2週間ぶりにお目にかかります。「日経バイオテク/機能性食品メール」も担当しております日経BP社バイオ部編集BTJ編集長の河田孝雄です。

 この2週間の間に、BTJ/日経バイオテク・オンラインに15本ほど、機能性食品と関連のある記事が掲載されました。メール後半に、記事見出しリストと、注目したポイントとを記載させていただきます。ご覧いただければと思います。

 この2週間で、特に印象に残っている取材の話題は、放射性物質と節電対策。いずれも原子力発電所の事故に関係したものです。

 先々週の月曜日(2011年5月30日)は、都内で開催された駐人英国大使館・政策研究大学院大学の共催シンポジウム「緊急事態における科学者の情報受発信~フクシマからの教訓」を取材しました。英国政府主席科学顧問のSir John Beddington教授は講演やパネルディスカッションの中で、ワーストケースシナリオで考慮した上で、在東京の英国民は避難すべきではない、東京の英国大使館は移す必要はない、という判断を科学的アドバイスとして首相に報告したことを話しました。今回の東日本大震災における英国政府の対応の仕方に、このアドバイスが大きな影響を与えました。こちらは記事とりまとめ中です。

 その少し前の土曜日(2011年5月28日)は、都内で開催された日本食品衛生学会の
緊急シンポジウム「食品の放射性物質汚染とその対応」を取材しました。こちらは
2本記事にまとめています。

【放射線の科学コミュニケーション(5)】5月28日の「食品の放射性物質汚染」緊急シンポに350人参加、一般150人
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052981715

「輸出額目標年1兆円の環境は原発事故で180度変わった」、
農水省の輸出促進室長が講演、1次補正予算1億円余で放射能検査機器を整備
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052981716

 この2本目の記事としてまとめた農水省の発表では、改めて今回の天災および人災の影響の大きさを知りました。

 福島第一原子力発電所の事故以来、「安全で健康にいい」という日本産食品に対するこれまでの高い評価が、180度変わってしまったのです。農水省は農林水産物・食品の輸出額を2013年度までに1兆円規模にするという政策目標を数年前から掲げていますが、今回の原発事故により達成は困難になりました。

 農林水産省大臣官房国際部国際経済課貿易関税チーム輸出促進室の土橋信昭室土橋室長は、日本産食品の輸入に対して、諸外国が規制や検査を強化している現状を最新の情報を基に紹介なさいました。日本産食品に対する諸外国の規制や検査のレベルは、4グループに分けることができるとのことです。

1.「日本の全ての食品につき輸入停止または証明書を要求」が、23カ国・地域
2.「日本の一部食品につき輸入停止または証明書を要求/他の食品の全部または一部につき全ロット検査」が3カ国・地域
3.「日本の一部食品につき輸入停止または証明書を要求」が5カ国・地域、
4.「輸入国における検査の強化のみ」が8カ国

 このうち「1.日本の全ての食品」のグループの一部の5カ国・地域(EUとノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン、アイスランド)は、放射性物質の検査証明を義務付ける産地対象を、5月23日(月)からの週の半ばに、12都県から13都県に増やしました。増えた県は神奈川県。5月中旬にお茶の生茶から規制値を超える放射性セシウムが検出されたことを踏まえての規制強化です。

 今週の水曜日(6月8日)は、都内で開催された「イネイネ・日本」プロジェクト第10回シンポジウム「がんばれ、東日本の米作り!」を取材しました。「東日本大震災による農業被害と復興対策」などの講演が続きました。

 放射性物質の漏出・拡散の問題とともに、現在注力している取材は、節電対策です。関東地区などの研究機関や大学などで、この夏の15%節電の達成に向けてどんな対策を進めているかを、研究成果の取材のときにも、必ずうかがうようにしています。

 ただいま記事とりまとめ中ですが、特に印象に残った話題をいくつか紹介します。3月11日に発生した巨大地震の状況を見て、その翌々日ぐらいには、コジェネの自家発電装置を発注したところもあります。節電のため、デスクトップパソコンを全て、ノートパソコンに買い換えたところもあります。トップダウンで3割削減目標が打ち出され、対応に苦慮しているところもあります。霞ヶ関が方針をまだ決めていないため、対応を決めかねているところもあります。

 特に実験動物など、生きた生物を管理しているところは、節電対応に苦慮なさっているようです。いまの原子力発電に対する社会情勢を見ますと、この夏だけでなく、半年後の冬も、さらに来年の夏も、と節電対策に追われることになりそうです。

 オフィスもそうですが、地下鉄などの電車の社内環境も、だんだんと悪い状況になってきています。そんな中、理化学研究所の横浜研究所にJR鶴見駅からバスで移動しながら、東京電力の電気を使っている交通機関かどうかで、大きな違いがあるのだと改めて感じました。

 東日本大震災後は、東京地区でも、ペット飲料水やお米、ヨーグルト、納豆などの飲食物が品不足になりました。その中で、ヨーグルトは、輪番停電・計画停電の影響が大きかったようです。昨日(6月9日)に都内で開催されたプロバイオティクスシンポジウム2011は、震災の影響で遅れて開催となりましたが、ヨーグルトメーカーなどが、乳酸菌の効用について興味深い知見を次々と発表なさっていました。記事とりまとめ中です。

