まさか、Steven Paul Jobsが死ぬとは。

 先週、おかげさまでBioJapan2011は盛況のうちに幕を閉じました。来年もBioJapan2012を10月10日から12日、パシフィコ横浜で開催いたします。今年は東日本大震災の影響で海外出展が縮小しました。ただし、ドイツBASF社などは同社が震災以降初の日本の展示会出展にBioJapanを選ぶなど、来年以降の手ごたえも感じております。何よりうれしかったのは、大勢の読者にご来場いただいたことと、会場内でのオープンイノベーションの頻度がますます増えていることです。本当のバイオの専門家、技術導入や共同研究によってイノベーションを起こそうという国内外のプロが集まるBioJapanに成長しつつあります。

 BioJapan2012も皆さんの知恵を育み、技術突破に繋げる場として、どうぞ積極的にご活用願います。

 さて、10月5日、すい臓がんによる呼吸停止によって、Jobs氏は天に召されました。通常なら診断後半年以内に死亡する重篤な病、すい臓がんと2004年に診断されても、iPadやiPhoneを世に出し続けた天才に天もきっと安らかな眠りを与えたと信じたい。愚かなことに誰でも死亡率は100%であるにもかかわらず、絶対Jobs氏は死なないと思っておりました。素晴らしい商品でしたが、いずれも完成品という意味では日本の家電製品に劣る同氏の商品が、何故、全世界で熱狂的に受け入れられていたのか?日本の企業は真剣に学ぶ必要があります。どうやら皆さんは、Jobs氏が好きだったということに理由が集約されそうです。福岡の焼き鳥屋でiPhoneの開発担当者と偶然であったことがあります。開発拠点のひとつは間違いなく日本にありました。Jobs氏は一番日本を研究していたのではないでしょうか。これが彼らの成功のもう一つの理由だと私は思っています。

 創業者したApple社から30歳の時に、首になり、人生を否定された時にも、自分がまだAppleで実現しようとした仕事を愛していることに気づき、Next社とPixar社を創設、やがてApple社に復帰した経歴はまるで小説です。辛酸を味わっている時代に妻にめぐり合い、「今では、Apple社に首になったのは人生で最良の経験だ」と断言するタフなJobs氏がまさか、死ぬ訳はないと、非科学的に信じていたのです。手術可能なすい臓がんであるという幸運と、肝臓移植など米国の高度医療が巨万の富を築いたJobs氏にはふんだんに注ぎ込まれたことから、あれだけ痩せても、大丈夫だ、iPhone5くらいになったら買おうと油断をしていたのです。しかし、人生には必ず死が待っているのですね。

 2005年、Stanford大学の卒業式でJobs氏がおこなったスピーチは、バイオ産業の勃興にも不可欠な真のアントレプレナーに皆さんが転ずるための勇気を与えるものです。下記のサイトから是非アクセス願います。
http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html

 その中で、Jobs氏は3つの話しを展開しています。
 それは connecting the dots、love and los、そしてdeathです。

 皆さんもそうでしょうが、私も死ぬとは思っていなかった(本当は満17歳で死ぬという妄想に囚われたことがありましたが、17歳+1日の目覚めは爽快でした)。そろそろ生物学的な死を覚悟して身を処する時が来たのかもしれません。少年追いやすく、がくっとなり易し。

 しかし、インターネットのおかげで、Jobs氏の思い出も思想も不朽のものとなり、世界中の人々と共有されるようになりました。バイオでDNAの情報も保存可能となりましたが、皆さんの思想や人格は現在のバイオでも、言葉による遺伝しか許されておりません。

 まるで同氏の言葉と誤解されている「Stay hungry. Stay foolish」も、60年代に世界に衝撃を与えたThe Whole Earth Catalogの最終版の言葉を、Jobs氏がStewart Brand氏から引継いだものです。我が国のバイオにも、Jobs氏のように人々を熱狂させる言葉を持った若者が、先輩の情熱を継承しつつ、登場することを期待しています。

 最後に、今年も恒例の次世代シーケンサーのセミナーを11月30日の午後に品川で開催いたします。どうぞ時間確保願います。この技術革新は止まりません。新たなバイオ研究の地平を議論いたします。

 今週もどうぞお元気で。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/