こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。
 6月3日から7日までシカゴで開催されていた米臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会を現地で取材してきました。ASCOでは、世界中からがん領域の専門家が集結し、抗がん剤などの研究開発の最新成果が競って発表されます。
 日本の臨床腫瘍学会であればプレナリーセッションに選ばれるような研究が、ポスターセッション会場にずらりと並んでいるので、取材もなかなか大変です。オーラルの合間を縫ってポスター会場に行き、片っ端から写真を取ったりポスターのコピー資料を集めたりするわけですが、会場となっているコンベンションセンターがとにかく広いので、数百メートルも離れている複数の発表場所をあちこち移動しなければなりません。毎年のことですが、ASCOに来ると必ず腰が痛み始めます。
 それにしても、ASCOの運営ポリシーがマスコミに極めて協力的である点には感心します。プレスルームにはインターネット回線、電源、電話が用意されており、飲み物や軽食も提供されます。その日の発表のハイライトに関する記者会見は毎日開催。プレゼンテーションの妨げにならない限り、写真撮影などの情報収集活動は一切制限されません。
 がん関連の研究開発には、たとえそれが既に企業が権利を取得している抗がん剤であっても、基礎段階ではほぼ例外なく公的資金が投入されているはずです。おそらくASCOは、研究成果は社会全体で共有するべきであり、マスコミを通じて積極的に伝えられるべきだと考えているのでしょう。記事を掲載する場合は事前に文書で許可を取れなどと平気で要求してくる日本の一部学会とは雲泥の差があります。
 さて、肝心の発表内容ですが、後日、日経バイオテク本誌の特集で総括する予定です。なにしろ発表数が膨大なので、これから集めた情報をじっくり見直さなければなりません。
 とりあえずの印象としては、以下のような点を感じました。
・抗がん剤の開発は、対象市場がますます細分化されています。遺伝子などのバイオマーカーでサブグループ化した特定の患者層だけを対象にする製品や、患者数の少ないがん種から開発する例が増えています。
・複数の分子標的薬を併用して、がん細胞の増殖や転移に関係するパスウェーを並列で阻害したり、同じパスウェーの上流と下流を同時に阻害するという臨床試験が花盛りですが、一部の例を除いて期待したほど有効性は改善されていません。がん細胞は何らかの抜け道を見つけてしまうのでしょう。
・名前を聞いたこともないような分子を標的とする化合物の、ファースト・イン・マン試験が目立つようになってきました。がん遺伝子の探索競争による成果が、抗がん剤という果実になりつつあるのでしょうか。
 以下、これまでに掲載したASCO関連記事の一部を記しておきます。
ASCO2011、肺がん治療薬のフェーズIII、バイオマーカーないと高確率で失敗する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9486/
ASCO2011、ALK陽性NSCLC治療薬クリゾチニブのフェーズIb、PFSの中央値は10カ月
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9491/
ASCO2011、中外製薬のグリピカン3抗体、たんぱく質高発現だと有効性も高い傾向
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9515/
ASCO2011、協和発酵キリンが開発中のARQ197、CYPの多型が副作用に影響
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9518/
ASCO2011、武田薬品のHER2阻害薬TAK-285、期待された脳転移への効果は限定的か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9522/
ASCO2011、エーザイのマルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ、RASに変異があると高い効果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9542/
ASCO2011、ベムラフェニブがBRAF変異型メラノーマでOSを延長、第一三共傘下の米Plexxikon社が開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9572/
ASCO2011、抗CTLA-4抗体のイピリムマブ、メラノーマのファーストラインでもOSとPFSを延長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/9575/