北朝鮮vs日本のサッカーの試合はなんとも後味の悪いものでした。民主国家ではないとスポーツは心から楽しめない、ということです。それにしても国家のダークサイドを見てしまった感じです。65年前は、サッカーを蹴球と変えさせたように、我が国も似たような状況であったことを思うと、彼我の時差をどうしたら埋められるのか。やはり中国も含めて、民主国家が恐れるソーシャルメディアの力に期待するしかないのかも知れません。

 さて個の医療です。

 ヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)の臨床開発で世界をリードしていた米Geron社が、同社のフラッグシップ製品であったヒトES細胞由来のオリゴデンドロサイト前駆細胞製剤「GRNOPC1」の臨床開発をフェーズ1で中断しました。患者の登録を既に打ち切っています。この細胞によって脊椎損傷の治療を狙っていたのですが、欧米の不況による資金調達難が打撃となりました。同社は幹細胞事業全体の売却を試みています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111116/157944/

 ヒトES細胞やヒト人工万能幹細胞(iPS細胞)の実用化に、今回の開発中断は冷や水を浴びせた格好ですが、これが重篤な副作用ではなく、資金ショートである点が救いです。リーマンショック以後復活しつつある米国の旺盛なベンチャー投資でも、ヒトES細胞という革新的な医療技術は商業化まで支えきれなかったのです。背景にはこうした先端的な研究を影に日向に支援してきた、米国の軍や国立衛生試験場の予算の緊縮があると考えています。何しろ今年、国債発行の限度いっぱいに到達した米国政府は政府の財政削減を担保に国債枠を拡大したばかりだからです。当然、軍の予算も、医療費も大引き締めが始まります。そして研究費も容赦ないでしょう。

 まさか、幹細胞の研究まで軍が支援しないだろう、と思った読者も多いのではないでしょうか?その答えはNOです。ヒトiPS細胞由来の心筋細胞で世界の医薬スクリーニング市場を席巻している米Cellular Dynamics International社の前身である米Stem Cell Products社は、米国防高等研究計画局(DARPA)から数千万ドルの資金提供を受け、O型の血液をiPS細胞から誘導する研究を行ったと、関係者が証言しています。確かに、戦場で血液型に無関係に輸血できるO型の血液の工業生産が出来たら、後顧の憂いも少なくはなります。インターネットの黎明期に投資したDARPAが、iPS細胞にも投資をしていたのです。考えて見れば、総力戦となった近代の戦争では、武器ばかりでなく、あらゆる生活の技術革新が軍事技術に転用されていくのです。勿論、その逆流もインターネットやカーナビ、お掃除ロボットを見れば、激しく起こっていることは明白です。今や軍事も民生技術もごった混ぜになって技術革新が起こっているのです。

 米国は未だに政府資金による基礎研究と軍事研究(応用研究)によって成熟させた技術シーズを民間に移転して、産業育成を図っています。9.11の炭疽菌テロ以来、米国政府がホームランドディフェンスを標榜、大量の資金をワクチンや抗菌剤、診断薬に投入した結果、現在、米国で300件近いワクチンの臨床開発が進む結果となりました。バイオテクノロジーもこうした米国の政府支援→産業化というリニアモデルの恩恵を被ってきたのです。その後ろ盾が今回の世界的不況で細った、これが米Geron社の挫折の大きな背景だと思います。

 言葉を換えれば、不況下では自由競争を通じた企業の技術革新は小規模で短期的なものに矮小化せざるを得ないということです。そのためにも、粘り強い技術革新を支援する政府の存在は必然的に大きくなるのですが、残念ながら米国も欧州も、そして日本も国は大きな債務を抱えてしまいました。このままでは縮小再生産の悪のサイクルに踏み込んでしまいます。技術突破しながらイノベーションに繋がらない可能性が膨らんでいるのです。どうやってこのジレンマを突破するのか?国の財政の健全化は民を豊かにしてからという原則がここでも生きると、私は思っております。今は逆行しておりますが、減税と政府機能の権限委譲、規制緩和こそ、成長の原資であることを忘れてはなりません。

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 品川でお会いいたしましょう。

 皆さん、どうぞお風邪を召されぬよう、ご自愛願います。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満