2011年元旦
理化学研究所 (兼) 産総研、JST
東京医科歯科大、慶應義塾大
八尾 徹 yao@riken.jp
「理研サイネス八尾レポート」              
皆様 新年明けましておめでとうございます。
 
 早くも21世紀の第2の10年期(The 2nd Decade)に入りました。これからの10年どのような展開がなされるでしょうか?どのように切り拓いて行くべきでしょうか?すでに始まっているいくつもの動きが大きく発展して行くでしょうし、また、全く新しい発見や技術や動きが現れるでしょう。 皆様は次の10年をどのように予測されますか? 大きな夢を描いてみることが楽しいですね。
 そのためにも、これまでの10年間(The 1st Decade)と、さらにその前をふり返ってみましょう。
私自身、この10年あまり、ゲノム解読から始まった大きな流れの中に身をおき、いくつものエキサイティングなことを身近に経験しながら、これまでの発展を驚きをもってふり返っているところです。たいへんな10年であったというのが実感です。国際的な流れをふり返える前に、まず身近なところで経験した10周年を2つご紹介します。
理研 横浜研究所は、2000年10月にゲノム科学総合研究センター(GSC) の各グループが集結して開所しました。2010年11月にその開所10周年記念講演会をしました。この間に後からできた各センターや各基盤研究領域や基盤情報部門などを含めて10年間の世界的な研究成果と今後の展望が紹介されました(「理研横浜イベント」「理研GSC」参照)。これからの10年、「生命と環境」をキーワードとして展開することが示されました。
慶應義塾大学の先端生命科学研究所(IAB)(鶴岡)は、2001年4月にITと実験を統合したシステムバイオロジー研究機関として発足し、2010年9月に設立10周年記念シンポジウムを開きました。 この間、メタボローム解析技術ほか数々の世界的な研究成果を挙げており、特に若手の活躍と地域密着性は大きな特徴でしょう(「慶應 IAB」参照)。ここから海外に雄飛している若手も多く、またベンチャー2社も活躍中です。
今後の発展が期待されます。
さて以下に、これまでの国際的な流れをいくつかふり返ってみます。
1.ヒトゲノム解読後10年
 2000年6月、ヒトゲノム解読(概要配列読みとり)完了がクリントン・ブレア同席の下、F.コリンズと C.べンターから発表され、更に2003年4月精密配列解読完了が宣言されました。1990年から国際プロジェクトとして13年かけ、数千人・数千億円かけ、ヒト一人分のゲノムDNA配列30億文字が読みとられたのです。このことは正に科学史上を飾る偉業でした。
そして2010年4月に Nature 誌が “The Human Genome at Ten” という特集をしました。ここではゲノム構造の複雑性が分かってきたことが強調されています。また、遺伝子制御ネットワークの重要性が浮かび上がってきています。
この2点について日本が顕著な貢献をして来たことは特筆すべきことです。一つは意外に少ない遺伝子数(当初2000年以前約10万種?ヒトゲノム解読後約23000種)のことに世界が驚いていたときに、理研を中心とするFANTOM (哺乳類ゲノム遺伝子エンサイクロペディア) グループが、多数 (25000以上) の Non-coding RNA の存在を証明しました (Nature 2006)。正に 「RNA新大陸の発見」の快挙でした。その後のRNA研究の興隆のきっかけとなりました。尚、FANTOMデータベースが、京都大山中教授グループによるiPS細胞創製において、初期段階で挿入遺伝子候補の絞り込みに役立ったということは嬉しいことでした。
もう一つは、ヒトゲノム解読直後2003年10月に米国を中心にENCODE(ヒトゲノム配列の機能同定)プロジェクトがスタートしましたが、日本は別に2004年4月にGNP (ゲノムネットワークプロジェクト)をスタートさせ、転写制御ネットワーク解析の成果を挙げました(Nature Genetics 2009、Cell 2010)。
この他に、ヒトゲノム関連では国際的に、1000人ゲノム、個人ゲノム、体内細菌群メタゲノム、がんゲノム、GWAS-ゲノムと疾患, 日本人ゲノム等々、次々と解読が進んでいます。10年前には想像もつかない規模と広がりになってきました。
2.各種ゲノム解読、オミックス研究-バイオインフォマティクス全盛15年 1995年7月米国TIGR(C.ベンター)グループによって史上はじめての生物ゲノム-インフルエンザ菌ゲノム1.8Mbp-解読の結果が発表されました(Science 1995) 。その直後に欧州EBI(C.サンダー)グループにがその配列データの中から多数の新規遺伝子を検出したと発表し、バイオインフォマティクスの威力が認識され、”Bioinformatics comes of Age” と宣言されました(Nature 1995)。その後の世界のバイオインフォマティクス全盛は皆様ご存知の通りです。バイオインフォマティクスは正にライフサイエンス研究にとって必須のものとなりました。
その後、ゲノム解読の対象は、微生物・植物・モデル動物・高等生物へと広がり、これまでに解読された微生物は1200種以上、真核生物は約150種に上っております。そして現在ゲノム解読進行中の真核生物は、動物・植物を合わせ1500種を超えます。
更に、この10年あまりのオミックス研究の進展も目を見張るものがあります。マイクロアレイ・DNAチップ、マススペクトロメトリーその他の測定機器を用いた遺伝子発現解析、タンパク質発現解析、相互作用解析、メタボローム解析など、いわゆるオミックスデータが急増しました。これらは初期表現型データとして、疾病や植物成長など最終表現型の重要な指標となるため産学含めて非常に活発な研究が進んできました。
これら多様なデータの解析にもバイオインフォマティクスが活躍し、それぞれに向けたソフトウエアが開発されてきました。またこれらのデータベースが多く作られて来ました。これらのデータベース及びソフトウエアについて NAR誌が毎年特集号 (データベース1月号、ソフトウエア7月号) を出してその信頼性保証・権威付けの役割を担うようになったこともこの10年間の進歩の一つと言えましょう。
3.次世代超高速シーケンサーの発達-20年以上の歴史
 近年 (2007年頃から)、超高速の次世代シーケンサーが次々と登場し、ゲノム解読の世界だけでなく、遺伝子発現解析やエピジェネティクスや相互作用解析に大きな影響を与えています(岩波「科学」2009年2月号)。この勢いは止まるところを知らず、世界のシーケンシングセンターの在り方にも急変をもたらしています。特に中国が最新機種をなんと150台以上も設置して多様な生物種のゲノム解読を引きうけると表明しています。一方では、コスト低減による個人ゲノムの解読が急速に進む状況が近づいています。ヒトゲノムを1000ドルで読みとれるシーケンサーを開発しようという目標に向かって猛烈な開発競争が続いています。まだまだ目が離せません。
 
