こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。
 最近、新しい治療技術の研究開発に取り組んでいる研究者の方を取材すると、医師主導治験の実施の準備を進めている、あるいは実施を検討しているという話を聞くことが多くなりました。記事にした実例を挙げれば、
成育医療研究センターの梅澤研究グループ、小児対象の細胞治療の治験を計画、医薬品として承認取得目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0809/
キレート剤が進行肝細胞がんに効果、山口大の臨床研究で判明、医師主導治験を検討
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1444/
日経バイオテク4月11日号「特集」、実用化進む再生医療
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/8295/
などがあります。
 医師主導治験は、医療上必要でも市場が小さいなど製薬企業が興味を示さない製品の開発促進を目指し、導入された制度です。03年から04年にかけての薬事法とGCPの改正で、実施が可能となりました。07年8月には、医師主導治験による初の承認例が登場しました(麻酔薬フェンタニルの小児への適応拡大)。
 これまで医師主導治験といえば、海外で承認されているのに日本では未承認の製品の開発のきっかけを作るために、まずフェーズIを医師主導でやって企業に引き継ぐ例や、既に承認されている製品の適応拡大を目的とする例がほとんどを占めていました。しかし、ここにきて、世界でも未承認の有効成分を対象にしたいわゆるファーストインヒューマン試験を医師主導でやる例が出てきました。上に記した成育医療研究センターの例も、希少疾病(具体的にはまだ開示されていません)を同種細胞療法で治療しようとの試みです。
 厚生労働省もこうしたプロジェクトを支援するために、治験実施拠点の整備を開始しています。
厚労省、早期・探索的臨床試験拠点整備事業の補助対象の5医療機関が決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0529/
国立がん研究センターがフェーズIセンターを創設へ、厚労省が5年間で30億円超を支援
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1441/
 さらには、国内外で未承認の品目の最終治験を医師主導で実施するというプロジェクトが動き出しています。
医師主導による初のフェーズIII、久留米大が計画、ワクチンで脳腫瘍を治療
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1127/
 このプロジェクトでは、脳腫瘍を対象としたがん治療ワクチンのフェーズIIIが実施される予定で、既に医薬品医療機器総合機構(PMDA)とプロトコールの確定などに向けた相談を行っています。このスキームで新薬の承認が取得できるとなれば、企業治験のすき間を埋める役割しか持っていなかった医師主導治験が、新たなステージに入ることになります。