こんにちは。水曜のBTJ/HEADLINE/NEWSを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 ここ何回か、水曜のSOLUTIONSで取り上げてきた最先端・次世代研究開発支援プログラムについて、採択案がようやく決定しました。決定が大幅に遅れたことに加えて、「国民に説明する必要がある」として、1月末になって一部応募者に研究内容を分かりやすく記述した追加書類の提出を求めるという異例の措置が取られ、複数の学会から批判の声が挙がっていました。採択された研究者らは、何とか年度内に研究がスタートできるというところでしょうか。国民の税金が基になっているだけに、採択に慎重になるのは分からないではないですが、一方で研究者にとってはタイミングや時間も重要な要素です。研究者が早く研究に着手できるようにサポートすることも、行政にとっては課題の1つと認識していただきたいものです。
内閣府、最先端・次世代プログラムの採択案を決定、全都道府県含み女性は4分の1
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6846/
 今週の月曜、東京女子医科大学で開催された再生医療本格化のための最先端技術融合拠点の外部有識者諮問委員会に参加してきました。文部科学省科学技術振興調整費によって行われている女子医大の岡野光夫教授を中心とする再生医療プロジェクトの進捗状況をお聞きするものです(下は昨年と一昨年の委員会の記事です。今年はコンフィデンシャルな部分が多かったので記事にはしていません)。
女子医大、歯根膜細胞シートによる歯周病再生医療で臨床研究開始へ、10年後に目指すのは心臓などの臓器再生
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9341/
東京女子医大、細胞シートを利用した臨床応用の次のターゲットは歯根膜と肺
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3022/
 岡野教授の「温度応答性培養基材」を利用した再生医療は、ベンチャーのセルシードがフランスでの治験を終了し、実用化の一歩手前まで来ていることが知られていますが、この細胞シートを利用した再生医療が次のステージに差し掛かりつつあることを実感しました。これまで、細胞シートを利用した再生医療は、傷付いた角膜上皮の代替や、内視鏡手術で食道の粘膜がんを切除したあとの狭窄を抑えるためなど、“覆う”“保護する”といった物理的機能の提供が中心だったといえそうです(心筋シートは少し違いますが)。
 これに対して、次の臨床研究のテーマの中に、「肝臓細胞シート」「膵島細胞シート」など、細胞からの生理活性たんぱく質の分泌という生理学的機能の提供に焦点を当てたものが挙げられています。血液凝固因子を産生する肝臓細胞や、インスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島細胞をシート状にして、皮下に埋めて血友病や1型糖尿病の治療に利用しようというコンセプトで、女子医大の大橋一夫特任准教授が研究をされています。細胞シートをどうやって作成するか、たんぱく質の発現量をどのようにコントロールするかなど、ハードルは低くはありませんが、“第二世代の細胞シート再生医療”として期待がかかります。
 岡野教授らの研究グループでは、さらにその先に、細胞シートを血管などを織り込みながら重ね合わせて立体構造の臓器を作り出すことを目指して研究を進めています。日立製作所やオリンパス、大日本印刷などの企業がこれに参画し、各企業の基盤技術を持ち寄って研究開発を支援すると共に、技術が普及する段階で不可欠となる医療機器、細胞培養機器などの開発を進めています。さらにこの研究グループは、世界各地の臨床研究グループなどとネットワークで結びつき、臨床研究を進められる体制を構築している点もユニークです。まさに、細胞シート再生医療の梁山泊さながらです。
 もちろん、現実的なことを言い出せば、自家細胞による再生医療にはビジネスモデルの課題があり、それを克服しなければ全世界的に技術を普及させるのは難しいかもしれません。しかし、関係者が知恵と技術を持ち寄れば、克服する道が見えてこないとは限りません。オープンイノベーションや、医工連携、産学官連携と、連携の必要性は声高に叫ばれていますが、表面的な連携ではなく、まさに技術や知恵を融合し合うような取り組みが、国内に多数出てきてもいいのではないでしょうか。続く梁山泊的な拠点の登場に期待しています。
 先週開催された日本公定書協会のワクチンのセミナーの話もしたかったのですが、時間がなくなってしまったので本日はこれで失礼します。ワクチンの話はまた改めていたします。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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2011年は節目の年、その意味合いや背景が浮き彫りに
バイオ識者の2011年新春展望を掲載
「BTJジャーナル」2011年1月号を発行・公開
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 BTJジャーナル2011年1月号を先月末に発行・公開しました。全文を無料でお読みいただけます。お楽しみください。
 最新号(2011年1月号)のダウンロードはこちらから。
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 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」は今号では、2010年末に寄稿いただいたバイオ識者の「2011年新春展望」の一部を掲載しました。27人からお寄せいただいた中から、特に読者からのアクセス数が多く、かつアカデミアと関係が深い方々6人の寄稿文を掲載させていただきました。2011年は節目の年といわれますが、バイオとの関連でその意味合いや背景が浮き彫りになったといえそうです。2011年1月14日に都内で開催され、560人が集まったバイオ関連団体合同賀詞交歓会の写真も掲載しました。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2011年1月号(第61号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2011年1月号(第61号)
●CONTENTS
新春展望 独Berlinサミット 上原賞 安藤百福賞
P.2 アカデミア・トピックス
バイオ識者の新春展望
バイオ賀詞交歓会に560人
P.7 リポート
BerlinでWorld Health Summit
京大や順天堂大の主催シンポも
P.10 キャリア
上原賞と安藤百福賞
P.12 BTJアカデミック・ランキング
2010年間アクセスTop50も発表
P.14 奥付け