皆さん、お元気ですか?
 
 Jリーグも残り試合が少なくなり、J2への降格をかけて下位チームがしのぎを削っています。しかし不思議なのは監督が先週突如辞意すら表明した浦和レッズが、カップ戦である山崎ナビスコカップでは鹿島と決勝戦を戦うことです。豊富な選手層を誇る浦和がリーグ戦で入れ替え戦の淵まで追い詰められた原因は、確かに、監督の戦術と指揮にあるのかも知れません。

 さて、RNAiでも戦略が当然大切です。なかでも研究開発や臨床開発に加えて、知財戦略が最も重要であります。

 先月、デンマークを取材した折にも取材したデンマークのSantaris社が、とうとう米Isis Pharmaceuticals社に訴訟を起こされました。提訴のタイミングを考えると、どうやら私が訪問していた直前でした。勿論、同社は露とも漏らさず。決定的なコメントはe-mailで取材することになってしまいました。

 今回の特許訴訟は1550件もアンチセンスとオリゴDNA誘導体をカバーする特許を誇るISIS社 VS 大阪大学薬学部とデンマークCopenhagen大学が同時に開発したLNA(Locked Nucleik Acid)の特許を保有すると主張するSantaris社との戦いです。

 さて、何故、この訴訟がオリゴ核酸医薬に決定的に重要なのか?実は大手製薬企業が次々と研究開発から脱落したsiRNA(DDSが商業化の障壁の最大原因)に代わって、オリゴ核酸医薬の商業化を牽引するのがアンチセンスDNA/LNAであると考えているからです。今晩、DDSの技術革新が起これば別ですが、2重鎖のRNA分子を細胞内に取り込ませることは、まだまだ粘り強い技術突破を重ねなくてはなりません。とすると、誘導体作製によって血中半減期も向上し、細胞内への取り込みもある程度期待できる1本鎖のDNAもしくはDNAの誘導体であるLNA医薬が脚光を暫くは浴びると予想しています。加えて、miRNAなどたんぱく質以外のncRNAを標的にする場合も、アンチセンスDNA/LNAが不可欠で、今後、生物現象の少なくとも半分を支配しているncRNA創薬への展開も大いに期待できます。

 2011年9月23日にIsis社がSantaris社を訴えた理由は、米国特許6,326,199「Gapped 2'修飾オリゴヌクレオチド」と米国特許6,066,500「βカテニンン遺伝子発現のアンチセンスによる調整」の二つの特許です。彼等のパテント群でLNAをカバーできるかは、Santaris社のみならず、ISIS社の生き残りにも重要です。一番望む決着は、両社がクロスライセンスを行い、創薬標的が山のようにあるオリゴ核酸医薬の商業化で手を組むことです。特許侵害の訴訟が進行すればするほど両社の特許の手の内も明らかになるので、漁夫の利を狙う日本の企業にとっても、この訴訟の推移は見逃せません。
http://ir.isispharm.com/phoenix.zhtml?c=222170&p=irol-newsArticle&ID=1609518&highlight=

 膨大な特許網をアンチセンスDNAで構築したISIS社は、一方で他社の医薬品開発を阻害しているという社会的指弾を受けています。同社は稀な遺伝子疾患に関しては特許侵害を提訴しないという例外規定を設けており、この社会的批判をかわしておりますが、今回、Santaris社が開発中のC型肝炎治療薬などは、市場が大きく、例外の対象外としています。

バイオでは特許紛争が起こるということは、その分野の商業化が進んだという兆しでもあります。いよいよアンチセンスDNA/LNAの開発競争は熱を帯びてまいりました。

 今月もどうぞお元気で。

      Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満