こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 2011年7月に、米食品医薬品局(FDA)がコンパニオン診断薬の同時開発に関するドラフトガイドラインを策定して以降、FDAが医薬品とそのコンパニオン診断薬を同時承認する事例が相次いでいます。
【解説】欧米当局がバイオマーカーの臨床試験への応用についてのガイダンスの草案を公表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0425/
FDAが肺がん治療薬クリゾチニブと診断薬を同時承認、申請から5カ月、自治医大・間野教授が標的を発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1178/
【解説】ベムラフェニブとそのコンパニオン診断薬の同時承認から見る業界への影響
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1026/
 FDAが7月に発表したドラフトガイダンスと、その前に欧州医薬品庁(EMA)が発表したコンパニオン診断薬のガイダンスを解説するリポートを、次の日経バイオテク本誌(9月12日号)に掲載する準備を進めています。CROの薬事コンサルタントの方に執筆いただいたもので、FDAとEMAのガイダンスの違いなどがクリアになっています。医薬品や診断薬の開発に関わる方には有用な記事だと思います。ぜひご期待ください。
 ところで、昨日は私もアボットジャパンに取材に行き、コンパニオン診断薬の開発について話を聞いてきました。Pfizer社のクリゾチニブと同時承認されたコンパニオン診断薬は、Abbott Laboratories社のFISH法の製品です。クリゾチニブは3月に、このFISH法の診断薬も4月に日本で承認申請されているので、日本でも同時承認となるかもしれません。日本では、まだ医薬品とコンパニオン診断薬との同時開発のガイドラインはありませんが、事例が重ねられているので、いずれガイドラインもできると期待しています。
クリゾチニブと同時承認されたコンパニオン診断薬の詳細が判明、日本でも4月に承認申請
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1243/
 それにしても改めて思うのは、EML4-ALKの融合たんぱく質と一部のがんとの関係を突き止めた自治医科大学の間野教授の発見のインパクトです。クリゾチニブは、この発見の以前に、ALKではなくMETという別のたんぱく質の阻害薬として臨床試験が行われていた化合物です。また、Abbott社の診断薬も、ALK遺伝子の異常と血液腫瘍の関係が以前から指摘されていたことから、ALK遺伝子の異常を診断する研究用キットとして1997年に製品化されていました。ただともに臨床用として承認されるには至っていなかったわけですが、それが2007年の間野教授の報告を受けて臨床開発が加速的に進み、わずか4年後には医薬品、診断薬として承認に至ったわけです。医薬品、診断薬の開発スピードとしては、とにかく異例の早さです。
 ただ、思うに医薬品、診断薬とも、もともとEML4-ALKの融合たんぱく質をターゲットに創出されたものではないだけに、恐らくは最適化の余地が大いにあるものだと思われます。実際、幾つかの企業が既にその次世代品の開発を進めています。今後は、次世代品を巡る開発競争からも目が離せません。
 また、余談ですが、新たな疾患関連遺伝子の発見が開発途上の医薬品をよみがえらせると言うのは、ドラッグリプロファイリングにも通じる話題です。日経バイオテク本誌8月29日号には、ドラッグリプロファイリングの特集を掲載していますので、こちらも併せてお読みください。
日経バイオテク8月29日号「特集」、ドラッグリプロファイリング
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1215/
 一方で、今後、医薬品とコンパニオン診断薬のセットが日本でどんどん広がっていくかというと大きな課題があります。同時開発のガイドラインが未整備であることもその1つですが、他にも遺伝子検査の保険点数が2000点に抑えられていて、診断薬企業にとってのインセンティブが低すぎるということが1つ挙げられます。また、医薬品と診断薬では健康保険に収載されるタイミングが必ずしも同じでないことも実際の普及の場面では障害になる可能性があります。事前に有効性の有無や安全性のリスクを調べて投薬することは、無駄な投薬を減らし、不必要な副作用を生じさせないといった観点から、有用なのは間違いありません。そうした有用な医療が普及する上で、制度的な障害があるのであればそれを見直すよう、厚生労働省にはお願いしたいところです。
 個の医療メールのような内容になってしまいましたが、本日はこのあたりで失礼します。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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科学技術振興機構(JST)A-STEPのフィージビリティスタディ(FS)ステージ、新規採択案件を「BTJジャーナル」2011年8月号で特集しました。
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→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2011年8月号を先週木曜日(8月25日)に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料で読むことができます。ぜひご一読いただければと思います。
 最新号(2011年8月号)のダウンロードはこちらから。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1108
 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」では、大学などで生まれた研究成果の実用化を目指す研究開発フェーズを支援する科学技術振興機構(JST)のプログラムA-STEPを取り上げました。そのフィージビリティスタディ(FS)ステージの2011年度第1回公募分の採択課題が決定しました。競争率4倍の探索タイプは採択1181件のうち、バイオテクノロジーやライフサイエンスと関係が深い課題が6割を占めました。
 アグリ・バイオ分野は197件で、研究責任者の所属機関別で最も件数が多いのは8件の大阪府立大学と広島大学でした。一方、創薬分野では西高東低が目立ちました。この探索タイプに続き、シーズ顕在化タイプ119件と起業検証タイプ8件も決定しました。
この2タイプは競争率は6倍前後となりました。
 この記事は、以下のBTJ/日経バイオテク・オンラインの記事をもとにとりまとめました。BTJジャーナルの記事はどなたでも全文をご覧いただけます。しかもPDFマガジンですので、採択課題などを一覧表で見やすく掲載しています。
大学成果の技術移転を支援するJSTのA-STEP、FSステージ探索タイプ採択1181件の6割がバイオ・ライフ関連
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0523/
JSTのA-STEP探索、アグリ・バイオ分野で多数採択は大阪府立大、広大、東北大、名大、北大、慶大鶴岡、香川大、宮崎大
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0525/
JSTのA-STEP探索の創薬分野は西高東低、多数採択は東北大、熊本大、金沢大、名市大、阪大、大阪市大、長崎大
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0527/
1件800万円のA-STEP・FSステージ採択127件、最多は産総研7件と昭和電工4件
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0976/
JSTのA-STEP・FSアグリ・バイオ25件、キノコで雪国と大塚、乳酸菌でゲンとニチニチ、リン脂質で日油とナガセ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0977/
JSTのA-STEP・FS創薬は12件、プロジェクトリーダー企業は化血研と湧永、わかもと、大塚製薬など9社
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1008/
※2011年8月号(第68号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年8月号(第68号)
●CONTENTS
JSTのA-STEP「FSステージ」、農水省BRAINのイノベーション創出、文科省NISTEPの
科学技術指標 
P.2 アカデミア・トピックス
大学の成果を実用化へ橋渡し
JSTのA-STEP「FSステージ」
P.9 リポート
BRAINイノベーション創出事業
55億円に17倍、仕分け影響も
P.11 キャリア
NISTEP「科学技術指標2011」
P.12 BTJアカデミック・ランキング
JST・A-STEP探索の創薬がトップ
P.14 広告索引
 BTJジャーナルは、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、記事全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひご覧いただければと思います。BTJ編集長 河田孝雄