こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 米食品医薬品局(FDA)が7月12日に、「Draft Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff - In Vitro Companion Diagnostic Devices」というタイトルで、個別化医療に向けての診断検査(デバイス)におけるガイダンス草案を公表しました。以前から出す出すといいながら、なかなか公表しなかったコンパニオン診断のガイダンスのドラフトを、FDAはようやく公表した格好です。詳細は日経バイオテク・オンラインの記事でお読みいただきたいですが、FDAは一部の例外を除いて、新たに治療薬を開発する際には、コンパニオン診断薬(機器)の同時開発を求めていく意向です。
【解説】欧米当局がバイオマーカーの臨床試験への応用についてのガイダンスの草案を公表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0425/
 記事で紹介していますが、欧州医薬品庁(EMA)も7月9日付けで、「Reflection paper on methodological issues associated with pharmacogenomic biomarkers in relation to clinical development and patient selection Draft」というタイトルで、ゲノムバイオマーカーの臨床試験での利用に関する草案を公開しています。個の医療に対する取り組みがなければ、もはや医薬品開発は困難になりそうです。
 日本企業は個の医療に対する取り組みが遅れているようにもいわれていますが、そんなことはありません。協和発酵キリンが4月末に承認申請した抗CCR4ヒト化抗体KW- 0761に関しては、子会社の協和発酵メデックスがCCR4の発現量を確認する診断薬を同時申請しています。中外製薬は抗グリピカン3抗体(GC33)の開発に際して、Roche社グループの病理診断機器・試薬メーカーである米Ventana社の協力を得て、GPC3の発現強度を調べていることを明らかにしています。また、エーザイは新中期経営計画「はやぶさ」の中で、「Biomarkerの組み込みのない新規テーマには着手しない」と宣言しています。
協和発酵キリン、ポテリジェント化抗体第一号申請、個の医療化も実現
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/8652/
中外製薬、ロシュ、抗グリピカン3抗体医薬の開発で医薬品と診断薬の同時開発に着手
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6848/
エーザイ、中計を1年前倒しで更新、がんやてんかんを中心領域に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7585/
 もっとも、分子標的薬の開発を進めるからには、その標的の有無を確認して処方するかどうかを決めるというのは当然のようにも思えます。いずれにせよ、個の医療の時代の到来はもはや待ったなしです。今後、製薬企業と診断薬企業の合従連衡の動きが一気に加速することになるのではないでしょうか。
 話は変わりますが、先週、日本分子生物学会の若手研究者助成に関する記者会見を取材してきました。元国立遺伝学研究所所長である富澤純一氏が私財1億5000万円を日本分子生物学会に寄付して設けた基金から、原則39歳以下の若手研究者に対して毎年5人程度に1人300万円を贈呈するというもので、第1回の今年は6人が選考されました。ただ、基金の運営委員会委員長を務めた山本正幸・東京大学大学院理学研究科教授は記者会見で、「今回選ばれた6人の研究者はしっかり結果を出せる優秀な人」としながらも、「ないものねだりかもしれないけれど、若手には従来の分子生物学の枠にとどまらない型破りな提案を期待していた」と話されていました。
日本分子生物学会、若手研究者助成対象者決定、「もっと型破りなテーマを期待したが……」と山本正幸・東大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0355/
 かつてに比べれば研究領域の専門分化が進み、一方で研究には多額のお金がかかるようになっているわけで、型破りでかつ現実味のあるアイデアを発案するのはなかなか難しくなっているのかもしれません。しかし、若い人たちのアイデアが乏しくなっていることは決してないと思います。今回が第1回目の研究助成であり、応募する研究者も何が求められているのかが分からなかった面があるのかもしれません。運営委員会側は、今回の記者会見で「ハイリスクハイリターン型の挑戦的な研究テーマを高く評価する」というメッセージを出されたわけなので、次回以降を期待することにいたしましょう。いずれにせよ、税金の節約が一方で進められているわけですから、こうした寄付金が若い研究者たちの研究に刺激を与えるようになれば素晴らしいことだと思います。
 ところで、本日、バイオベンチャーのラクオリア創薬が上場しました。上場初値は1480円で、公開価格の1600円を下回り、午前中の取引では公開価格を上回ることはありませんでした。それでも時価総額は約190億円と、バイオベンチャーとしては久々の大型上場です。バイオベンチャーは今年後半に数社が上場すると見られているだけに、今後、株式市場でどのように見られていくのかが気になるところです。
 本日はこの辺りで失礼します。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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理研は実験動物施設の節電に特許技術も活用
「BTJジャーナル」2011年6月号に東日本大震災と夏期節電対策を掲載
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 BTJジャーナル2011年6月号を先月末(6月24日)に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料でお読みいただけます。ご一読ください。
 最新号(2011年6月号)のダウンロードはこちらから。
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 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」は、東日本大震災のバイオ研究への影響リポート第4報を掲載しました。2011年3月11日の巨大地震と津波による原子力発電所の事故が、日本の電力需給に甚大な影響を及ぼしています。
 東京電力などの管内では瞬間最大使用電力の制限が7月1日から始まります。世界における競争が激しくなる一方のバイオテクノロジー研究が滞ることがないよう工夫が求められています。今号では理化学研究所の横浜研究所や筑波研究所の取り組みを中心に紹介します。
 この記事は以下のBTJ/日経バイオテク・オンラインの記事をもとに構成・編集しました。
続報、【節電対策(1)】夏期休業日の設定を理研とAISTが相次ぎ発表、AISTに3割削減のポスター
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9665/
【節電対策(2)】理研横浜研、第2次補正予算でコジェネ整備へ、シーケンサー2台稼働分
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9689/
【節電対策(3)】つくば市で6月17日に「節電大会」、グリーンカーテン用ゴーヤ苗を1000人にプレゼント
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9714/
【節電対策(4)】シーケンス受託実績が前年比1.8倍の理研横浜研オミックス領域、27から30%の節電達成へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9745/
【節電対策(5)】理研横浜研SSBC領域は36%節電、NMR稼働は34台のうち9台減らす
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9748/
【節電対策(6)】理研筑波研、実験動物施設の節電に日立プラントと特許技術、第2次補正でライフライン強化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9772/
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 ぜひご一読いただければと思います。BTJ編集長 河田孝雄
※2011年6月号(第66号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年6月号(第66号)
●CONTENTS
東日本大震災と夏期節電対策、エピジェネティクス研究会 MBSJ春季シンポジウム
P.2 アカデミア・トピックス
7月1日からの夏期節電対策
理研は独自技術も実用化
P.6 リポート
熊本に「アカデミック交差点」
エピジェネ研究会に400人
P.9 キャリア
金沢で研究者シンフォニー
MBSJ春季シンポに390人
P.12 BTJアカデミック・ランキング
山中教授「魔法の因子」がトップ
P.14 広告索引