こんにちは。水曜日のメールマガジンを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週のこのメールで紹介したように、日経バイオ年鑑2012の編集作業がほぼ終了しました。今年は東日本大震災に被災し、多額の損害を被った企業などがある一方で、バイオ関連分野でも震災からの復興に貢献しようと、さまざまな取り組みがなされています。そこで、日経バイオ年鑑2012では、「バイオ分野における東日本大震災の影響」とする項を設けて、取り組みをリポートしました。もちろん、例年と同様、バイオ関連市場の動向や、政府の動向など、各分野における詳細なリポートも掲載しています。12月12日まで予約特価でのお申し込みを受け付けていますので、ぜひこの機会にご購入いただければと思います。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/book/04.html

 さて、日経バイオ年鑑の編集作業が一段落したので、今週は日経バイオテク30周年記念セミナーを開催しています。まず、月曜に日本PGxデータサイエンスコンソーシアムと共催のバイオマーカーを利用した医薬品開発に関するセミナー『PGx・バイオマーカーが変える医薬品開発』を開催しました。そして本日は、この原稿が皆様の目に触れる時には既に過去形になりますが、次世代シーケンサーをテーマとするセミナー『1Gシーケンスの挑戦、ゲノム解析の新たな地平へ』を開催しています。

 月曜日に開催したセミナーについては、日経バイオテク12月19日号でその内容をリポートする予定です。セミナーに参加できなかった方は、ぜひとも日経バイオテク本誌、もしくは日経バイオテクONLINEでお読みいただければと思います。日経バイオテクONLINEはリニューアル後、図表や写真も掲載できるようになったので、本誌に掲載した特集やリポートの記事をONLINEにも掲載しています。

 バイオマーカーのセミナーに参加して強く感じたのは、既に多くの製薬企業で医薬品開発時にバイオマーカーを利用するのは必須となりつつあるということと、医薬品との同時申請、同時承認にはかなりの困難を伴うものの、コンパニオン診断薬がいよいよ日本でも急速に普及していくだろうということです。セミナーで医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方が紹介していましたが、日本でもコンパニオン診断薬のガイドラインを検討する作業が既に始まっています。

 しかしながらつくづく思うのは、日本の医療制度の中では、診断薬に対してあまりにも投資を怠ってきたということです。PMDAで診断薬の審査を担当する人員は、現在たったの3人しかいません。PMDAでは、ドラッグラグ、デバイスラグの解消を掲げて審査人員の大増員を図ってきたはずですが、診断薬については取り残されたままだったわけです。その人数で、日常的な診断薬の審査を行いながら、コンパニオン診断薬については医薬品と同じタイミングで承認できるようにスピードアップしろと言っても無理があります。現場の審査スピード云々の問題ではなく、政策の意思決定をする側がこの問題に目をつむってきた結果です。

 遺伝子検査に関する診療報酬の2000点問題にしても同じです。対象となる患者数が限られるコンパニオン診断薬では、2000点(2万円)の診療報酬では採算が合わない、ビジネスとして成り立たないと、以前から関係者が何度も訴えてきたのに、これも今もって放置されたままです。これでは、コンパニオン診断薬が本当に普及できるのか疑問もわいてきます。

 しかし、コンパニオン診断薬の重要性は明らかです。考えてみれば、多くの医薬品はほとんどの人にとって毒物に過ぎず、価値があるのはごく一部の人に対してだけなのです。それが、臨床試験などで得られた情報が加わることで、どういう人に使えば有益かが明らかとなり、医薬品が価値を発揮できるようになります。そして、コンパニオン診断薬はその情報を直接的に得るための方法であり、特定の医薬品にとってはコンパニオン診断薬がなければ真の価値を発揮することができません。コンパニオン診断薬は、医薬品に正しい価値をもたらすツールなのです。

 いずれにせよコンパニオン診断薬に限らず、日本の医療制度の中で、「診断」はその重要性が認識されず、投資がなされてきませんでした。ぜひとも政策サイドの人には、「診断」の価値を正しく評価し、価値に見合った投資がなされるように、医療費の配分の在り方を見直してもらいたいものです。

 実は、体外診断用医薬品については、12月9日に開催する「中国進出セミナー」でも1つのテーマと位置付けています。このセミナーは、医療機器とIVD(体外診断薬・機器)企業を対象に、中国の医療政策や制度、医療機器市場、規制、流通手続きなどを解説するものです。中国の規制当局である中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)の、医療機器審評センターの元センター長で、現在は審査員などを要請する高級研修学院の副院長を務めておられる劉吉英さん、中国最大手の製薬企業である中国医薬集団のグループである中国医療機器有限公司の崔さん、朱さんらを講師にお招きしていますので、中国における診断の位置付けなどについても聞いてみたいと思います。セミナーの参加者をまだ受け付けていますので、ぜひご参加ください。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/111209/index.html

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 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明