治療効果や副作用を予測できるバイオマーカーの研究開発が進み、事前により有効性の高い個人に適した医療を実現する「個別化医療(テーラーメイド医療)」が世界的規模で進んでいる。代表的な治療法は、バイオ医薬品であり、その中でも抗体医薬品は、関節リウマチやがんなどの多様性を示す個人の病状・体質に合った治療効果が高く、副作用も少ない画期的治療薬として有効性が次々と示されている。実際に、2010年の大型医薬品世界売上ランキング上位10品目中、5品目がバイオ医薬品であった。今後もさらに多くの開発が急速に進んで行くであろう。それゆえ、当社創立以来、より特異性の高い抗体の作製を行い続けてきた当社にとっては時代のうねりの真只中にいるといっても過言ではない。

 そもそも生体内のたんぱく質は、たんぱく質を作り出す遺伝子の数よりもはるかに多く存在する。1つの遺伝子からスプライシングバリアントが何種類も作り出される事も有るし、作られたたんぱく質が、酵素等で分解されるものもある。そうした数々のイベントを経て初めて生体内で機能を持つものも少なくない。生体は誠に緻密でありその中の一握りのたんぱく質が、個別化医療(テーラーメイド医療)の標的となりうる。我々は、大学や研究機関との多くの共同研究の中から標的となるたんぱく質を見出そうとしているが容易でない。従って、継続して多くの有望な技術や標的物質を有しているところと積極的に協力して開発事業を進めるオープンマインドな社風に努めていきたい。昨年度には、これらの開発から、多くの新しいたんぱく質を測定できるキットの販売にこぎつけた。我々の注力分野である、(1)アルツハイマー病、(2)がん・炎症、(3)糖尿・脂質代謝 を中心に、生体内で機能を有する新しいたんぱく質の発見を見据えつつ、抗体の作製や定量キットの作製を継続することは医療社会への貢献に非常に重要であるという活動は変わることがない。

 一方、昨年度吸収合併した広島県にあった株式会社ネオシルクの、カイコの繭中にたんぱく質を生産させる新しい技術を本格的に新規事業化へと進める計画を行う。すでに成功している抗体作製技術は、自社抗体の生産系の変更によるコスト削減をはじめとして、研究用や診断薬で使用している抗体の代用に向けて大手企業へ売り込む。また、コラーゲンたんぱく質の生産は化粧品業界への販売促進をかけていく。将来的には、既にたんぱく質発現を成功しているフィブリノゲンをはじめとして、医薬品化を目指して行きたい。既に進めている群馬県との協力体制をさらに強固にし、農家での生産や自社内生産設備の充実などを行い、現在動物愛護の観点から問題となっている動物使用による生産手法の回避を目指す一方、動物細胞による生産系に比較してコスト面での有用性を上げ、わが国独自の技術として、広く世界に浸透・拡大していくつもりである。以上のように今年は飛躍する年として位置づけている。また、当社創立30周年の節目の年でもあり、当社が掲げている「中期経営計画」を実現して、黒字企業への転換に加え、株主様への復配の実施を是非実現させたい。