新たな年を迎えるにあたり、読者の皆さまに、この場をお借りして本年の展望と抱負を申し述べさせていただきます。

 本年は、昨年3月に発生した東日本大震災からの復興が本格化し、再生に向けた力強い一歩を踏み出す年になることを祈念しています。昨年8月に閣議決定された「第4期科学技術基本計画」では、環境・エネルギーを対象とする「グリーンイノベーションの推進」、医療・介護・健康を対象とする「ライフイノベーションの推進」に加えて、「震災からの復興、再生の実現」が、我が国の将来にわたる成長と社会の発展を実現するための主要な柱として位置づけられています。

 計画では、これらの推進、実現のために「科学技術イノベーション」が必要不可欠とされており、私もこの考えに同調しています。優れた研究開発の成果を、経済的、社会的・公共的価値の創造に結びつけていこうという意識を、科学技術の振興に携わる立場にいる者は、今までより一層強く持たなくてはなりません。

 さて昨年11月から内閣府では、「科学技術イノベーション政策推進のための有識者研究会」(座長 吉川弘之 元東京大学総長)が開催され、私もメンバーとして参加させていただき、国家戦略としての科学技術イノベーション政策を具体的にどのように推進していくかについて議論してきました。その結果は、昨年末には報告書として取りまとめられ公表されていますが、総合科学技術会議に代わるものとして、新たな「司令塔」の機能を備えた組織の設置や、科学的な知見に基づいて中立的な立場で内閣総理大臣らに助言する「科学技術イノベーション顧問(仮称)」の新設などを提言しています。

 このような国の中枢機能に対して、より研究現場に近い立場としての大学や産業界、あるいは研究開発法人は、文字通り「三位一体」となって、国の政策目標を達成するための明確な意思を持った研究開発を実行していくことが望まれます。JSTは、大学と産業界の中間に位置し、優れた研究開発の成果の橋渡しなど、全体をコーディネートする役割を担うことを強化していきます。研究者の知的好奇心に基づく独創的な基礎研究などの中から、社会的問題を解決する可能性のある、キラリと光る研究を見つけ出し、課題達成型基礎研究として社会に役立つステージまで繋げることを強力に推進します。そのためには、研究資金を単に配分するだけではなく、ある目的にあった課題に対してベストメンバーを結集させた「バーチャル・ネットワーク研究所」を機能させる―これが今後のJSTの大きな役割の1つであると考えています。

 「事を起こす」という言葉があります。「重大なことを始める」という、その言葉の意味が示すように、「科学技術イノベーション」の重要性を噛みしめ、あらゆるステークホルダーとの連携や対話を常に進めながら、社会に向けた成果の創出に邁進していきたいと考えております。