 メール原稿の締切時間になりましたので、無料で全文をご覧いただけるBTJジャーナルの紹介もさせていただきます。

 ヒトの健康栄養研究が、日本の大学で活発でない理由などを、文部科学省の科学技術政策研究所(NISTEP)は、Discussion Paperとして発表した概要を、BTJジャーナル2011年5月号に、4ページにわたり記事を掲載しました。ご覧いただければと思います。

BTJジャーナルのダウンロードは、こちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html

 なおこの4ページのリポートは、以下の記事ともとに、とりまとめました。

日本は人間栄養学の研究者養成の大学が圧倒的に不足、動物実験は世界2位だがヒト研究は9位、文科省NISTEPが論文分析
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010122778301

ヒト栄養関連主要論文の被引用数の日本2位は花王、明治製菓とカルピス、ネスレ、ヤクルトもTop10入り、文科省NISTEPが所属機関別ランキングを発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010122778302

文科省NISTEP、健康栄養研究が日本の大学で活発でない理由を歴史的変遷から調査研究
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011033080451

 最後に、前回のメール以降に報道された機能性食品関連の記事15本のリストを以下に掲載し、ポイントを紹介させていただきます。

◆「BTJ/日経バイオテク」より◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       機能性食品分野のバイオテクノロジー関連記事(直近2週間分)
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【2011-06-09】
花王がエコテクノロジーリサーチセンターを開所、植物・バイオマス研究棟の温室は一般見学も
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060981990
■2年前に発表した研究センターが開所しました。設備投資額は総額約160億円で
す。■

【2011-06-09】
京大と産総研、転写因子Glis1で安全なiPS細胞を高効率作製
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060981968
■AISTプロジェクトで開発されたヒト完全長cDNAライブラリーが威力を発揮しました。■

【2011-06-07】
理研と高輝度光科学研究センター、SACLAで世界最短波長のX線レーザー発振、性能向上で2011年度内に供用運転へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060781938
■06年度から5年間にわたり約390億円の国費をかけて建設されました。■

【2011-06-07】
JSTが米Thomson Reuters社のオンライン論文投稿・査読ツールを採用、まず64誌で使用開始
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060781920
■直観的なインターフェースと豊富な機能を備えたオンライン論文投稿・査読システムとのことです。■

【2011-06-04】
東大、X線結晶解析と化合物ライブラリーでオートタキシン阻害剤、がん細胞の遊走阻止薬へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060481873
■文部科学省「ターゲットタンパク研究プログラム」(2007~2011年度)の成果です。■

【2011-06-03】
理研RCAI、Bリンパ球の免疫応答をリアルタイムで可視化、細胞分化の場所と細胞移動経路を特定
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060281842
■ライブイメージング技術を活用した論文が目立ちます。■

【2011-06-02】
日清オイリオに栄養・食糧学会トピックス賞、中鎖脂肪酸はインスリンの分泌を増やして血清アルブミン低値を改善
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060281843
■中鎖脂肪酸が健康機能を発揮するメカニズムが段々と分かってきたようです。■

【2011-06-01】
理研BASE、仮想ラボセンター「SciNetS」でライフサイエンス研究データの実用化研究加速
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011060181782
■知識情報を扱う国際標準規格「セマンティックウェブ形式」に準拠しているとのことです。■

【2011-05-31】
MBSJ春季シンポ、オーファン酵素の基質を次々解明、中山敬一・九大教授が質量分析計12台で新プロテオミクス
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011053181779
■要旨集には13台とありましたが、最近、古い1台を廃棄したとのことです。■

【2011-05-30】
阪大の濱田博司教授ら、体の非対称性の起源解明に大きな一歩、再生医療の基盤へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052981718
■マウス胚を用いて将来の頭尾(前後)方向を決める細胞の由来を調べました。■

【2011-05-29】
「輸出額目標年1兆円の環境は原発事故で180度変わった」、農水省の輸出促進室長が講演、1次補正予算1億円余で放射能検査機器を整備
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052981716
■放射性物質の検査証明を義務付ける産地対象は5月下旬に12都県から13都県に増えました。■

【2011-05-29】
【放射線の科学コミュニケーション(5)】5月28日の「食品の放射性物質汚染」緊急シンポに350人参加、一般150人
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052981715
■東京の梅雨入り宣言が出た翌日で台風が近づいた雨天の中を大勢が参加しました。■

【2011-05-28】
国立大学法人の第1期中期目標期間の評価が決定、研究で「非常に優れる」は90法人のうち4法人、業務などの項目で「不十分」に6法人
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052881714
■お茶の水女子大学は教育研究の2項目で最高評価でした。■

【2011-05-27】
名大発ベンチャーのヘルスケアシステムズ、抗体チップを用いた受託分析サービス事業を6月開始、イムノクロマトも
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052781713
■尿中酸化ストレスマーカーや尿中エクオールの受託分析サービスを6月1日から開始しました。■

【2011-05-27】
理研と京大、プロテオームプロファイリングで抗がん剤候補の標的を迅速同定
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011052481626
■プロテオームプロファイリングは食品成分の機能性解明にも威力を発揮します。■