昨晩の男子バレーボールは世界に日本男子が追い付いていないことを暴露しました。伸びやかな、そしてインターナショナルななでしこ達とは豪い違いです。日本のバレーホールリーグが世界中から一流選手を集めているのに、何故、サッカーのように、国際性を日本人が持てないのか?女子はイタリアリーグやセルビアなどのリーグに人材を輩出しているのに、この違いは何なのか?一つだけ思い当たるのが、男子のスポーツには中途半端な市場規模があることと、引退後にも企業によりかかった就職の保障があるためではないでしょうか?もはや、バブルが終わり、国際競争で収益性も低下しつつある、日本の企業が広報宣伝費で企業スポーツを丸抱えするには、限界が見えております。Jリーグのように、企業スポーツからクラブ・地域スポーツへの転換を急ぐべきでしょう。安易な企業スポンサーより、ビジネスとしてのスポーツを振興を図る時代になってこそ、国際性も地域制も育ちます。日本男子にもビジネスとグローバル化の試練を与えなくては、このまま暫くなでしこの風下に立たざるを得ない状況が続くと思います。日本の企業や大学の状況もスポーツと似たり寄ったり。ここは喝を入れなくてはなりません。

 さてバイオです。

 脳研究が、次世代のコンピューティングにインスピレーションを与えると確信しました。先週の土曜日に今年4月に創設されたばかりのNICT・阪大脳情報通信融合研究センター(CiNET)長であり、理化学研究所生命システムセンター長もある柳田俊雄教授の話を聞いたためです。

 柳田氏は今月世界最高性能を表彰されたスパコン「京」のバイオ分野への応用研究の責任者でもありますが、京の限界も認識していました。それは情報処理やネットワーク維持のエネルギー問題です。実際、京はフル稼働すると2万kwの電力が必要で、これはすでに京のあるポートアイランドの対岸の淡路島の全世帯の消費電力量と同じです。現在、世界のデータ量は7000億GB存在します。最近のコンピュータの高速化とインターネットによるネットワーク化によって、年1..5倍から2倍のスピードで、データ量も情報ネットワーク制御消費電力も増大し続けています。これが大問題、先ほどの京の消費エネルギーを考えても明白ですが、ある予想によると2035年には情報のネットワークの制御ためだけのために全世界の総発電量の半分を投入せざるを得ない。まさに情報増大とネットワークの複雑化による新たなエネルギー危機が迫っているのです。

 情報はただ、インターネットなど情報ネットワークもほとんどただと考える読者も多いでしょうが、増大するエントロピーと戦い、情報をアクセス可能にするには、膨大なエネルギーとコストが必要なのです。今もみなさんがこのメールを受信するために、世界上のルーターがエネルギーを消費しています。そしてみなさんのパソコンも排気口から熱い吐息を吐きだしているではないですか。

 エネルギー危機というと、自動車など移動ばかりが議論されていますが、グローバルな市場や世界がこの地球に実現するにつれて、秩序を維持するための情報処理やネットワーク維持のためのエネルギー問題こそが今後の深刻な問題であると思います。リーマンショックやジャスミン革命、ミャンマーの民主化選挙などを見ると、めまぐるしく襲ってくる変化の中で、この世界の繁栄を維持し、人類の幸せを増大させるために、情報やネットワークの重要性は増すばかりです。しかし、皮肉なことに、そうした善意の努力を重ねた結果、さらに複雑化するシステムの破たんのリスクは増加してしまいます。エントロピー(複雑性)の罠に、私たちは嵌りつつあるのです。

 柳田教授の偉いところは、脳がどれだけエネルギーを消費して、機能していのか、最新の画像診断技術を使って調べたことです。脳内の温度変化と血流量から算出した消費エネルギーは何と2wに過ぎませんでした。140億個の神経細胞が数10兆のシナプス結合を維持して、喜びも楽しみも妄想も社会生活も、そして子孫繁栄も行っている高度の情報処理機構である脳は何故、こんなにも省エネなのか?この謎を解明することこそ、われわれ人類がずっぽり嵌りつつあるエントロピーの罠から脱出する道を照らすのです。

 現在の情報処理ネットワークは、若干25歳の天才、チューリングが提唱したチューリングマシーンの原理によって成立しています。どんな巨大で複雑なネットワークでもこの原理原則は不変です。しかも、デジタル技術によって基本的にノイズを排除し、どこまでも精密制御や精密計算を行うマシーンを作り上げました。そのため、使用される半導体やネットワーク関連機器の要求精度はどんどん高くなり、原子レベルの制御まで要求されています。しかし、エントロピーの罠は部品やネットワーク制御の精密度が上がれば上がるほど、ずっぽりと人類を罠に引き込んでしまうのです。

 こうしたチューリングマシンを鼻で笑う省エネで高性能の脳が使っている部品は、しかし個々の性能は秋葉原で100円で叩き売りされているコンピュータ素子にも軽蔑されてしまうほど、劣っているものです。ヒトの記憶容量は製剤10GB、200円のDVDディスク2枚分しかないと柳田教授は指摘します。また、コンピュータ素子の演算速度は1回の計算にナノ秒しか必要としないのに、神経はミリ秒単位、つまり1000倍も時間がかかります。おまけにエラー率は最新のコンピュータが10の80乗に1回なのに、ヒトの神経は1万回に1回は間違えてしまいます。

