新春展望2012、再生医療法の実現に向けて

(2012.01.04 09:28)
東京女子医科大学
先端生命医科学研究所教授
大和雅之

 ここ数年、2009年度、2010年度にもたれた厚生労働省「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」や再生医療学会臨床研究ガイドライン委員会等に加えていただき、再生医療にまつわる制度に関してさまざまな思いを巡らせてきた。

 私の考えは一貫している。短期的には現行の薬事法のもとで治験を経て薬事承認すべきという立場に同意するものの、中長期的には従来のお薬とあまりに異なる再生医療製品、特に患者自己細胞を用いるものに関しては、薬事法とは別の枠組が必要であり、そのためには再生医療法とでも呼ぶべき新しい法律を制定すべきというものである。

 欧米では新しいカテゴリーを設けつつも、従来の医薬品・医療機器と同様の治験をしているではないかとの批判は当たらない。現在の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に比べ、予算規模も人材の充実度もはるかに勝る欧米の審査体制でさえ、極めて柔軟な審査を行うことでかろうじて既存の諸制度の枠内で案件を処理しているというのが現実である。

 例えば、再生医療製品に対してATMP (Advanced Therapy Medicinal Products)としての欧州中央審査を求める制度が採用されて以降初の承認を得たTiGenix社のChondroCelectは、実験動物を用いる試験を行うことなく、培養系のデータのみで造腫瘍性を否定している。ヒト正常二倍体細胞が培養系で自然に無限寿命化したという事例は、科学的に確実な報告としては一例しかない。しかも、がん化にはさらに複数の遺伝子変異が必要である。

 医薬品・医療機器(特に治療機器)の開発で欧米、さらに最近では中国にも大きく遅れをとっている日本が、再生医療などの次世代医療に大きな期待を寄せるのは当然である。この時、欧米の追従ではなく、日本が世界をリードするための国策として何が必要なのかを産官学、知恵を寄せ合い検討すべき時である。時間はあまり残されていない。

日経バイオテク お薦めの専門書籍・セミナー

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