2週間ぶりにお目にかかります。「日経バイオテク/機能性食品メール」も担当しております日経BP社バイオ部編集BTJ編集長の河田孝雄です。

 この2週間の間に、BTJ/日経バイオテク・オンラインに22本ほど、機能性食品と関連のある記事が掲載されました。メール後半に、記事見出しリストと、注目したポイントとを記載させていただきます。ご覧いただければと思います。

 今回はまずは、先週水曜日(6月15日)に医療経済研究・社会保険福祉協会(略称:社福協)が都内で開催なさった第23回健康食品フォーラムの話題からお届けします。

 「食と健康食品についての考察と視点」をテーマに開催され、まずは、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻食糧化学研究室の清水誠教授が「健康食品・機能性食品の今後を考える」という演題名で基調講演をなさいました。

 清水教授は、生命科学が急速に進歩し、食品の機能性評価はだんだん難しくなってきた旨のお話しもされました。

 まさに同感です。このフォーラムの翌日(6月16日)は、環境ホルモン学会の第25回講演会「エピジェネティクスから探る発生から疾患までの制御」を取材しまして、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授の「性ホルモン類による転写とエピゲノムの共制御因子群の機能」から、東京大学大学院総合文化研究科の太田邦史教授の「環境応答とエピゲノム」まで、合計5題の講演をうかがいました。

 エピジェネティクス、エピゲノムの分野の進展は目覚しいものがあります。いまエピジェネ、エピゲノムの特集記事の取材を進めているという、「取材側のバイアス」はありますが、加藤教授がおっしゃるように、トップジャーナルに相次ぎ発表されているエピジェネの成果を、ニュース記事として取り上げることが増えています。

 栄養との関係では、同じゲノムを持つ女王蜂と働き蜂の例が代表的です。ロイヤルゼリーなどの栄養成分の違いにより、種存続における役割の分担が劇的に変わります。エピジェネ分野は、機能性食品の研究でも、まさに「必須アイテム」です。引き続き報道に注力して参ります。

 東大の太田邦史教授の著書「自己変革するDNA」(みすず書房、2011年1月発行)をただいま読んでおります。おすすめです。

※BTJ/日経バイオテク・オンラインの最近のエピジェネ関連記事

理研基幹研がエピジェネ遺伝の新機構を発見、親のストレスが子供に遺伝
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062482303
 
海外発表、Virginia Commonwealth大学、ミトコンドリアDNAにもエピジェネティックな修飾が起こる可能性示す
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062282247

理研RCAIほか、AP-1B欠損マウスはクローン病モデルに、クローン病患者でAP-1Bは低発現
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062282246

2011年度のCREST新規研究領域に「エピゲノム」、東京と大阪で来週説明会
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062182245

東大先端研、転写因子GATA2の標的因子はendomucin、ChIP-seqとエピジェネの成果を論文発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061182013

東大先端研、富士通と共同でIT創薬の基盤整備へ、製薬企業巻き込み、まずは2年間で1つのリード化合物の創出目指す
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061082011

理研がエピヌクレオソームを試験管内で再構成、梅原崇史上級研究員が奨励賞受賞
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052181548

「アカデミック交差点」第5回日本エピジェネティクス研究会に400人、第6回は東京、第7回は奈良
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052081547

国立がん研と明治、腸内細菌叢の変化が炎症による大腸上皮のDNAメチル異常の誘発に影響
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052081516

東大の秋光准教授ら、エピジェネティックな遺伝子発現制御にRNA分解経路が関与、ChIP-seq活用
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011051981513

第5回日本エピジェネティクス研究会年会が熊本で開幕、基調テーマは「アカデミック交差点」、奨励賞を新設
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011051981511

 今週水曜日には、東大の清水誠教授が専門委員を務めている食品安全委員会の新開発食品専門調査会第77回を、傍聴取材しました。「食品に含まれるトランス脂肪酸」と題した新開発食品評価書の案には、トランス脂肪酸の評価で考慮すべき、ヒトゲノムの遺伝子多型として、RNaseLのQQ/RQ、FABP2のコドン54の遺伝子変異などが記載されていました。

 食品の機能性や、その裏返しという意味もある安全性の評価で、どこまで個々人のゲノムの違いを考慮すべきなのでしょうか。

 今週月曜日(6月21日)の午前中に開かれた環境バイオテクノロジー学会2011年度大会の第44回シンポジウム「復旧・復興への環境バイオテクノロジーからの提言」では、いわゆる「がれき」に囲まれた空き地も子供たちの遊び場になっているが、アスベストに配慮すべき、という発言がフロアからも相次いでいました。

 アスベストも放射能も、健康への影響評価は数十年がかり。さらにゲノムの違いを考慮すると、問題はさらに複雑になります。

 メール原稿の締切時間になりましたので、無料で全文をご覧いただける
BTJジャーナルの紹介もさせていただきます。

 ヒトの健康栄養研究が、日本の大学で活発でない理由などを、文部科学省の科学技術政策研究所(NISTEP)は、Discussion Paperとして発表した概要を、BTJジャーナル2011年5月号に、4ページにわたり記事を掲載しました。ご覧いただければと思います。

BTJジャーナルのダウンロードは、こちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html

 なおこの4ページのリポートは、以下の記事ともとに、とりまとめました。

日本は人間栄養学の研究者養成の大学が圧倒的に不足、動物実験は世界2位だがヒト研究は9位、文科省NISTEPが論文分析
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010122778301