 つまり、どうしようもない部品で、何故、こんなに素晴らしく、地球環境に対しても持続可能な情報処理システムである脳ができているのか?これを解かなくては人類は、2035年の情報エネルギー危機を乗り越えられない。柳田教授が提出したキーワードはいい加減さ、科学的に言うとゆらぎでした。私たちの生物は熱によるゆらぎを利用して機能を発揮しています。いい加減な部品で、しかし、階層性(自由度の制約を段階的に行う)を持ったシステムを構築することで、生存を省エネで可能にしていたのです。情報量を落とした図を見せて、描かれている絵をひらめきで当てる隠し絵の実験を行い、視覚的ひらめきの定量解析を行いました。多数のボランティアに何種類もの情報密度を変えた隠し絵を見せ、何秒で正答するか、柳田教授らは計測しました。その結果、なんとヒトの情報処理は完全な正規分布を示し、隠し絵の探索速度の理論式は、化学反応速度の式と一致しました。認知温度という概念を導入すると、思考(ひらめき)も認知温度でゆらいでいたのです。高度精密制御を追求したチューリングマシーンとは異なう問題処理に関する、計算原理を脳は秘めていました。例えば、インターネットのルーターを制御して、情報流通を最適化するためには、現在はルータの数の2乗の膨大な計算が必要ですが、ゆらぎ制御を導入するとK*N(Kは一つのルーターが持つルートパターン数)で済みます。現在、日本にはインターネットをつなぐため1万個のルータがあり、仮にK=3と仮定すると、計算量は3000分の1に低下します。しかも、今や家のTVすらインターネットに接続するほどネットワーク化が進んでおります。ルーター数が増えればチューリングマシーンによる精密制御とゆらぎ制御による計算量はどんどん格差が拡大する訳です。これがエントロピーの罠、情報制御によるエネルギー危機の原因とその解決策を示すものです。

 ここ掘れわんわんではありませんが、脳に私たちが直面する問題を解決する原理が埋まっているのです。決していい加減なだけではなく、EeKagenという関西弁を、日本がこの分野を推進しきれば、Tsunamiに続いて、国際的に定着させえる独創的な研究を生むと、直観しました。

 勿論、柳田教授はたんぱく質でお豆腐の様な計算機を創ろうとはしておりません。脳の計算原理、判断原理を工学的に利用して、腕をぐるぐる回すロボットやゆらぎ制御による情報ネットワークのルーティング制御を、我が国コンピュータメーカと電話会社と共同開発中です。使っているのは、生物素子とはかけ離れた、秋葉原で売られイオなのですね。

 米Washington D.C.にFish Catchというお気に入りのレストランがあります、そこのトイレの近くの壁に埋め込まれたプレートにはIBM創業の地と記されています。国勢調査の会社だったIBMが、煩雑な集計業務を合理化するために計算機を開発、砲弾の軌道を計算する軍事研究の成果として生まれたコンピュータ、つまりチューリングマシーンの商業化が始まりました。私が思うに、単調な繰り返しが多く、しかも瑣末な正確性が要求される計算業務を代替したいという、人間としては当たり前の欲望を解決するために、今のコンピュータが誕生したのです。1万回に1回間違いを起こす脳では、我が国の国勢調査で1万3000人の行方不明者を生んでしまいます。本来はこうした業務(人間には向かない)に適した情報処理マシーンがチューリングマシンなのです。彼らをいくら巨大化高性能化してもひらめきは出ない。どう生きるべきかの判断も出ない。柳田氏らが構想しているゆらぎ制御によるEeKagenなマシーンは、人間が判断すべき事象を助ける真の友達となる可能性があります。一神教の階級社会から誕生したクライエントサーバー(召使)・システムが、友達関係に変貌する可能性すらあると思っております。

 ただし、ゆらぎ制御の情報処理マシーンはある程度のいい加減さは許容しなくてはなりません。そんな情報処理マシーンとの関係も、リアルな友達そっくりですね。ゆらぎ制御マシーンの友達の処理結果をあくまでも判断するのはあなたである、決してこのマシーンが人間の尊厳を冒し、現在、ハリウッドが大量に生産している映画のように、ゆらぎ制御マシーンが人間を支配することのないように、ええ加減に開発していただきたいと思います。支配ではなく、共存。最終的には、ペットに近いものになるのかも知れません。ハリウッドの妄想はチューリングマシンの厳密制御に対する一神教の人々の畏れと憧れ、つまり全知全能の神を希求する精神の裏返しだと思います。多神教の我々はドラえもんや鉄腕アトムをゆらぎ制御で創らなければなりません。誰もドラえもんに支配されたいとは、心の底から思ってはいないでしょう。

 理想的にはチューリングマシンとゆらぎ制御マシーンの共存、それぞれ適した情報処理を担う世界です。

 さて、そうは言ってもチューリングマシンもバイオで大健闘しております。CPUやメモリーの性能向上とコスト暴落によって、ヒトゲノム程度の情報量なら問題なく、処理できる環境が整ってまいりました。一方、次世代シーケンサーも高度化と同時に診断機器として普及するための大衆化が既に始まっています。今や新薬開発や個の医療サービスに貢献が始まった、次世代シーケンサの新展開と、本当に大衆化した時に情報処理に問題は秘められていないのか?皆さんと議論したいと考えています。

 11月30日午後、品川でセミナーを開催いたします。かなり席が少なくなってまいりました。今回は医療を次世代シーケンサーの大衆化がどう変えるのか?を議論します。

 これはまさに、皆さんにとって今そこにあるビジネスチャンスだと思います。
 どうぞ下記から詳細にアクセスの上、お早目にご登録願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/111130/index.html

 今週も、お元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/