東京はまるで秋を迎えたような冷たさです。暑けりゃ暑いと文句を言うくせに、ここまで冷たいと、お米の稔りを心配する有様。人類は本当に僅かな温度帯に生息しているのだと、実感しますね。
 先週の末に東京工業大学の学長と委員会で同席する機会を得ました。大変ですねという問いかけにも、ひたすら恐縮するばかりで取材にはなりませんでした。先週から朝日新聞が大学の研究費の預け金問題のキャンペーンを展開中です。朝日が入手した企業の預かり金帳簿を基に、関東を中心に60大学330人の教官が年度末に余った研究費を機材を購入した格好にして、企業に預けていたことを暴露しました。この結果、東工大の次期学長に決まっていた副学長も預け金を行っていたことが判明、学長就任を辞退したため、東工大は混乱に陥っております。朝日もここまでやったなら、全国調査をやっていただきたい。このままでは関東仕置にとどまります。一罰百戒は行政府がやること。メディアであれば、研究者個人の悪としての摘発では不十分です。全国の実態が分かれば、殆どの研究者が多かれ少なかれこうした預け金に手を染めたり、染めたいという誘惑と戦っていることが明白となるためです。我が国の科学研究費の制度の欠陥にまで踏み込まなくては、定期的に科学研究費のスキャンダルを報道するだけで、我が国の科学研究の公明正大化と環境の改善には繋がらないと思うからです。是非とも、今後の報道を拡大して欲しいと望んでおります。
 科学研究が年度の切れ目で綺麗に切れるならこのような事態はまさに、個人的な犯罪として追及して良いでしょうが、これがうまくいかない。切れ目のない研究に、財務省の都合の単年度会計を遮二無二当てはめることが、そもそもの根本原因です。文科省の科研費などでは余った研究費の繰越を認めるように制度は変わりましたが、その対象が限定されていることと手続きが面倒な点に改良の余地はあります。もう一つ改良すべき点は、余った予算を返した場合、これを不当に予算を膨らまして請求したと性悪説で解釈することを止めることです。ギリシャ以上にGDP比の負債が膨らんでいる我が国政府にとって、科学研究を効率化して経費を削減した努力の成果として、研究費の返還は賞賛されるべきものであると解釈すべきであると、私は思います。政府の単年度主義の結果、なんでも予算は使い切らなくてはならないという形式主義が無駄と不正の温床となっている構造を突かなくてはなりません。
 但し、予算を返還したからといって、勿論、科学研究の結果や成果は例えネガティブデータであったとしても、きちっと報告し、国家の知識として蓄積しなくてはならないことは言うまでもありません。国家の研究事業の評価などにも関与することがありますが、全部ポジティブデータばかりで、それは結構なのですが、本当の科学研究が無数のネガティブデータの積み重ねであることを考えると、なんだか上澄みだけで評価させられている気分になります。これは科学研究全般の問題ですが、ポジティブデータに偏って論文発表が行われる現在の仕組みを、我が国の政府が支援した研究だけでもネガティブデータを集め、それを我が国の研究者が共有できる仕組みを創ったら、落日の勢いの我が国の科学研究も底を打つ秘策となるかも知れません。世界中どこを見回しても、信頼に足るネガティブデータを出すことが出来るのは、決して皮肉ではありませんが、日本以外ないと考えているからです。
 無駄な重複を避け、失敗の共通原因を探り、そして成功に一歩でも近づくことが出来るのではないでしょうか?研究費の不正預かり金問題にしても、実態から離れた形式的議論では前には進みません。科学研究も赤裸々な実態を研究者が公開し、きちっと政府と議論すべきでしょう。これは学会とその親玉である日本学術会議がまず先頭を切って行うべき問題であると思います。
 勇気を出して、仲間と日本の科学研究を守るべき時が来た、と思います。
 今週は台風がまた来そうですね。ともあれ皆さん、お元気で。
             Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2011-07-27  
BTJブログWmの憂鬱2011年07月27日、文科省の次世代がん研究戦略推進プロジェクトは、抗がん剤や診断薬のシーズを育てる野心的なもの
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0611/
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2011-07-25    
BTJブログWmの憂鬱2011年07月25日、バイオベンチャーへの投資ウインドウは開いているが、上場へのストーリーは上手くいかず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0551/
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ES/iPS研究の最前線を特集した
「BTJジャーナル」2011年7月号を発行・公開しました
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 BTJジャーナル2011年7月号を先月末(7月25日)に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料でお読みいただけます。ご一読ください。
 最新号(2011年7月号)のダウンロードはこちらから。
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 “青”コーナー「リポート」は、ES/iPS研究の最前線の記事を特集しました。日本からも次々と成果が発表されています。ここ2カ月にBTJ/日経バイオテク・オンラインで報道した主な記事を7本まとめて掲載しました。森正樹阪大教授らはmi-iPS、山中伸弥京大教授らはGlis1で安全なiPSを作製しました。奥田晶彦埼玉医大教授らはc-Myc無しで多能性を維持し、理研オミックスはCCL2が万能性維持に重要と発見しました。
※2011年7月号(第67号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年7月号(第67号)
●CONTENTS
国立大学第1期中期達成評価、ES/iPS研究最前線、分子生物学会若手助成、女性科学者
P.2 アカデミア・トピックス
国立大学法人等の第1期中期期間
達成状況評価が評価委員会で決定
P.5 リポート
ES/iPS研究で次々と新成果
アカデミアから国産技術
P.11 キャリア
日本分子生物学会の若手助成
ロレアル-ユネスコ女性科学者賞
P.13 BTJアカデミック・ランキング
20日間でヒト肝細胞がトップ
 BTJジャーナルは、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、記事全文を
ご覧いただけます。
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 ぜひご一読いただければと思います。BTJ編集長 河田孝雄