今週は、金曜日(5月28日)と土曜日(5月29日)は、米子市で開かれている日本エピジェネティクス研究会第4回年会を取材しています。

 年会のホームページによると、協賛・協力には46社もの名前があります。この分野がいかに発展しているか、を反映していると思います。

 先週金曜日から日曜日まで、徳島市で取材していた日本栄養・食糧学会第64回大会でも、エピジェネ関連の発表が目立ちました。トピックスにもよく選ばれていました。

 今週ふと気になった地下鉄駅の広告(広告業界では、交通広告というカテゴリーに入るようです)で、「薄毛の原因」について、次のような説明文がありました。

・遺伝ですか?
・ストレスですか?
・生活習慣ですか?
・それとも体質ですか?

 とかくこれまで「遺伝=体質」という感じでメール原稿などを書いてきたので、「遺伝」と「体質」をなぜ分けて書いているのかな、という感じでしたが、このうち、体質は、エピジェネティクス、エピゲノムの寄与が大きいのでは、とふと気付きました。

 ストレスでも生活習慣によって、体調だけでなく、体質も変わる、という意味合いです。

 さて、栄養・食糧学会では、エピジェネ・エピゲノム関連の記事をいくつかまとめました。

※BTJ/日経バイオテクのエピジェネ・エピゲノム関連記事

「ヒストンコード仮説は第2の遺伝暗号、一番重要なのはヒストンのメチル化」、加藤茂明・東大分生研教授が栄養・食糧学会で教育講演
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052473662

ハウス、女子栄養大学と共同開発した「葉酸米」を学会で初展示
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052373631

日本栄養・食糧学会第64回大会の一般講演トピックスは29題、そのうちエピジェネティクス関連が5題を占める
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010050673079

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 加藤茂明さんのご講演は1年くらい前からも何度か学会の講演や、大学の院生向け講義などで拝聴していまして、今回、教育講演の概要を少しまとめてみました。
以下は、その記事の一部です。

 「ヒストンコード仮説は、第2の遺伝暗号といえる。ロックフェラーの研究者が10年ほど前に提唱した仮説だが、われわれの分野では確実にノーベル賞級と皆が認めている」

 「ヒストンコードは、ヒストンたんぱく質の化学修飾で決まる。修飾の組み合わせは、染色体上で1次情報。染色体には分子レベルで色がついている。リン酸化やメチル化など。染色体の景色は、実はカラフル。染色体上に番地があり、番地目掛けて開いたり閉じたり。アセチル化はone of them。単なる追随する指標に過ぎない。一番重要なのはメチル化と分かった」

 「決定的な指標になるのは、H3のK4とK9のメチル化。K4のメチル化は開いて活性化する指標で、K9のメチル化は閉じて抑制化する指標。K4もK9も、このメチル化酵素はたくさんある。脱メチル化の酵素もたくさん見つかってきた」

 「酵素の役割に関する論文は、毎月のようにNatureやScienceのようなトップジャーナルに掲載されている。生物現象に関係していることが次々と分かっている」

 「エピゲノムは物質をさしているのではない。サムシング。古典的には、エピゲノムはDNAのメチル化だった。現在では、エピゲノムの中心はヒストンたんぱく質の修飾と分かってきた。ヒストンたんぱく質上に秘密がある。ヒストンの修飾の中でも、エピゲノムの中心はヒストンのメチル化だ」

 「アセチル化は常に一方向。脱アセチル化は、不活性化と決まっている。しかし、メチル化の場合、K4とK9とは反対の機能があるので、組み合わせが複雑。遺伝子カスケードの最上流にエピゲノムがある。iPSでも再生医療でも、ヒストンの修飾を変えるのが一番大切。薬の標的としても重要」

 加藤さんは、ビタミンAやDの受容体の研究を端緒に、エピゲノム制御の成果を挙げています。科学技術振興機構のプロジェクトであるCREST/SORST/ERATOで進めてきました。

 「当初は、核内ステロイドレセプター群による遺伝子発現制御の分子機構をレセプター機能から詳細に解析し、CREST後半からは、レセプターに結合する共役因子群の重要性に気付き、軸足を移した。さらにSORSTではこの共役因子群が複合体を形成することが必須であることに気付き、ERATOではこの複合体機能に絞った研究を行った」と報告書にお書きになっています。

 それで最近思っているのは、ビタミンの研究を深耕することが、ヒトの生命現象の解明で実は早道なのでは、ということです。

 ビタミンの定義からして、ヒトの生命現象に深く関わっていることは間違いない。表現形がよく研究されているといえます。

 ビタミン事業は医薬品などに比べ、収益を上げにくいので、製薬大手が国内外で撤退しましたが、これからビタミンの復権があるのでは。ワクチン事業が長らく、収益に結び付きにくかったのが現在では重要な収益源になっている、ということと同じようなことが起こるのでは、と予想しています。

 先月まとめた記事でよくお読みいただいている、東京大学大学院薬学系研究科准教授の有田誠さんも、最初は、ビタミンE受容体の結合たんぱく質の研究を行っていた、とうかがいました。

塩野義が東大薬に産学連携共同研究室、1億円MS設置で有田誠准教授らの
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010042672908

