こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 月曜日に、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団の薬事エキスパート研修会を取材させていただきました。ちなみに、薬事エキスパート研修会は、旧日本公定書協会時代の2006年に開始されたもので、8月1日の研修会がちょうど100回目ということでした。たまに取材させてもらっていますが、いつも大変勉強になります。
http://www.pmrj.jp/kenshu/html/frm110.php
 8月1日の研修会のテーマは、「新医薬品開発の国際戦略とアジア治験の現状と展望-日本における新医薬品開発戦略の課題と対策を探る-」というもので、ファイザー、ノバルティスという外資系企業2社と、第一三共、アステラス製薬という内資系企業2社が講演した後、ディスカッションを行いました。講演で、ファイザーの方が非常に興味深いデータを紹介されていたので、日経バイオテク・オンラインの記事で紹介しました。
「薬物動態に、アジア人の間で差はないと結論付けてもいいのでは」とファイザーの原田医薬開発部門長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0763/
 講演全体で言えるのは、外資系企業、内資系企業に限らず、グローバルに活動している企業においては、既に国際共同治験は当たり前のように行われていることです。それから、日本の治験環境について、多くの演者が一致して言っていたのは、かつて言われた質、スピード、コストに課題があるというのは昔話で、質は非常に高く、スピードも非常に速くなってきているということです。「日本が遅いというのは10年前の話だ」という声も出ていました。
 ただし、日本では早期試験が行われないという課題があります。司会者が、「日本の役割を考えた場合、第III相はコストでアジアの他の国にかなわないかもしれないが、I相、II相、IV相以降も含めて、薬としての価値を高めることをサポートする国になってほしい」とした上で、「外資系企業は、日本で早期試験からやるつもりがありますか」と問いかけたところ、外資系企業の講師が「それにお答えする前に、日本企業はいかがでしょうか」と振ったところ、内資系企業の方が、「2、3割は欧米とほぼ同時に日本でも開始しているけれど、ほとんどが欧米先行」と話していました。
 企業にすれば、ビジネス上の理由などもあるのでしょうが、日本企業ですら日本では早期の臨床試験を行っていないという現実があります。しかしながら、早期試験を行わず、後期試験の段階から参加するというやり方では、ドラッグラグはなくならないし、医薬品開発の中でリーダーシップを発揮することができません。臨床試験のインフラという観点で、日本のレベルがアップしてきている点で演者らは一致していましたが、「日本は特殊ではなくなった」というレベルであって、決してアジアのリーダーではないことを認識すべきです。
 日本でファーストインヒューマンの試験が行われるようになるためにはどうすべきでしょうか。先般も、厚生労働省が今年度からファーストインヒューマンが行えるようにするために、早期・探索的臨床試験拠点として5カ所の医療機関を選定して整備を開始したことを紹介しましたが、グローバルに事業展開する企業からファーストインヒューマン試験を誘致するには課題は数多くありそうです。
厚労省、早期・探索的臨床試験拠点整備事業の補助対象の5医療機関が決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0529/
 シンポジウムでは、臨床薬理施設の整備や、被験者に対する補償、リスク・ベネフィットに対する国民理解などさまざまな課題が挙げられていました。「この疾患ならこのドクターという人がいるという理由で、南米の施設が臨床試験に組み入れられる例もある。果たして日本にそういう医師がどれだけいるか」といった声も出ていました。それから、ある講師が原発事故を例に上げて、「GCPでは情報開示、客観的評価、人権が重要だが、そもそも日本はこの3つが弱いのではないか」と指摘していたのが印象的でした。
 いずれにせよ課題は数多くありますが、早期・探索的な臨床試験が行えるかどうかは、日本の医療のレベルアップに直結する問題です。そういう観点からも、早期の臨床試験を行える施設の整備を応援していきたいと思います。
 本日はこの辺りで失礼します。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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ES/iPS研究の最前線記事を特集した
「BTJジャーナル」2011年7月号を発行・公開しました
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 BTJジャーナル2011年7月号を先月末(7月25日)に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料でお読みいただけます。ご一読ください。
 最新号(2011年7月号)のダウンロードはこちらから。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1107
 “青”コーナー「リポート」は、ES/iPS研究の最前線の記事を特集しました。日本からも次々と成果が発表されています。ここ2カ月にBTJ/日経バイオテク・オンラインで報道した主な記事を7本まとめて掲載しました。森正樹阪大教授らはmi-iPS、山中伸弥京大教授らはGlis1で安全なiPSを作製しました。奥田晶彦埼玉医大教授らはc-Myc無しで多能性を維持し、理研オミックスはCCL2が万能性維持に重要と発見しました。
 以下のBTJ/日経バイオテク・オンラインの記事をもとに編集して写真も掲載するとともに一部、新たな情報も付加しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
20日間でヒトES/iPS細胞の8割が肝細胞に、医薬基盤研とリプロセルが実用化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0375/
理研オミックス領域、ケモカインCCL2がES/iPS細胞の万能性維持に重要、Stem Cells誌で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0283/
埼玉医大とJST、c-Myc無しでもES細胞が多能性を維持、MAPKとGSK3βの阻害剤添加が有効
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0240/
iPSアカデミアジャパン、米CDI社の心筋細胞の日本での供給を契約
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9591/
京大と産総研、転写因子Glis1で安全なiPS細胞を高効率作製
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9576/
阪大の濱田博司教授ら、体の非対称性の起源解明に大きな一歩、再生医療の基盤へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9326/
miRNAでiPS細胞を作製、阪大グループが成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9325/
※2011年7月号(第67号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年7月号(第67号)
●CONTENTS
国立大学第1期中期達成評価、ES/iPS研究最前線、分子生物学会若手助成、女性科学者
P.2 アカデミア・トピックス
国立大学法人等の第1期中期期間
達成状況評価が評価委員会で決定
P.5 リポート
ES/iPS研究で次々と新成果
アカデミアから国産技術
P.11 キャリア
日本分子生物学会の若手助成
ロレアル-ユネスコ女性科学者賞
P.13 BTJアカデミック・ランキング
20日間でヒト肝細胞がトップ