先週のBioJapan2011に、沢山の読者がご来場いただきました。ありがとうございました。皆さんの人生や企画を一歩進めることができたでしょうか?BioJapanは我が国のバイオテクノロジーのオープンイノベーションの場として、着実に成長しつつあります。2012年も10月10日から12日、パシフィコ横浜で開催いたしますので、どうぞスケジュールを確保願います。また、横浜でお会いいたしましょう。

 「引いて守る」とタジキスタンのエースが公言していたほど、タジキスタンには残された戦術は限られていました。さむらいジャパン(まだ馴染まず、少し恥ずかしい)のシュートは38本、その内8本がゴールネットを揺らしました。セリエAなどでは3点離されると選手のやる気は失せるものですが、タジキスタンが偉かったのは最後までファールも少なく、綺麗な戦いを続けたことです。堂々とした敗者だったと思います。今季不振の香川選手が叩きこんだ最初の得点のシュートは高度な技術を示しました。中村憲剛選手の左斜め60度からのパスをゴール左手に掛け込みながら、右足のアウトサイドで蹴り込みました。これを真似すると、きっと足がもつれて倒れること必定です。金曜日のブンデスリーガでの復活を感じさせる一発でした。

 さて個の医療です。個の医療にも次世代シーケンスの波が押し寄せて参りました。今までの全ゲノム解析はせいぜいゲノム上の30万か所から50万か所の突然変異を調査するGWASが主流でしたが、これからは全ゲノム配列解析に基づく、疾患や病態関連変異の探索が始まります。その中間形態として、全ゲノムの1%に相当するエクソーム分析が2年前から盛んとなっておりますが、これでは残り99%の変異を取りこぼすことになり、しかも、近年急速に生物学的な機能が明確となってきたncRNAの変異をまったく無視することにもなります。加えて転座や欠失などゲノムの大規模な構造変化の情報も得られない欠陥があります。全ゲノムシーケンスのコストさえ10分の1となれば問題なく全ゲノムシーケンスに移行すると考えております。その分、データ処理のコストや時間が問題となるのは皮肉ですが、ゲノム研究のコスト構造の大きな変化が起こりつつあるのです。我が国でも予算不足を理由に、次世代がん研究はエクソーム分析に留まっておりますが、全ゲノム解析のコストダウンを見ながら機動的に戦略を変えていくべきだと思います。噂では、神戸に支店を開設した中国のゲノム企業、BGIが我が国でのエクソーム解析とほぼ同じ価格でヒト全ゲノム解析を受注するとの情報も入っております。これは是非取材しなくてはなりません。関係者がいらっしゃったら、どうぞご連絡を願います。

 2011年9月30日から10月2日まで米国のCold Spring Harbor Laboratoryでパーソナルゲノムの会議が開催されています。デンマーク領の自治地区、フェロー諸島が全国民(5万人)を全ゲノムシーケンスする計画「FarGenプロジェクト」を発表、度肝を抜きました。2週間前にデンマークに居りましたが、こんな情報どこにもありませんでしたぞ。私も正直、びっくりいたしました。Time紙も9月30日に報道しておりますが、もしこの計画が実現すれば、世界で初めて全国民の全ゲノムデータのデータベースを持ち、国民の健康に貢献しようという国家が誕生します。かつて、人口26万人のアイスランドが国民のカルテデータと遺伝情報(家系情報とSNPs)を収集する法律を制定、プロジェクトのマネージメントをdeCODE社に任せたこともありましたが、プロジェクト参加方法が拒否しない場合参加する(オプトアウト)であったため、結局は国民の反発を招き、プロジェクトが塩漬けされた経緯を思い出します。アイスランドではdeCODE社が国民からボランティアを募り、遺伝情報と健康情報を16万人以上から収集することに最終的には成功しました。手間暇かかりますが、参加を望む場合に参加する(オプトイン)が、こうしたゲノムデータベース構築の鍵であると、その時に確信いたしました。

 人口が5万人だから衆議を得られやすいといっても、フェロー諸島のFarGenプロジェクトでも、この経験を生かすべきだと思っております。まだ、調査中なので詳細は不明ですが、次世代シーケンサーの雄、Illumina社の支援で5万人分の全ゲノムシーケンスを5年間で終了する計画です。費用は3000万ドル。つまり一人当たり600ドル、現在の円高だと45万円相当で全ゲノム解析する見通しです。安い、誠に安い価格ですが、これは5年間で相当にゲノム解析のコストが低下することを見込んでいます。2016年にはきっと300ドルを切る見通しだと推測します。まさに医療に全ゲノムシーケンスが活用できるコスト範囲に到達するのです。

 FarGenプロジェクトの担当者は「シーケンスするだけでなく、その情報を国民の健康に還元する」と明言しており、全ゲノムシーケンス情報とカルテ情報を組み合わせた新しい健康情報サービスの構築をも視野に収めています。

 9月30日はちょうど、コペンハーゲンから成田空港に着いた時です。フェロー諸島に行く絶好のチャンスを逃したのが、誠に悔しい限りです。今後もデンマークの動きには、注目しなくてはなりません。

 11月30日午後品川で、次世代シーケンサーのセミナーを開催いたします。今回もびっくりするような進歩を皆さんと議論することができるのが、楽しみです。どうぞ皆さんもご参加願います。詳細決定次第、このメールで逸早くお伝えいたします。

 今週もどうぞお元気で。

            日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/