4週間ぶりにお目にかかります。「日経バイオテク/機能性食品メール」も担当しておりますバイオ部編集BTJ編集長の河田孝雄です。

 日経バイオテク/機能性食品メールは原則として毎月、第2金曜日と第4金曜日にお届けしていますが、先々週の今月(2011年2月)の第2金曜日、2月11日は「建国記念の日」で祭日でしたので、お休みをいただきました。

 この4週間の間に、日経バイオテク・オンラインでは28本ほど、機能性食品関連の記事を報道しています。メール後半に、記事見出しリストと、ポイントとを記載させていただきます。

 さて、今回のメールは、日常の食卓を豊かにする「ゲノム育種」の話題から始めます。ここ5年で数万倍という技術革新により、ゲノム解析が従来に比べ飛躍的に簡便になってきました。

 食卓に上る食材は、そのほとんどが生物由来です。「美味しい」「健康成分が豊富」「新鮮」「安全性に配慮」「価格が安い」といった好ましい特性(遺伝形質)を高めた食材の開発で、ゲノム情報が活用されるようになってきました。

 この特性と関係が深いゲノムの部位を調べ、それをマーカーにして、生物の選抜育種に活用するのです。作成されている遺伝子地図が詳しいほど、遺伝子情報を基にした選抜が、より育種に役立ちます。全体図である全ゲノムが解読されていれば、ゲノムワイドのマーカー育種が行いやすくなります。

 ゲノムの解読や一塩基多型(SNP)の解析、タイピングなどを高効率で行うためには、数千万円くらいの機器が必要ですが、このコストは急速に下がっています。従来10年から15年くらいを要してきた育種が、ゲノム情報の活用で5年くらいに短縮できたというケースも増えています。

 農産物や畜産物、水産物の分野で進んでいる取り組みを、日経バイオテクの特集記事ではまとめてみました。

 昨日(2月24日)の神奈川県バイオ関連研究事業化助成報告会では、神奈川県試験研究機関バイオ関連研究発表会も併催され、「DNAマーカーを利用した耐病性ヒラメの開発」と題した発表を、神奈川県水産技術センター栽培技術部の長谷川理・主任研究員からうかがいました。現在では200万尾ほど販売されているとのこと。イトーヨーカドーなどに表示入りのヒラメが並んでいることが多いようです。理化学研究所と東京海洋大学と共同で1300ほどマーカーを作ったとのことです。

 技術革新を反映したゲノム育種は、単一形質から複合形質へと、今後実用化が急速に広がっていきそうです。特に、天然資源に頼っている比率が高くで資源の奪い合いが世界で激化していて、付加価値が大きな魚類では、養殖技術の進展に伴って、ゲノム育種が威力を発揮しそうです。追って詳しく報道して参ります。

 一昨日の2月23日は、神奈川科学技術アカデミーの「食の安全・安心プロジェクト」報告会を取材しました。これも技術革新を背景に台頭してきた、ニュートリゲノミクスという手法がさらに発展しそうで、楽しみです。

今春終了のKAST「食の安全・安心」プロジェクトは評価研究機構に発展へ、「かなりの確率で継続」と馬来理事長
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022479777

 先週土曜日(2月19日)は札幌市で開かれた日本食品科学工学会北海道支部大会を取材しました。北海道大学大学院農学研究院の川村周三准教授の研究室では、食糧庁などが定めている「正式な食味試験」に比べ、さらにパネルの人数を増やすというこだわりを持って、ご飯のおいしさなどを評価しています。

 北海道の「ゆめぴりか」など、こしひかり等に比べ美味しいお米が各地で増えているとのことでした。その大半はこしひかりを基に、育種したもののようです。「おいしさ」ももちろん、ゲノム育種の目標となっています。

 ゲノム育種では、ゲノム解読や有用形質と連鎖したマーカーの発見、マーカーのタイピング、有用形質のチェックなどの段階がありますが、最後の有用形質のチェックの効率を高めるのも、大きな課題といえそうです。

 北海道支部大会では、ご飯や小麦粉の特性把握の効率を高める新たな取り組みの発表が目立ちました。テクスチャーアナライザーという装置を用いて炊飯米の物性(硬さ、粘り)を客観的に評価する試験で、5粒法を新たに考案し、従来の1粒法に比べ簡便かつ高精度で測定できることが分かりました。

 また、マイクロドゥラボという最新型分析機器を用いて小麦粉の生地物性の測定を少量の小麦粉で得られるので、小麦試料が少ない育成初期世代でも評価ができるとのことです。いずれも、道総研中央農試のグループの研究です。

 先週金曜日には、第16回全国納豆鑑評会を取材しました。納豆は世界に誇れる日本の健康食と思います。日本食の注目度は世界で高まっていますが、納豆は、ニューヨークや上海でもちょっとしたブームになっているとのことです。

