こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。お盆休みがあったため、1カ月ぶりの執筆となります。
 昨日、厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、中外製薬の抗VEGF抗体「アバスチン」の乳がんへの適応拡大が審議されました。この案件は、前回8月1日の同部会でも審議されたのですが、結論が出ず継続審議となったいわくつきのものです。
厚労省の医薬品第二部会、「アバスチン」の乳がんへの適応拡大を了承せず、米国の状況が影響か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0719/
 アバスチンは最初、結腸・直腸がんで承認され、その後、非小細胞肺がんなどに適応拡大が進んでいます。既に欧米では乳がんでも承認されていますが、米国ではFDAの抗がん剤諮問委員会が承認取り消しを勧告しています。というもの、米国での承認は迅速承認で、承認後に追加臨床試験の実施を義務づけられていたのですが、その結果がフェーズIIIと比較してかんばしくないものだったからです。
【解説】米食品医薬品局の諮問委員会が「アバスチン」の転移性乳がん適応の取り消しを判断、最終結論はFDA長官に委ねられる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0100/
 米国のこうした状況が影響したのか、通常はPMDAの審査意見をすんなり認める医薬品部会が、今回はいつもと異なる動きを見せました。医薬品の審査において有効性と安全性のバランスを納得いくまできっちりと議論するのは当然の姿勢だと思うのですが、今回の継続審議にはどうも中途はんぱなものを感じてしまいます。
 部会の議事録はまだ公開されていない(公開まで数カ月かかります。もっと早く公開できると思うのですが)ので事務方の説明を信じるしかありませんが、論点となったのはフェーズIIIの再現性だそうです。
 中外製薬は乳がんで国内フェーズIIIを行っておらず、有効性の判断は海外フェーズIIIのE2100試験がベースになっています。つまり、欧米と同じデータで審査しているということです。
 再現性とは具体的に何を意味するかというと、E2100はアバスチン群の成績があまりにもよかったので途中で有効中止になっており、もし試験を最後まで続行したと仮定したら、有効性を維持できたかどうかという点だそうです。
 部会はこの点について中外製薬に改めて説明を求め、その説明を受けて昨日の部会ではそれほど時間を費やすことなく全会一致で承認が了承されました。私が疑問に思うのは、そもそも中外製薬の説明だけで臨床試験に再現性があるかどうかを確認できるのかということです。
 想像するに、E2100の実施にかかわっていない中外製薬が言えるのは、「試験を続行したときに結論が覆る可能性は、統計学的にみてこれくらいしかないから再現性は十分にあります」といった程度でしょう。統計技術的な観点からE2100の有効中止の妥当性を確認するだけなら、FDAもEMAもPMDAも十分に検討したはずです。
 実効性を持って再現性を確認するというなら、被験者のカルテやX線写真にまでさかのぼって、有効性の評価が正しかったかどうかを調べなければ分からないはずです。しかし、そんなことは不可能です。ということは、言わずもながの話を聞くために、1カ月が費やされたことになるのではないでしょうか。