 ω3系などの脂質栄養は、栄養・食糧学会での2つのシンポジウム、1つの教育講演で、話題が提供されていて、記事とりまとめ中です。脳やメタボリックシンドームに対するω3の効用について昨日、島根大学医学部にてお話しをうかがってきました。

 記事にとりまとめている最中ですので、いましばらくお待ちください。

 ここで、ここ2週間ほどの機能性食品関連のBTJ/日経バイオテク・オンラインの記事と、■記事補足■を、紹介させていただきます。

◆「BTJ/日経バイオテク」より◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       機能性食品分野のバイオテクノロジー関連記事(直近2週間分です)
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「世界レベルの糖尿病拠点」目指す徳島クラスター、医療観光で上海にも徳島の魅力をPR
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052673710
■記事補足■メディカルツーリズム産業が盛んになりそうです■

県立広島大と果実連、ポッカの共同研究チーム、レモン摂取は血圧や中性脂肪、尿糖を下げる
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052573684
■レモンの供給は国産が1割くらいですが、そのうちの7割を広島が占めています■

「ヒストンコード仮説は第2の遺伝暗号、一番重要なのはヒストンのメチル化」、加藤茂明・東大分生研教授が栄養・食糧学会で教育講演
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052473662
■若手研究者のモチベーションを高める構成を工夫した教育講演でした■

ハウス、女子栄養大学と共同開発した「葉酸米」を学会で初展示
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052373631
■埼玉県坂戸市のパンに続き、ご飯でも葉酸補給体制が整いました■

食品機能学の阿部啓子・東大特任教授ら3人が皇居でご進講へ、荒井綜一・東農大客員教授が栄養・食糧学会の特別講演で紹介
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052373630
■機能性食品は、注目されているのですね■

日本栄養・食糧学会の第64回大会が徳島で開幕、第65回大会は来年5月にお茶大で開催、「医師の比率を増やしていきたい」と次大会会頭の近藤和雄教授
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052173620
■医学部系教授の武田英二さんが会頭を務めた今年の第64回大会は、シンポジウム(9テーマ、すべて公募)や特別講演3題、教育講演6題、関連学術集会8題など、とても充実していたように感じました■

タカラバイオ決算説明会、医食品バイオの研究開発費大幅削減で黒字化目指す、siRNA用いた新規遺伝子治療の治験を2013年度に開始
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052173602
■医食品バイオという呼称は、タカラバイオ独自のものです■

プリマハムが食品アレルゲンのELISAキットの販売を7月に開始、日ハムと森永に続く
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052073599
■まさに日本が世界をリードしている分野です■

コーヒーの糖尿病予防効果の成果をAGFとポッカが栄養・食糧学会で連続発表、いずれも名大院生命農学と共同
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052073598
■コーヒーの健康効用の研究は魅力的です■

三井情報、田口良教授と開発した脂質同定システム「Lipid Search」を商品化
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010052073596
■この分野もかなり日本が進んでいる部分があるようです■

NK活性を増強するR-1乳酸菌のヨーグルト、明治乳業が山形県舟形町と佐賀県有田町の小中学校で1年間調査研究へ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010051973576
■試験に用いるヨーグルトの費用だけで1億円相当です■

シジミ競争が発展、味の素がアラニンのサプリメント「ノ・ミカタ」のパッケージを更新、キャラクター「ヘタレさん」を全面に
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010051473362
■島根大学医学部のある出雲市の売店には、シジミ加工品がたくさんありました■

キッコーマンと日本デルモンテ、ケルセチン配糖体高含有タマネギの健康効果検証を進める、ケルセチンがPPARαを活性化
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010051373353
■品種改良・育種とつながった食品機能性研究は、魅了的な研究対象と思います■

 上記のように、食品分野の重要な学会活動も、報道してまいります。 日経バイオテク・オンラインの記事にご期待ください。

 ここで改めて、メールのタイトルにもなっている「日経バイオテク」の説明をさせていただきます。日経バイオテクは、日本経済新聞社のグループ企業である日経BP社(BPは、Business Publicationsの頭文字です)が発行している定期刊行物(印刷物)です。創刊は1981年10月12日なので、今年秋には創刊30周年を迎えます。ニューズレターという、一般の雑誌よりも薄い冊子状のものを、2週間に1度、読者にお届けしています。

 90年代半ばにインターネット時代を向かえ、日経バイオテクでは1996年から、報道記事をオンラインで提供する事業を開始しました。「日経バイオテク・オンライン」という情報提供事業です。記事本文の第1パラグラフまでは、どなたでもご覧になれますが、第2パラグラフ以降の深みのある説明は、有料購読契約を結んでいる読者にのみ、ご覧いただけます。

日経バイオテク・オンラインはこちらから
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 もう1つ、バイオ部編集からお知らせを。バイオ部編集では、「BTJジャーナル」という月刊のPDFマガジンも発行しています。こちらは、PDFファイルをダウンロードすると、記事全部をご覧いただけます。

 写真や図版を多数掲載しています。機能性食品と関連する記事も掲載することがありますので、覗いてみていただければと思います。

BTJジャーナルのダウンロードはこちらから。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html

 最後に、BTJ/日経バイオテクでは、6月に2つのセミナーを開催します。皆様のお越しをお待ちしています。

「次世代シーケンサー」セミナー、6月11日開催決定!
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010042772948

「分子標的薬」セミナー、6月16日開催決定!
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2010042772949

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