全国納豆鑑評会に新設のアメリカ大豆部門、初のRed River Valley賞に鹿児島県の納豆
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022479775

今年度の日本一は宮城県わたり納豆の国産小粒納豆、全納連が2月18日に納豆鑑評会を開催
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022379753

 納豆の主役は、大豆と納豆菌です。主原料である大豆のDNAマーカー育種については、神奈川県農業技術センター野菜作物研究部の発表を昨日うかがいました。

 納豆菌の育種で、一番印象に残っているのは、ミツカンが2000年に商品化した「におわなっとう」の成果です。まずは遺伝子破壊菌株を作成することで、納豆特有のにおいのもととなる酵素遺伝子を特定した上で、突然変異を誘導した2000株の中から、この酵素遺伝子を持たない株を選び出して、実用化しました。まさにDNAマーカー育種といえます。

 納豆菌は微生物なので、農作物や畜産物、水産物の生物に比べ、ゲノム情報を取得しやすく、好ましい形質を持つようになったもののスクリーニングも比較的容易です。今から11年前に「におわなっとう」は商品化されました。

 この納豆菌よりも前に、アミノ酸生産菌など、このような育種法で生産性を高めた成果はたくさんあります。

 その後のゲノム解析情報の爆発的な進展により、農作物や畜産物、水産物でも同じような手法で育種することが現実的になってきたのでは、と思います。

 メール原稿の締め切り時間になりました。前回のメール以降に報道された機能性食品関連の記事リストを以下に掲載し、ポイントを紹介させていただきます。

◆「BTJ/日経バイオテク」より◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       機能性食品分野のバイオテクノロジー関連記事(直近4週間分です)
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【2011-02-24】
今春終了のKAST「食の安全・安心」プロジェクトは評価研究機構に発展へ、「かなりの確率で継続」と馬来理事長
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022479777
■ポイント■神奈川県民の皆さんの協力で、ニュートリゲノミクスの更なる発展が期待できそうです■

【2011-02-24】
全国納豆鑑評会に新設のアメリカ大豆部門、初のRed River Valley賞に鹿児島県の納豆
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022479775
■納豆の原料大豆の8割が米国産で、そのうち6割はRed River Valley産とのことです■

【2011-02-23】
第51回東レ科学技術賞に環境ストレス応答の山本雅之・東北大教授、総額1億3000万円の研究助成10件は半分がバイオ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022379754
■環境ストレス応答の研究は世界で日本が存在感を示しているように思います■

【2011-02-23】
今年度の日本一は宮城県わたり納豆の国産小粒納豆、全納連が2月18日に納豆鑑評会を開催
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022379753
■「第1回世界納豆まぜまぜ選手権」や「第1回世界納豆のびのび選手権」も開催されました■

【2011-02-23】
未承認の遺伝子組み換えパパイヤが沖縄で流通、栽培されていた可能性高い
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022279723
■農水省と厚労省は2月22日に対応策を打ち出しました■

【2011-02-22】
日本学士院学術奨励賞6人が決定、バイオ関連は葛山智久・東大准教授と松浦健二・岡山大准教授
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022279722
■葛山さんも松浦さんも、日経バイオテク・オンラインで先に成果を報道させていただきました■

【2011-02-22】
第7回日本学術振興会賞の受賞者25人が決定、バイオ系は10人で3割が東大
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011022279721
■昨年も東大勢が目立ってました■

【2011-02-18】
続報、東京農大が日本在来の口之島牛の全ゲノムを解析、西洋種と異なるSNP630万個を検出
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021879651
■東京農業大学生物資源ゲノム解析センター(NGRC)では、コメもウシも、遺伝的多様性が残されている日本在来種の解析に注力しています■

【2011-02-17】
静岡県立大と京大、東大、JST、虫歯原因酵素グルカンスクラーゼの立体構造をX線結晶構造解析で解明
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021779590
■阻害剤やアクセプター基質との結合構造も決定し、この酵素の働きを分子レベルで解明しました■

【2011-02-16】
【アカデミアSelect】非天然型アミノ酸で遺伝子発現を制御、Trpオペロンの原理利用の新技術をUC Berkeleyが発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021679588
■非天然型アミノ酸が、TrpオペロンではOFFスイッチとして、逆にTnaオペロンではONスイッチとして作用します■

【2011-02-16】
神戸のスパコン活用する理研の新組織名は「生命システム研究センター(QBiC)」、2011年4月1日に発足予定
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021679549
■理研計算生命科学研究センター設立準備室の柳田敏雄室長がセンター長に就任する予定です■

【2011-02-10】
東京農大生物資源ゲノム解析センターと生物資源研、酒米用イネ品種「雄町」の全ゲノム解読、日本晴との配列違いを16万カ所以上発見
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021079424
■このゲノム解読情報は精度が高いと評判です■