ヒト栄養関連主要論文の被引用数の日本2位は花王、明治製菓とカルピス、ネスレ、ヤクルトもTop10入り、文科省NISTEPが所属機関別ランキングを発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010122778302

文科省NISTEP、健康栄養研究が日本の大学で活発でない理由を歴史的変遷から調査研究
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011033080451

 最後に、前回のメール以降に報道された機能性食品関連の記事22本のリストを以下に掲載し、ポイントを紹介させていただきます。

◆「BTJ/日経バイオテク」より◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       機能性食品分野のバイオテクノロジー関連記事(直近2週間分)
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【2011-6-24】
理研基幹研がエピジェネ遺伝の新機構を発見、親のストレスが子供に遺伝
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062482303
■ポイント■エピジェネの新しいメカニズムの解明で、日本の研究者も大きな貢献をしています。 ■

【2011-6-23】
タキイ種苗がミズナに比べアントシアニン10倍以上のカラシナ新品種、「ファイトリッチ」シリーズ9品種に
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062382301
■ファイトリッチの事業展開に注目しています。■

理研PSC、気孔閉鎖に必要な輸送因子AtABCG22を発見、植物の乾燥耐性機構の解明へ前進
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062382300
■植物のフェノーム研究が、成果に結びいています。■

環境バイオ学会大会に190人参加、「復旧・復興への提言」シンポジウムも
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062382292
■被災地の状況も詳しい紹介がありました。■

京大や九大など、ヒスタミンH1受容体の立体構造をNature誌に発表、JSTのERATOの成果
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062382265
■花粉症対策への貢献も大きい成果です。■

JST、日本-ブラジル研究交流のバイオ課題2件を決定、サンゴ礁微生物生態系のメタゲノム解析も
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062282264
■生態系のメタゲノム解析にも注目しています。■

葛の花エキスのイソフラボン類は褐色脂肪細胞のUCP-1たんぱく質の発現を亢進、東洋新薬が褐色脂肪シンポで発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062282259
■北大で開催された「褐色脂肪研究の新展開」シンポジウムは盛会でした。■

理研RCAIほか、AP-1B欠損マウスはクローン病モデルに、クローン病患者でAP-1Bは低発現
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062282246
■クローン病の発症メカニズムの解明が進んでいます。■

2011年度のCREST新規研究領域に「エピゲノム」、東京と大阪で来週説明会
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062182245
■数十億円規模の研究費がエピゲノム分野で確保されました。■

【アカデミアSelect】ラジカルS-アデノシル-L-メチオニン酵素のRNAメチル化反応、結晶構造解析で機構解明
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011062082195
■結晶構造解析技術がメカニズム解明で絶大な威力を発揮しています。■

理研CMIS、脳内炎症でCOX-1の機能が亢進、PETプローブでライブイメージング
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061782176
■ライブイメージング技術も、メカニズム解明に大きな貢献をしています。■

【節電対策(6)】理研筑波研、実験動物施設の節電に日立プラントと特許技術、第2次補正でライフライン強化
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061782164
■実験動物施設の節電対策は、悩ましいことがたくさんあるようです。■

【節電対策(5)】理研横浜研SSBC領域は36%節電、NMR稼働は34台のうち9台減らす
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061682140
■理研横浜研究所では、7月1日からの節電対策を急ピッチで進めています。■

【節電対策(4)】シーケンス受託実績が前年比1.8倍の理研横浜研オミックス領域、27から30%の節電達成へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061682137
■領域を率いる長の決断はとても重要と改めて思いました。■

春の褒章発表、紫綬褒章は河岡義裕氏、浅野泰久氏、近藤孝男氏、中尾一和氏、北川進氏ら25人
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061682107
■震災への配慮から2カ月近く遅れての発表となりました。■

【節電対策(3)】つくば市で6月17日に「節電大会」、グリーンカーテン用ゴーヤ苗を1000人にプレゼント
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061682106
■ゴーヤは、グリーンカーテン用にも大人気ですね。■

中部大の津田准教授が栄養・食糧学会の肥満シンポで発表、プロポリスはPPARγアゴニスト、ビルベリーはAMPキナーゼ活性化
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061582105
■機能性食品の注目素材のメカニズム解明が進んでいます。■

東農大の喜田聡教授ら、記憶能力が向上した組み換えマウス作製、CREB-BDNF情報伝達経路は記憶障害疾患の創薬の標的に
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061582104
■機能性のメカニズムの解明に、実験動物も欠かせません。■

【節電対策(2)】理研横浜研、第2次補正予算でコジェネ整備へ、シーケンサー2台稼働分
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061582081
■研究を減速させないために、自家発電設備の拡充は必要と思います。■

続報、【節電対策(1)】夏期休業日の設定を理研とAISTが相次ぎ発表、AISTに3割削減のポスター
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061482057
■大学でも、平日の一部を土日と入れ替えるなど対策を進めています。■

海洋研究開発機構、DHSリアクターで「ちきゅう」の八戸沖掘削コア試料からメタン生成菌を高効率培養・分離、海底下のバイオガス発生機構解明へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061182014
■日本は豊富な海の資源の研究にもっと注力してよいのでは、と思います。■ ■

東大先端研、転写因子GATA2の標的因子はendomucin、ChIP-seqとエピジェネの成果を論文発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011061182013
■論文発表の経緯なども興味深く拝聴しました。■