2011年の日本のバイオベンチャーはIPO、提携、開発と各方面で盛り上がりを見せました。

 何といっても最大のトピックスはIPOです。新規に5社が上場しました。IPOが1社しかなかった2010年に比べると様変わりです。これまでもっとも多かったのは2003年と2004年の各4社でしたので、7年ぶりの記録更新となりました。しかも「バイオバブル」と呼ばれた2000年代前半と異なり、最近のIPOは製薬会社との提携や5年以内の黒字化など厳しい条件が課されています。こうした中での記録更新は大きな成果といえるでしょう。これは、近年急速に進んでいる製薬業界のオープンイノベーションがもたらした結果にほかなりません。今回のIPOで特筆すべきは、シンバイオ製薬が承認された抗がん剤をもって上場したこと、スリー・ディー・マトリックスが来期、カイオム・バイオサイエンスが今期にそれぞれ黒字化を計画していることです。ここまでステージが進んだ企業が複数上場したのは、かつてないことです。

 製薬会社との提携も大いに盛り上がりました。提携件数が高水準を維持したうえに、大型契約が目立ちました。2010年はオンコリスバイオファーマのHIV治療薬による米BMS社との2.8億ドルの契約が話題となりましたが、2011年はPRISM BioLabの抗がん剤によるエーザイとの250億円の契約、イーベックの抗体医薬によるアステラス製薬との130億円の契約と、大型契約が複数実現しています。日本のバイオベンチャーのレベルが上がってきたことを強く印象付ける事例といえるでしょう。

 開発も順調に進んでいます。特に承認申請が目立ちました。そーせいのCOPD治療薬(欧州、日本)、セルシードの角膜再生上皮シート(欧州)、スリー・ディー・マトリックスの止血材(日本)が代表的なものです。そーせいの緊急避妊薬が日本で承認されたことも話題となりました。5月から提携先のあすか製薬が販売しています。

 日本のバイオベンチャーが育つ環境が整いつつあることは間違いありません。2012年も提携やIPOなど、引き続きたくさんの話題を提供してくれることでしょう。そうした中で2012年の最大の注目ポイントは複数の開発品の承認です。候補には、そーせいのCOPD治療薬(欧州と日本)、セルシードの角膜再生上皮シート(欧州)、J-TECの自家培養軟骨(日本)、スリー・ディー・マトリックスの止血材(日本)などがあります。また承認申請も多数予定されています。そーせいのCOPD治療薬2件(1件は米国、他の1件は欧州と日本)、オンコセラピーの癌ワクチン(日本)、アンジェスMGの資金提供先である米バイカル社のメラノーマ治療薬(米国)、シンバイオ製薬の抗がん剤の適応拡大などです。これだけの承認可否や承認申請の予定がそろったことは過去にありません。こうした面からも、日本のバイオベンチャーのステージが上がってきたことが確認できます。

 そして2012年に最も期待したいことは、新産業創造を目指したアカデミアの再度の奮起です。日本のバイオベンチャーの提携は大半がバイオ医薬品によるもので、その多くは大学から生み出された癌ワクチンと抗体医薬です。日本が伝統的に強い免疫学の研究を活かした成果といえます。バイオベンチャーのビジネスの方向性が見え、ベースとなる技術が大学にあることがわかった今こそ、大学発ベンチャー設立・育成のチャンスです。2012年は証券アナリストとしてこれまで蓄積した知識を活かし、こうした支援にも努めたいと考えています。