2012年は日本バイオの将来を示唆する年となろう。2011年の日本バイオの新規上場は5社となり、数の面では注目された。しかし、企業価値を表す時価総額は5社増えたにもかかわらず上場バイオ企業31社合計で2000億円程度にすぎない。日本バイオ全体の評価は相変わらず中堅製薬企業1社と同じ程度とみなされていることになる。この状況を打破するには海外からも資金を呼び込めるような目に見える成功例を示すしかない。

 そこで注目されるのは日本発のオリジナルシーズの動向である。その中でも2012年は以下の2つに注目している。1つはがん領域で新たな治療カテゴリーを創出すると予想されるがん治療用ペプチドワクチンで、世界でも開発の先頭にたっているオンコセラピーサイエンスのOTS102のキーオープンが3月に計画されていることである。もう1つが再生医療領域の事業化のキーテクノロジーと予想される「細胞シート」において、承認申請中のセルシードの角膜再生上皮シートの欧州での結果が夏頃に示されると予想されることである。ともに日本オリジナルで世界展開が期待できるものである。この領域での事業化で日本企業が先行することが示すことができれば、日本バイオへの関心は高まることになろう。試金石の1年である。

 バイオのアナリストとしては、2011年は中村祐輔氏が内閣府の医療イノベーション推進室の室長を1年でやめてしまったことはショックであった。ただ、あれだけの危機感と使命感を持ち、かつ日本の医療・バイオ復活の戦略構想を準備していた人物が1年間で日本を去る決断に至ったことから、日本の政治、官公庁の並大抵では変わらない体質を改めて実感した形となった。医療・バイオ分野にも大阪市長の橋下徹氏ぐらいの腕力ある人物が必要なのだろうが、ないものねだりをしてもしょうがない。自分は今年も日本バイオの伝道師として海外に向けて情報を発信する役割を果たそうと思っている。私は2013年が日本バイオの開花期入りとの確信を持っており、そこにたどり着くまでの耐え忍ぶ1年を支援したい。