昨年の我が国は文字通り激動の1年であったと思います。2012年という新しい年は、我が国を取り巻く閉塞感を打破し、成長に向けて大きく前進していく飛躍の年になることを願っています。そのためには、これまでの常識に囚われず、全ての面でまったく新しい発想のもと抜本的な改革を行うことが必要です。特に昨年我が国は、東日本大震災という未曽有の災害に見舞われ、多くの被害を受けました。我々はこの現実と向き合い、復興に向けて歩んでいかねばなりませんが、これまでの復興対応からは、現在のシステム下で行うことの限界を感じますし、誰もが改めて改革に取り組むことの必要性を痛感したと思います。

 また福島原発の事故は、日本の科学技術の信頼性を大きく揺るがせたと思います。このような中、最先端の創造的な開発に取り組むためには、国民や更には世界から、日本の技術の信頼性を取り戻す努力が必要になります。そのためには、これまで以上に、イノベーションに取り組む意義を明確にすると共に、リスクに対する情報も積極的に発信して公開性を徹底させた取り組みが必要だと思います。

 その中で医療分野のイノベーションの取り組みは、日本の医療のあり方を抜本から見直し、医療分野を真の成長産業として育成する動きとして、その重要性は再三指摘されていましたが、これまで縦割りの弊害等によりなかなか進展しませんでした。しかし我が国でも昨年ようやく内閣官房に国の司令塔となる医療イノベーション推進室を設置し、本格的な取り組みを始めました。医療分野の司令塔としての業務は、我が国にとって初めての試みであり、手探り状態で始めましたが、様々な障害にもがき苦しみながら進めてきた1年であったと思います。

 しかし医療分野の産業化は大きな可能性を秘めた分野であり、国として更に進めていかねばなりません。医療イノベーションの活動の2年目にあたり、今後は、いかに既成の壁を打破し、産学官が国の将来を真剣に考えてどこまで取り組めるか、その本気度が試されていると言えます。特に今年は、オールジャパンの創薬体制の構築、ものづくり企業の活力も取り入れた医療機器開発の基盤づくり、再生医療の実用化促進、個別化医療の先進的な取り組みとなる東北地方の医療システム構築など、これまで医療イノベーション推進室が打ち出してきた政策を、具体的な形として作り上げていく「実行の年」であり、またそのためのオールジャパン体制を構築することが重要になります。2012年は、医療イノベーションの正念場の年になると思います。

 医療イノベーションの歩みを止めることなく、医療分野を真の成長産業に育て、日本の医療を変えていくための大きな飛躍の年になるよう、本年も精力的に取り組んでいきたいと思います。