【2011-02-10】
手術後の体調回復を早める味の素のシスチン・テアニン、2011年1月に導入した仙台オープン病院が日本静脈経腸栄養学会で発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011021079393
■医療費の観点からも、このような取り組みは重要と思います■

【2011-02-09】
第22回健康食品フォーラム「健康と食品機能の総合将来戦略」に360人、国家プロジェクト提言で4人が登壇
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020979353
■日本の強みを発揮する国家プロジェクトを提言しています■

【2011-02-09】
慶大医学部の吉村昭彦教授ら、PGE2とSOCS1が腸の免疫寛容に重要、Tregに依存しない第2の抑制システム
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020979352
■腸の免疫研究は、新たな発見が相次いでいます■

【2011-02-08】
京大iCeMSの楠見明弘教授ら、「スーパー定量法」で受容体GPCRの2分子結合・解離を定量計測、1蛍光分子追跡法で実現
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020879314
■1分子イメージングが威力を発揮しています■

【2011-02-05】
日本製紙が日豪で特許取得の光独立栄養培養技術、茶、サクラ、観賞用ユーカリ、マンゴーの苗生産に実用化
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020579239
■光独立栄養培養技術は、豊かな食卓にも貢献しています■

【2011-02-04】
歴史100年余りの茶品種育成で日本初が3つ、「サンルージュ」のNARO野菜茶業研シンポに200人
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020479179
■日本の茶品種登録に民間が連名になったのは今回の日本製紙が初めてです■

【2011-02-03】
オルニチン研究会が六本木で第2回マスコミセミナー、オルニチンが豊富なシジミの価格は1kg20円が1000円に
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020379148
■シジミの健康パワーの話題は、テレビでもよく見かけます■

【2011-02-02】
2月2日に林原グループの3社が会社更生手続き開始を申し立て、福田恵温氏が4社の社長に就任
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020279146
■昨年秋のトレハロースシンポジウムを取材しましたが■

【2011-02-02】
「Nature誌とScience誌に計5回挑戦したが」と、ウナギ卵の成果発表にNature Communications誌を選んだ東大の塚本勝巳教授
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020279144
■論文発表のジャーナルをどう選ぶのがいいのか、悩ましい問題といえそうです■

【2011-02-02】
「政府主導で決定遅延の事態に憂慮」、ライフ10万人、グリーン10万人の7学会・連合が2月2日に要望提言を提出へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020279096
■翌日2月3日に内定が示されました■

【2011-02-02】
東大と水産総合研究センターが天然のウナギ卵31粒を採集して「海山仮説」と「新月仮説」を検証、Nature姉妹誌に論文発表
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011020279095
■記者発表会は、たいへん盛り上がっていました■

【2011-01-28】
国際誌に550論文発表の吉川敏一・京都府立医大教授が若手研究者に3つの教訓、ビタミンE研究会で1月28日に特別講演
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011012878959
■吉川敏一教授の講演をうかがう機会は多いのですが、論文数が550とは、まったく知りませんでした■

【2011-01-28】
林原の新社長に大阪府立大出身で農学博士の福田恵温・林原生物化学研究所常務が就任へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011012878957
■2月2日に社長に就任なさいました■

【2011-01-28】
ヤクルトが長期ビジョン「Yakult Vision 2020」、2020年度に09年比で売上高2倍、営業利益3倍へ、「健腸長寿」の普及進める
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011012878942
■「健腸長寿」の知名度高まりそうです■

【2011-01-28】
続報、岩手医科大と岩手大、阪大、長瀬産業、カルノシン酸はNrf2を介して非アルコール性脂肪肝を予防
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011012878939
■フェーズ2解毒酵素群のマスターキーたんぱく質・核内転写因子であるNrf2に注目です■

【2011-01-28】
山口大学、GDNF遺伝子のエピジェネティック調節が慢性ストレスに対する適応・不適応に関与
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2011012778897
■ストレスに強いマウスと弱いマウスの脳内メカニズムの違いを分子レベルで解明しました■

 ここで改めて、メールのタイトルにもなっている「日経バイオテク」の説明をさせていただきます。日経バイオテクは、日本経済新聞社のグループ企業である日経BP社(BPは、Business Publicationsの頭文字です)が発行している定期刊行物(印刷物)です。創刊は1981年10月12日なので、昨年(2010年)秋には創刊30周年を迎えます。ニューズレターという、一般の雑誌よりも薄い冊子状の印刷物を2週間に1度、読者にお届けしています。毎号40ページ構成です。

 90年代半ばにインターネット時代を迎え、日経バイオテクでは1996年から、報道記事をオンラインで提供する事業を開始しました。「日経バイオテク・オンライン」という情報提供事業です。記事本文の第1パラグラフまでは、どなたでもご覧になれますが、第2パラグラフ以降の深みのある説明は、有料購読契約を結んでいる読者にのみ、ご覧いただけます。

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                    日経BP社バイオ部
                    BTJ編集長 河田孝雄