こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週の土日は、都内で開催された日本ワクチン学会学術集会の取材をしてきました。日曜日には、ワクチンの啓発活動を行うために企画されたシンポジウム「感染症・予防接種の教育と啓発」の中で、「メディアの果たす役割は」というタイトルでプレゼンテーションをさせていただくという大変貴重な機会をいただき、思うところを述べさせてもらいました。

 我々は、バイオテクノロジーの産業利用というところにフォーカスを絞ったメディアを運営しており、いわゆるマスメディアとは少し立場が異なるかもしれません。ただ、いわゆるソーシャルメディアの台頭によって自分たちの存在意義を考え直さなければならないという点では、おそらく多くのメディア関係者と同じ問題意識を持っていると思います。

 シンポジウムで私が述べたのは、インターネットを通じて個人や組織が自由に情報発信できるようになる中では、既存のメディアとしてはより個性や独自性を強く打ち出し、その価値が認められなければ生き残るのが難しくなっているということと、その結果、メディアはますます多様化し、切り口や見方の異なった様々な情報が飛び交うようになるだろうということです。そして、情報が多様化するのは健全なことだけれども、情報の受け手にとってはその多様な情報の中から有益なものを取捨選択することが重要であって、その能力を身に付けてもらう一助となることがメディアに求められる役割だろうと述べました。

 ワクチンの関係者から、過去にメディアがワクチンの副反応や、安全性に対する懸念を強調しすぎたから、国民の間にワクチンに対する不信感が募り、ワクチンの政策が停滞することになったと指摘されたことがあります。ただ、安全性を懸念する事態が生じたときにその旨を報道をすることはメディアの重要な役割です。問題はその報道が画一的なものに偏ってしまうことですが、個性的な存在であることを重視している我々としては、情報の多様化に寄与する報道を心掛けていきたいと考えています。ちょっと観念的な話になってしまいましたが、個性的なメディアでありたいと考えている我々のスタンスを理解いただければと思います。

 ところで、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授が、医療イノベーション推進室の室長を退任して、米Chicago大学に転出することが発表されました。

医療イノベーション推進室の中村室長が辞任へ、University of Chicago教授へ転出
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111213/158556/

 医療イノベーション推進室は、民主党政権が掲げる新成長戦略に基づいて、産学官のオールジャパンで日本発の医薬品、医療機器、再生医療を生み出すことを目的に、2011年1月7日に内閣府に設置された組織です。省庁縦割りの壁を廃して基礎研究の実用化を推し進めるためのリーダーシップを発揮することが期待されていました。

 ただし、東日本大震災の発生などもあって、推進室は当初期待されたほどの成果を上げているとは言い難いです。また、総合科学技術会議との役割分担が不明確であるといった問題も指摘もされていました。そのことが中村教授が退任する動機になったのかもしれませんが、いずれにせよ、室長の交代を機に、推進室の機能や権限など根本的に見直すべきでしょう。バイオ分野においては、規制と振興の両面で政府の果たすべき役割は大きく、また期待もしています。

 昨日、日経バイオ年鑑2012も無事に発売しました。例年、バイオ年鑑を購入いただいた方には、その情報をオンラインでも提供するようにしてきましたが、今年は10月に日経バイオテクONLINEのリニューアルを果たしたため、日経バイオ年鑑ONLINE版を提供するプラットフォームも変更しました。

 新しいプラットフォームでは、日経バイオ年鑑も格段に利用しやすくなったと思います。日経バイオ年鑑をご購入いただいた方は、ぜひ日経バイオ年鑑ONLINE版をご利用いただき、ご感想や、改良点の提案などをいただければと思います。

日経バイオ年鑑2012
https://bio.nikkeibp.co.jp/db/yb2012/

 本日はこのあたりで失礼させていただきます。ご意見、ご感想は、下のサイトからお願いします。

https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明