現在、12月上旬に発行するバイオ年鑑2012の執筆でスタッフ全員へろへろになっております。しかし、年に一度は頭の棚卸しをしなくては、新しいことを仕入れたり、つまらないニュースだと思っていた事件の予想外の深みを覗き込むことができたり、なかなか勉強になります。自分の限界を知る上でも、毎年この時期の苦行難行は必要であると思っております。どうぞ皆さん、今年も日経バイオ年鑑2012を宜しく願います。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/195600.html

 さて個の医療の前に、世界ランク1位のジョコビッチに勝利し、フェデラーに惜しくもスイス室内(テニス)選手権の決勝で破れた錦織選手の検討を称えなくてはなりません。故障がちだった同選手も手術が奏功して体調が回復、大健闘となりました。試合後のコメントも「あんまり調子が良くなかったのに、ここまで簡単に来た」と超越した感じも錦織選手らしい。彼を支援するためテニスファンドが創設され、早期に海外で修練を積む機会を作った支援者達にも拍手です。まだ小さな子供だった錦織選手の才能を見抜いた眼力はさすがです。バイオも含めて、我が国がイノベーションを引き起こすためには、錦織級の才能を早期に見出し、国内外で世界の才能と戦わせる環境を作り出さなくてはなりません。政府に建物や機関にではなく、人に投資する仕組みを作るべきです。JSTが若手研究者に投資してきたさきがけなどの仕組みを、是非とももっと発展させていただきたいところです。できうるなら、科学者を純粋培養するだけでなく、科学者兼アントレプレナーを育成するプログラムを構築し、若い才能を沈滞から引き起こすきっかけとしたいと思っております。

 今週は幕張メッセに通う読者も多いのではないでしょうか?10日から12日、個の医療の関係者が集う、人類遺伝学会が開催されるためです。人類遺伝学会とは個の医療とは無縁のような学術的な響きがありますが、ヒトの進化だけでなく、多様性を極める学会ですから当然のことながら、個の医療の基礎を築くことになります。遺伝と多様性はまさに、疾患や健康のサイドから眺めれば、個の医療に他なりません。

 実は、今回の人類遺伝学会で、世界最大のゲノム解読企業、BGI社がブース(展示会場入ってすぐ)を出展、我が国での営業開始を宣言します。いよいよ我が国にもギガゲノム解析の本格的な商業化が始まるのです。タカラバイオや今や受託解析企業のようになった理化学研究所横浜研究所も、競争にさらされます。昨年から我が国に米Complete Genomics社も上陸を図っており、まさに個の医療の基盤となるヒトゲノム解析サービスの商業化の幕が上がろうとしているのです。

 加えて、昨年から1ギガ・シーケンスを誰でも可能にした次世代シーケンサーも相次いで発売されてきました。今は、次世代ゲノムシーケンサーの大衆化も始まろうとしています。間違いなく、今後5年以内には1000ドルゲノム(ゲノム解析代別)の時代に突入すると思います。個の医療も一塩基多型からエクソームシーケンス(現在)、そしてフルゲノムシーケンスに基づいた精密医療へと変貌するでしょう。今年、キャピラリーシーケンサーが医療機器として我が国と中国でも認可されました。大衆型の次世代シーケンサーは医療機器、診断機器としての開発が進められており、ゲノム医療が現実する時も迫っていると確信しております。

 さて最後に宣伝を。こうした次世代ゲノムシーケンスの大衆化が、いったいバイオテクノロジーや医療をどう変えるのか?皆さんと議論するために、11月30日午後から品川でセミナーを開催いたします。残念ながら次世代シーケンサーのハードの開発では我が国の企業は大きく出遅れました。しかし、大衆化のステージに入った今、再び我が国の企業や研究者の知恵が求められています。再び訪れたチャンスを皆さんと掴むためにも、どうぞご参加願います。下記のサイトから詳細にアクセスの上、お早めにお申し込み願います。

 今やあらゆる産業を革新しようとする次世代シーケンサーにご注目願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/111130/index.html

 品川でお会いいたしましょう。
 
私のまわりでもせき込む人が増えてまいりました。どうぞお風邪を召されぬよう、ご自愛願います。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満