今月もBiotechnology Japan Webmasterの宮田が執筆させていただきます。著者の選定に今尚難渋しております。皆さんのお知恵を是非ともお寄せ願います。現在、一人ご推薦をいただいております。

 これから始まる北朝鮮戦を気にしながらこのメールを書いております。北朝鮮初のスポーツのハイビジョン生中継は、競技場に限定されるでしょうが、カーキ色の軍服や、世界でも稀な人工芝のサッカーグラウンドなど、一種異様な雰囲気です。さて、ピョンヤンで初勝利を挙げられるでしょうか?

 さてプロテオームです。

 今回はペプチド医薬の実用化の第二のブームが近づきつつあることを書きたいと思います。今年5月31日、米食品医薬品局に米Affymax社が開発、武田薬品が販売権を持つ次世代のペプチド医薬peginesatide(元Hematide)の製造販売申請を行いました。貧血の経口治療薬です。実際には1種類の合成ペプチドを2個、ポリエチレングリコール(PEG)に結合した兎の顔のような分子形をしています。注射すると肝臓で、エリスロポエチンの受容体に結合して、赤血球の造血を促進します。合成ペプチドの利点は、コストが安く、しかもエリスロポエチンよりもその受容体に結合する親和性の高い分子を開発できることです。反面、ペプチドを血液中に注射すると、血中に含まれるたんぱく質分解酵素によって、それこそあっという間に分解される欠点もあります。今回、わざわざ高分子のPEGを結合したのは、何よりも血中半減期を延長したいがためでした。

 第一世代のペプチド医薬と比べてpeginesatideが決定的に異なるのは、第一世代ではリュープリンにせよ、天然のホルモンや成長因子のアミノ酸配列に基づいて誘導体が開発されていましがが、第二世代ではこれらとまったく関係なく、標的との親和性のみでスクリーニングされていることです。そのため、peginesatideのアミノ酸配列はエリスロポエチンとは似ても似つかない配列となっています。第二世代は標的のリガンドのアミノ酸配列に制約されないので、誘導体開発の幅が拡大し、より親和性と特異性を改善できる可能性があります。勿論、リガンドと受容体は長い進化の過程で共進化していますから、かなり親和性も特異性も高くなっているいます。但し、今の進化論では適者は必ずしも最善ではないことも明らかになっており、配列に無関係に設計した第二世代のペプチド医薬は魅力的な試みであると考えています。

 また、標的のリガンドに制約されないため、先行するリガンドの誘導体の特許網とは、無関係に新たな物質特許を確保できる可能性があるのも、企業としては惹かれる点です。

 但し、標的の立体構造に基づいた分子設計、新たなアミノ酸の誘導体の導入、受容体と結合する2量体構造とヒンジの設計、さらには血中での安定化など課題は残っています。たんぱく質医薬と真正面から戦うためには、経口剤の開発に挑戦することも怠ってはならないと考えています。

 プロテオーム解析による、機能性ペプチドの発見。これを創薬に結び付けるペプチド医薬開発プラットフォームの開発は、バイオ医薬で出遅れた我が国の製薬企業にとっても極めて重要な課題であると考えています。

 さて、先週の日本人類遺伝学会でも世界第大ののゲノム解析企業、中国BGI社がデビューしました。創薬や個の医療に関しても次世代シーケンサーの貢献は無視できなくなりました。臨床試験のDNAサンプルも近い将来、全ゲノム解析する時代がやってきます。これから次世代シーケンサーも、高度化と同時に診断機器として普及するための大衆化が既に始まっています。今や新薬開発や個の医療サービスに貢献が始まった、次世代シーケンサの新展開を、皆さんと議論したいと思いいます。

 11月30日午後、品川でセミナーを開催いたします。かなり席が少なくなってまいりました。今回は医療を次世代シーケンサーの大衆化がどう変えるのか?を議論します。

 これはまさに、皆さんにとって今そこにあるビジネスチャンスです。
 どうぞ下記から詳細にアクセスの上、お早目にご登録願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/111130/index.html

 皆さん、今月もどうぞお元気で。

        日経バイオテクオンライン Webmaster 宮田 満