2011年末の上場バイオベンチャーは29社。4社純増(新規上場5社、退場1社)したにもかかわらず、全社時価総額は2224→2025億円と9%減った。1社当りの平均時価は89→70億円と21%ダウンし、TOPIX指数の年間下落率20%と同程度。しかし、2010年は新規上場が1社しかなかったが、全社の時価総額は10%増加、1社当り平均時価も5%上昇、TOPIX指数の下落とは好対照であった。

 これは、アライアンスの締結や開発パイプラインの進展といったニュースが少なかったことが一因だろう。また、業界全体の経常赤字も2010年度まで3年連続で減っていたのが、2011年度には再び拡大する見通しとなったことも株式市場で嫌気されたのではないか。2012年は企業価値を高めるような提携と開発進展、経費削減ではなく増収による赤字縮小といったニュースを期待している。

 弊社ではバイオベンチャーの評価ポイントを、研究開発、参入市場、アライアンス、資金調達、IRに置いているが、最近は特にアライアンスとIRを重視するようになった。

 バイオ領域を手掛ける企業にとって、研究開発によりパイプラインを継続的に拡充、補完できることが重要なのは言うまでもない。ただ、販売を担う大手企業とのアライアンスが成立して初めて開発シーズが利益化することを改めて意識したい。交渉を担う担当役員が違えば、シーズが同じでも提携条件が大きく異なることがある。

 IRの充実度も投資判断の要だ。PRに終始せず、リスクも伝えられることが重要で、組織の大小は問題でない。過去に発表された計画と実績との乖離を調べて見ると、その企業のIR姿勢が判るだろう。また、悪材料の発表をためらう企業もあるようだが、中期的に株式市場では悪材料より不透明感が嫌気されることを忘れてはならない。余談だが、社長が「頑張る」という抽象的な言葉を連発する企業への投資も要注意だ。ロジックで成長シナリオが描けていないからだ。やはり、ベンチャーを支えるのはヒューマンリソースか。

 株式市場の参加者には2通りある。日々の株価に一喜一憂する短期売買タイプと、中長期的視野で企業成長を捉える長期保有タイプだ。前者はスペキュレーターと呼ばれ、後者はインベスターと呼ばれる。長期前提で開花するバイオ企業への投資はインベスターでなければ身が持たない。

 2012年もバイオベンチャーのIPOがあると思われるが、投資家は次の1点に注意したい。上場年度までの業績改善(赤字縮小)ペースが上場後も続くと錯覚しないこと。既存の開発品目あるいは収益モデルはいずれ陳腐化するため、新たな事業展開がなければ成長カーブが低下してしまうからだ。

 弊社アナリストの目標株価が当る確率はせいぜい3割だと感じている。しかし、株価を当てることよりも、指南を求める投資家と、会社を理解してもらいたいバイオ企業のブリッジ役を務めることが本来の使命だと考えている。打率3割のプロ野球選手も観衆に臨場感を与えることができるではないか。企業側も適切な成長戦略と情報開示で、長期投資家を永久投資家にすることは避けてほしい。