こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 7月後半に、メビオファームとラクオリア創薬というベンチャー2社が相次いで上場しましたが、ともに少し厳しい船出となりました。
メビオファーム、上場から5営業日でようやく初値、時価総額は8億円
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0530/
ラクオリア創薬が上場、終値は公開価格より100円安の1500円、時価総額3位の上場バイオベンチャーに
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0460/
 ここ数日、日経バイオテク本誌8月1日号に掲載するために、1カ月前に取材したBIO2011の資料やメモなどの目を通していましたが、バイオベンチャーの資金調達が厳しいという話は米国でも何度も聞かされました。最近、少しは復活しつつあるとはいえ、米国でもバイオベンチャー、特にアーリーステージのプロジェクトの資金調達は、なかなか簡単ではないようです。実際、大手会計事務所のErnst & YoungがまとめたBeyond bordersという年次報告書でも、2010年は米国、欧州、カナダのバイオ企業の資金調達はトータル250億ドルで、08年のリセッションの前の水準まで回復したとのことですが、そのうち米国企業についてみると、調達額の45%は大手企業によるデットファイナンスであって、新興企業による調達はむしろ2009年より20%減少したということでした。
 とあるパネルディスカッションではバイオベンチャーの資金調達難に関して、リセッションで投資に回す資金が失われたことにソーシャルネットワークに代表されるIT分野での資金需要の高まりが生じて、相対的にバイオ分野への投資を減少させているとも指摘されていました。ただ、ある投資家は、08年のリセッションは景気循環であって、ハイリスクハイリターンのバイオベンチャー投資のビジネスモデルが崩れたわけではないと強調していました。日本では、バイオ投資を止めてしまったベンチャーキャピタルも多いようですが、景気循環であればいずれはバイオ投資が復活する日もやってくるはずです。
 また、大企業のデットファイナンスが活発化しているのであれば、その資金がベンチャーに回っていく可能性もあります。オープンイノベーションの呼び声の下、少しはそのような流れもできつつあるので、その資金の流れがより太くなっていくことを期待しています。
 他方、シーズの面では日本の基礎研究が極めて優秀であることを痛感します。今週に入って日経バイオテク・オンラインで報じただけでも、将来の可能性を有するシーズの発表が幾つかありました。
カルノシンに認知症予防作用、糖尿病との関連も、東大の久恒辰博准教授らが国際アルツハイマー病学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0607/
東京医歯大の高柳教授、Cathepsin K 阻害薬を用いた関節リウマチの新規治療法を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0559/
次世代低分子化合物のホープJAK阻害薬による関節リウマチ治療の最新の臨床試験を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0560/
東京医歯大の上坂准教授、関節リウマチの新規治療法としてサイクリン依存症キナーゼ(CDK)4/6阻害療法を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0537/
 加えて、行政サイドはシーズを実用化に結び付けていくための仕組み作りにも本格的に取り組んでいます。ちょうど先週末以降に、2つのニュースを日経バイオテク・オンラインに掲載したので紹介しておきます。1つは、科学技術振興機構(JST)が、研究成果最適展開支援プログラム「A-STEP」の「フィージビリティスタディ(FS)ステージ 探索タイプ」の採択課題1181件を決定したというニュースです。A-STEPは、大学や公的研究機関で生まれた研究成果を基に実用化を目指すための技術移転支援制度で、そのFSステージの探索タイプは、まさに事業化の可能性を探索する最初の一歩を支援するものです。
大学成果の技術移転を支援するJSTのA-STEP、FSステージ探索タイプ採択1171件の6割がバイオ・ライフ関連
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0523/
 もう1つは、厚生労働省が、ファーストインヒューマンの臨床試験を実施する早期・探索的臨床試験拠点として5カ所の医療機関を選考したというニュースです。早期・探索的臨床試験拠点整備事業は、世界に先駆けて臨床試験を実施し、日本発の革新的な医薬品・医療機器を創出することを目指すもので、2011年度のライフイノベーションプロジェクトの目玉施策の1つです。さらに、今回の選考対象は、ファーストインヒューマンの臨床試験を薬事法に基づく「治験」の形で国内で行える拠点の整備を目指したものですが、これとは別に政府与党は社会保障・税一帯改革の中で、臨床研究中核病院を2011年度から3年間で15カ所整備する方針を打ち出しています。これらの拠点整備が進めば、基礎的なシーズをスムーズに臨床研究に移行でき、臨床試験、承認申請、実用化といった流れを加速できると期待されます。
厚労省、早期・探索的臨床試験拠点整備事業の補助対象の5医療機関が決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0529/
 BIO2011では日本のバイオベンチャーの姿をあまり見かけなかったので、現地にいる間は日本のプレゼンス低下を少し危惧していましたが、最近、臨床段階前後のシーズの話を幾つか聞く機会があり、日本のシーズ創出力が決して欧米に劣っていないことを改めて確認できました。少しずつですが、仕組みは出来上がりつつあるので、バイオ分野が投資先としての輝きを取り戻すことを期待しています。
 本日はこの辺りで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
============================================================================
ES/iPS研究の最前線を特集した
「BTJジャーナル」2011年7月号を発行・公開
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 BTJジャーナル2011年7月号を今週初め(7月25日)に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料でお読みいただけます。ご一読ください。
 最新号(2011年7月号)のダウンロードはこちらから。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1107
 “青”コーナー「リポート」は、ES/iPS研究の最前線の記事を特集しました。日本からも次々と成果が発表されています。ここ2カ月にBTJ/日経バイオテク・オンラインで報道した主な記事を7本まとめて掲載しました。森正樹阪大教授らはmi-iPS、山中伸弥京大教授らはGlis1で安全なiPSを作製しました。奥田晶彦埼玉医大教授らはc-Myc無しで多能性を維持し、理研オミックスはCCL2が万能性維持に重要と発見しました。
※2011年7月号(第67号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年7月号(第67号)
●CONTENTS
国立大学第1期中期達成評価、ES/iPS研究最前線、分子生物学会若手助成、女性科学者
P.2 アカデミア・トピックス
国立大学法人等の第1期中期期間
達成状況評価が評価委員会で決定
P.5 リポート
ES/iPS研究で次々と新成果
アカデミアから国産技術
P.11 キャリア
日本分子生物学会の若手助成
ロレアル-ユネスコ女性科学者賞
P.13 BTJアカデミック・ランキング
20日間でヒト肝細胞がトップ