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       この半年を振り返って
          バイオインダストリー協会 大島一史部長
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 小職が本欄を担当させて戴いてから半年が経ちました。この間、バイオマス系プラスチック(BP)を取り巻く環境と動向も変わりつつあるようです。そこで今回は各月で話題としたトピックスのこの半年の経緯を眺めてみる事にします。

 5月号ではBPの持つ特徴である “カーボン・オフセット性” が“温室効果ガス排出量算定方法検討会”(主催:環境省地球環境局総務課低炭素社会推進室、座長:大聖早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科教授)の承認を経てNIR(National Inventory Report)に取りあげられ、4月に外務省経由で国連事務局に提出されたことを紹介致しました。

 その後、8月にこの取扱いが国連に承認されたと伝えられています(正式には年内に確定)。BP製品が焼却処分された場合、バイオマス由来フィードストック分がオフセットされることになり、容器包装リサイクル法にどのような形で反映されるのか、関心が持たれます。

 6月号と7月号では既存のプラスチックのBP化動向を紹介し、事例としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、ABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン系ポリマー)、PVC(ポリ塩化ビニル)の上市状況や構想を紹介致しました。

 ここで見た動向は加速される方向で、エチレン・プロピレンゴム(EPDM:バイオエチレンベース)のような特殊な資材についてもそのBP化構想が公表されています。

 さらに、筆者の所属するバイオインダストリー協会が開催に深く係わっている“BioJapan2011”(10月5日から7日;於・横浜パシフィコ)でも既存樹脂のBPが中心課題の1つでした。BioJapan2011では、10月7日(金)に“グリーン・イノベーション・サミット” が開催されましたが、このフォーラムの全体の進行・課題提示・取りまとめを行った湯川理事((独)地球環境産業技術研究機構)は冒頭に、「バイオ燃料は実用化のフェイズに入っているが、今後の世界の関心事はむしろバイオ化学品へ向かっていること(“バイオリファイナリー構想”)、その規模は2020年にはおおよそ2300億ドル(≒20兆円)で、この中でバイオ化学品は670億ドル(≒6兆円)に達する見込みである」と紹介されています。

 演者の1人であるColin Mitchinson氏(米Genencor社バイオマス応用研究部長)が、米DuPont社におけるバイオ化学品の工業的生産を可能とするバイオ触媒の研究開発の進展状況を紹介し、既にエタノール、ブタノール、コハク酸、1,3-プロパンジオール、イソプレンなどがバイオプロセス化されていること、またバイオ燃料やバイオポリマー(ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートやポリイソプレンなど)の工業生産が実現されているもしくは計画されていることを説明しました。この中で特にポリイソプレンをバイオ合成ゴムとして使用したるタイヤ(“バイオタイヤ”)の実現を2016年に想定していると説明していましたが、その工業界へのインパクトは計り知れないものとなりましょう。Dupont社の確かなバイオ戦略を目の当たりにした想いが致しました。

 8月号ではBPの定義と認証制度について、若干の考察を加えて世界の動向を紹介致ました。また9月号ではBPを始めとするバイオマス由来マテリアルのバイオマス度の定義および測定法の現状を紹介致しました。

 米国および欧州ではBPのバイオマス度を表示する仕組みの認証制度となっていますが、(社)日本有機資源協会ではここに来てそのバイオマス・マーク認証制度の中でバイオマス成分の表示法を検討し始めました。我が国でもバイオ系資材の根拠が製品に表示されるようになるのも近いと思われます。

 10月号ではBPの市場規模について考察致しました。最近、民間調査会社が世界の樹脂コンパウンド市場の調査結果を公表し、その中で生分解性樹脂およびBPの市場規模にも触れています。それによれば、世界のBP市場は2010年の7万t基準で見て、2015年には33万tへ飛躍(5倍増)すると予想しています(10月21日:ただしこの数値は酢酸セルロースを含まず、またPLAを生分解性樹脂として分類し、BPとしては含めていません)。欧州の調査機関による世界規模で見たBP(PLAおよび酢酸セルロースを含む)生産施設の規模はおおよそ100万t/年と見込まれていますから、両者の調査数字を見比べると残念ながら稼働率は極めて低いと言わざるを得ません。

 日本バイオマス製品推進協議会では、2011年における我が国BP市場の規模の見直し調査に取り組んでおり、近々公表されると思われ、市場動向が明らかになっていくでしょう。少しでも明るい方向性が見えることを期待しています。