり真剣に、医療イノベーションには取り組まないことが明白となりました。前任の東京大学医科学研究所中村祐輔教授が米Chicago大学に去らざるえなかった事情も透けて見えます。科学と政治の狭間でもがいた中村教授の性急さや強引さもあるのでしょうが、最大の原因は行政官も動かなかったが、行政を惰性から追い立て、新しい医療を構築する力量と英知が現在の民主党政権には不足していたことだと確信しました。命に関わる先端医療の振興を政権の支持率アップのための政治的なショーに堕した責任は大きい。切実な患者の期待を裏切ったつけは必ず支払わせられると考えます。既に、消費税で政局化し、参議院の問責決議案で内閣改造を強いられる不安定な政治構造では、大胆な改革を行うことは土台無理なのかも知れません。どんどん悲観的になりますが、やはり政治的争点を明確に、旗色を鮮明にした志を同じくする治家たちが集団を形成する必要があるのではないでしょうか?つまり、衆議院・参議院同時選挙による政界再編成です。マニフェストによる詐術を学習した国民は、今度こそ賢い選択ができると信じています。

 室長に就任した松本教授には申し訳ないが、バイオテクノロジーの技術突破を実際に患者さんにお返しするためには、力不足です。しかも、同氏はRNAiの論文疑惑事件の際の工学部の調査委員の一人でもあり、情実から離れ先端科学を公明正大に判断できるとはとても思えない。同氏は東大工学部でライフサイエンス的な研究を展開しておりますが、日本の医療を変えるためには、工学畑の人材では医療制度そのものを転換することは不可能でしょう。このままでは、医療イノベーションが再び学者の遊び、つまりこんな技術ができました、これは大切だから加速審査するべきだ、という個別問題の小さな解決で終わってしまうことは明白です。

 本当に、患者さんに技術突破の恩恵をお返しするためには、技術革新を阻む日本の医療制度という伏魔殿を打破しなくてはなりません。科学技術の頭でっかちだけでは不十分、制度改革に切り込まなくては、患者さんは幸せになりません。今、患者さんの困っている事情を目前にし、なんとしても制度改革しなくてはならないという使命感が、医療イノベーション推進室長には要求されるのは、当然だと思います。何故、影響力のある医師や医療関係者から推進室長を抜擢できなかったのか?突然の中村教授の辞任を受けた新室長は確かに、火中の栗を拾うがごときでしょうが、それにしても誰も医療界から人材を得られなかったことは、既にして医療イノベーション推進室が死に体になっていることを示しています。有力議員の個人的こねによる人事だ、と噂されるのもむべなるかなです。

 内閣官房主導の医療イノベーションから、総合科学技術会議と厚生労働省に軸足は急速に移って行くでしょう。国会で承認されれば京大出身の総合科学技術会議本庶議員の跡を、大阪大学の平野教授が引き継ぎます。インターロイキン6の発見は、岸本前議員に次いで2名の総合科学技術会議議員を生んだことになります。大阪学派はアンチゲノムとも言われておりますが、現在のバイオテクノロジーは分子生物学による遺伝子の狩人の時代が終わり、ゲノム解析に基づいたゲノム医療の時代に2011年から突入したことを、是非とも認識していただき、医療イノベーションを推進することを期待しております。

 と、ここまで書きましたが、やはりイノベーションの実用化を阻む我が国の制度の病はかなり深刻で、個別の転移巣の手術では無理じゃないか?と思っている自分を発見しています。やはり今年は衆参同時選挙ではないでしょうか?結局、補正予算にも次年度の予算にも施策を反映できなかった医療イノベーション推進室の残務整理としては、是非とも選挙の争点となるような我が国の医療制度の欠陥を声高に発信していただきたい。医薬品や医療機器で2兆円の輸入超過というキャンペーンは成功したのですから、何がこの原因であるか、どう変えるべきか、国民に訴えるべきであると思います。この際、産学医官金患、全ての利害関係者の欠陥を潔く指摘して、桜の時期に散るという見事な生き方をお勧めします。国民の認識を変えることこそ、医療イノベーションの第一歩だからです。

 後は歴史の評価に任せましょう。今週もどうぞお元気で。

            日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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