こんにちは。水曜日のメールマガジンを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 日経バイオテク12月5日号のキーパーソンインタビューの欄に、キアゲンのStephane Perrey社長に登場いただきました。キアゲンは、日本では研究機器試薬メーカーとして知られてきましたが、2010年2月にヒトパピローマウイルスなどのDNA検出用の体外診断用医薬品を発売し、診断薬市場に参入しました。また、転移性大腸がんに対して抗がん剤のセツキシマブ、パニツムマブの投与する前に行う、KRAS遺伝子検査などのコンパニオン診断薬の開発も積極的に行っています。インタビューでは、そうした診断薬ビジネスの状況について詳しく聞いていますので、ぜひお読みいただければと思います。

日経バイオテク12月5日号「キーパーソンインタビュー」、
キアゲン Stephane Perrey社長に聞く
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111207/158327/

 記事の中で、非小細胞肺がん患者において抗がん剤ゲフィチニブを処方する前にEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異を検査するキットを「2010年12月に承認申請しており、近く承認が下りるだろう」と紹介しましたが、実はキアゲンのtherascreen EGFR遺伝子変異キットは、11月25日に承認を取得しています。訂正というわけではありませんが、インタビューした時点と記事掲載時点の間に時間差があったために、微妙にずれた内容になってしまいました。

 いずれにせよ、先週のメールでも書いたように、その医薬品が有用な患者かどうかを見分けるためのコンパニオン診断薬が増加しつつあるのは確かです。一方で、コンパニオン診断薬が本当に普及していくためには壁が幾つもあります。その1つであり、かねてより診断薬企業の関係者が「これでは採算が合わないので、日本にコンパニオン診断薬を導入できない」と主張してきた、診療報酬で2000点(2万円)しか点が付かない“2000点問題”が果たして見直されるのかどうか。キアゲンのEGFR遺伝子検査キットがどう扱われるのかをもうしばらく見守る必要がありそうです。

 話題は変わりますが、12月5日に武田薬品工業が「グローバルでのワクチン事業の強化について」と題する発表を行いました。第一三共が北里研究所と合弁を設立してワクチン事業を引き継いだり、アステラス製薬がインフルエンザワクチンを開発するバイオベンチャーのUMNファーマと提携するなど、ここ数年、大手製薬企業の間ではワクチン事業を強化する動きが目立っていましたが、いずれも日本市場を視野に入れたものでした。その点、ワクチン事業をグローバルに展開する方針を明確にし、グローバルの拠点を設けて外国人リーダーを招聘したというのは初めてのケースです。

武田薬品工業株式会社、グローバルでのワクチン事業の強化について
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/pressrelease/20111206/158275/

 海外の大手製薬企業はいずれもワクチン事業をグローバルビジネスとして展開しており、既に医薬品事業では事業をグローバルに展開している日本の大手製薬企業も、グローバルビジネスとしてワクチン事業に取り組むのは当然のようにも思います。ところが、政策の影響を強く受けるせいか、日本のワクチンビジネスはこれまで極めて内向きだったといえるでしょう。しかし、海外から新しいワクチンが次々に入ってくる中で、いつまでも日本市場だけにしがみついていていいのかどうか。現時点では新しいワクチンが相次いで承認されていることなどから、日本のワクチン市場は拡大傾向にありますが、いずれは人口減少の影響がこの市場にも及ぶことでしょう。一方で、新興国や途上国では必要とする人たちにワクチンが行き届いていないことが問題になっており、日本企業が進出するチャンスは十分ありそうです。今回の武田薬品の決定が、他の日本企業のワクチンビジネスにどう影響するのかも、注目していきたいと思います。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明