東京は陰鬱な雨です。この気候変動には参りますね。先週の土曜日まで滞在した青森県三沢の気温は氷点下でしたが、光の春が雪に反射して存外鮮やかな風景とは対照を成します。日本列島に、春はいろいろな形で訪れています。
 3月12日に九州新幹線が全通すれば、新青森から鹿児島中央まで新幹線で結ばれます。明治以来営々と努力してきた、太平洋側の鉄道インフラのバージョンアップがほぼ完了いたします。輸送力と確実性、安全性そしてエコでも他の交通機関を圧倒する新幹線は、我が国の21世紀の成長の基盤となると確信しています。実は3月5日、新青森から東京まではやぶさのグランクラスで帰還いたしました。その前日たまたま三沢の駅で若い駅員が「試して見ます」と予約システムを作動させたら、何と一枚キャンセルが。三沢駅騒然。駅員さんと乗客10人以上が合唱して購入を勧められた結果、買わざるを得ないはめに。しかも、皆、切符を触らせてと殺到します。普通の緑の切符に小さな文字でグランクラスと表示されているだけなのに。
 しかし、正直言って皆さんの東北新幹線に対する好意を実感できました。12日には九州でも喜びの声が上がるでしょう。全国が繋がることは本当に嬉しいことなのですね。
 実は三沢→羽田と青森→羽田便の航空券はJALの独占のため、航空券は3万円以上に高止まりしています。東北新幹線全通に合わせて利益を度外視してたった18席のグランクラスを設定したJR東日本の狙いは明らかに航空会社との競争にあります。きっとJALもなりふり構わず値下げするでしょうから、住民にも航空運賃の値下げとして還元されるはずです。
 当日はカメラ小僧や報道陣をかき分けて乗り込み、元を取るために飲み放題で酩酊、多分、はやぶさグランクラス初の遺失物という不名誉な記録まで創ってしまいました。それもこれも電源があるのに、ワイアレスサービスが無かったためだと逆切れしても、もう遅い。反省のみです。
 さて、セリエAではインテルミラノの長友選手、とうとう得点しました。TVでは「優しいパス」と言っていましたが、あれは決して優しいパスではありません。ワントラップで反転、頭で長身の相手選手を押しのけ、ゴールネットに突き刺したシュートは見事でした。チームメイトが長友を祝福する姿を見て、彼には好かれる能力があると感じた皆さんも多かったのではないでしょうか?サッカーはパスが来て、なんぼのスポーツ。これからも得点チャンスはあるはずです。
 さて、バイオです。
 先週末の胃癌学会は勉強になりました。抗VEGF抗体「アバスチン」と化学療法の併用による胃がん治療のフェーズ3臨床試験「AVAGAST」の結果が、昨年のASCOで発表されました。残念ながらオーバーオールサバイバル(全生存期間)で優位差を示すことができなかったのですが、PFSなどでは優位差を示した結果となりました。
 この試験は全世界で行われたのですが、胃がんですからアジア(中でも日本)の臨床試験登録患者が多く、後で分析して見ると、他の地域に比べ、アジア、中でも日本で全生存期間の延長が対照群と比べて、あまり延長できなかったことが、全生存期間で優位差を示せなかった一つの原因でありました。
 日本胃癌学会での発表によれば、日本と遺伝的な差が殆どない韓国では欧州の結果に近く、日本だけが他の地域との差が生じていました。その最大の原因は、この臨床試験が終了後に患者さんに提供される二次治療の有無でした。日本は国民皆保険制度によって臨床試験に登録した患者さんのほとんどに二次治療がおこなわれていましたが、他の地域では二次治療を受けた患者は有為に少ない状況でした。この二次治療提供の差が、対照群の延命にも貢献し、臨床試験成績としては全生存期間で優位差を生まなかった原因である可能性が濃厚です。
 臨床試験結果が、その地域の医療システムによって左右されるということです。しかし、国民皆保険制度の国の方が臨床試験で優位性を示しがたいといのは絶対的な矛盾です。グローバル治験の広がりは、コスト削減だけでなく、こうした医療環境の矛盾を突くものであることも事実です。我が国で臨床試験が進まない理由の一つが、国民に対する優良な医療サービスの高いアクセスにもあるとするなら、日本での治験で優位性を示せる医薬品は全世界で通用すると、国を挙げてキャンペーンを展開する必要があるのではないでしょうか?
 日本の治験で統計的な優位性を示した日本ブランドの新薬に価値を付けることも、我が国の治験促進には不可欠であると、胃癌学会が開催された三沢の青森屋で痛感しました。ここには科学だけでは解決できない問題があります。
 何と、東京は春の雪になりました。今週もどうぞお元気で。
             Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2011-03-02   
BTJブログWmの憂鬱2011年03月02日、市場の医薬品が個の医療を無視している場合、個の医療によって新薬への置き換えを行う市場開発戦略も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7513/
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2011-02-28   
BTJブログWmの憂鬱2011年02月28日、イレッサ判決のもやもやは裁判制度の問題が背景に、無過失の副作用に関しては医薬品・医療機器副作用救済制度で厚く救済を
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7458/
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面接から5カ月の遅れがポスドクの雇用にも悪影響
最先端・次世代プログラムを特集
創刊5周年のBTJジャーナル2011年2月号に掲載
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 BTJジャーナル2011年2月号を先月末の2月25日に発行・公開しました。BTJジャーナルは、全文を無料でお読みいただけます。お楽しみください。
 最新号(2011年2月号)のダウンロードはこちらから。
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 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」は、最終選定の発表が遅れに遅れていた「最先端・次世代研究開発支援プログラム」が、2011年2月10日に正式決定した話題を特集しました。2013年度までに最大2億円配分される若手や女性の研究者は、グリーン・イノベーションが141人、ライフ・イノベーションが188人です。全都道府県を含み、女性は4分の1、39歳以下が37%を占めました。競争率1.5倍まで絞り込んで実施した2010年9月の面接実施から5カ月もかかりました。一覧表を8ページ掲載しています。
 ぜひBTJジャーナル2011年2月号のP.2~11の特集記事をご覧ください。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
BTJ編集長 河田孝雄
※2011年2月号(第62号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年2月号(第62号)
●CONTENTS
最先端・次世代プログラム ウナギ卵と論文 日本国際賞
P.2 アカデミア・トピックス
最先端・次世代プログラム
最終面接の5カ月後に決定
P.12 リポート
世界初の天然ウナギ卵
Nature姉妹誌に論文発表
P.16 キャリア
日本国際賞はIL6の岸本氏ら
P.17 BTJアカデミック・ランキング
最先端・次世代がTop4独占
P.21 奥付け