翻ってみれば、ヒトゲノム・遺伝子解読の急進展は、1998年頃のマルチキャピラリーシーケンサー(ABI3700, 理研RISA)の出現によるものでありましたが、更にその元をたどれば、日本において1980年代初頭に和田昭允先生によって提唱されたDNA自動読みとり機械の構想が起点となっています。和田グループはそのプロトタイプ開発に成功し、1987年にその成果披露の国際会議を岡山県で開かきました。この会議がその直後の米国のヒトゲノム計画を刺激し、またそのとき集まったメンバーの多くがその後のシーケンサー開発に関わったのです。ここにも日本の先駆性が見えます。
 
4.蛋白工学研究所 25年 ?タンパク質解析への影響
 1986年に設立された蛋白工学研究所25周年を今年11月に祝うことになりました。当時日本の基礎研究ただ乗り論のバッシングをかわそうと通産省と化学会社が共同で基礎・基盤研究としての蛋白工学研究所を大阪に設立しました。欧州・米国においても同様な研究所を立ち上げ始めましたが、日本が最も理想的な形でスタートすることができました。画期的なことでした。
この蛋白工学研究所は、タンパク質の構造解析・機能解析・情報解析の3部門を合わせ持って人工設計を目指すという、正に異分野融合研究・バイオ-IT研究の先鞭を行く研究所となり、世界から注目されました。その後の生物工学研究所への展開も合わせて、20年以上続きました。ここからその後のタンパク質構造解析・理論計算の興隆を支える多くの人材を輩出しています。
その後始まったタンパク3000プロジェクトやターゲットタンパクプロッジェクト、更には次世代スーパーコンピュータ生命体統合シミュレ-タプロジェクトなどに多くのメンバーがかかわっています。更に、今年から立ち上がる「生命動態システム科学」プロジェクトの主要メンバーが、25年前に「蛋白工学研究所」として建てられた研究棟を使うことになったというのも嬉しいニュースの一つです。
5.日本生物物理学会 50年 -先端生命計測への影響
2010年12月、東京で日本生物物理学会発足50周年記念講演会が開かれました。1960年に小谷正雄、大沢文夫、和田昭允先生等の熱い思いで発足したこの学会は、国際的にも先駆的な存在でその影響力は広範でしたが、特に先端生命計測の分野では多くの人材を輩出してきました。日本のこの分野の強さを支えてきた学会と言えましょう。
以上、この分野の最近の動きをふり返って見ると、そこには長い積み重ねがあること、更には日本が世界に先駆的な動きをしてきたことがいくつもあることを知ります。日本の強さを引き続き世界に発信して行きたいものです。
さて次は、システムバイオロジー及び合成バイオロジーのことを述べましょう。
6.システムバイオロジー 10年
昨年、”A Decade of Systems Biology” という総説が出ました。 UC San Diego の Trey Ideker 教授がシステムバイオロジーによるバイオマーカー同定、創薬、幹細胞研究などの進歩を解説しています(Annual Rev.Cell Dev.Biol.2010 26, 721-744)。ただ、筆者自身が断っているように、この解説は分野をしぼっています。システムバイオロジーはこの10年間に非常に広範囲に影響を与えてきたことは確かです。
システムバイオロジーの国際的な発展については、このシリーズで何度もご紹介して参りましたが、かいつまんでその流れを申し上げますと次のようになるでしょう。
 2000年は、システムバイオロジーにとって記念すべき年でした。次の3つの動きが表面化しました。2000年に、
1. 米国NIHがシステムバイオロジーの研究グラントを継続的に出し始めた。
2. シアトルにシステムバイオロジー研究所I SBが設立された。
3. 東京で第1回システムバイオロジー国際会議 ICSB が開かれた。
これらをキッカケとして、当初米国を中心に、そのあと欧州でシステムバイオロジー研究が急速に活発化しました。各国(EUを含む)でシステムバイオロジーのプロジェクトが始まり、センターが設立され、多くの大学に学科が新設されました。多数の学会が開かれ、いくつかの専門雑誌ができ、論文数が急増してきました。(「理研八尾レポート-」KAST講座2010資料参照)
そして、ここ数年前から第2ステップとも言える変化が出てきました。すなわち、各国ナショプロの第2期突入(ドイツHepatoSys、スイス SystemsX など)、各国システムバイオロジーナショナルセンターの拡充(米13、英6、独4)、センター新設(アイルランド、スペイン、ルクセンブルグなど)、更には分野別システムバイオロジーの展開(がん、心臓病、免疫・アレルギー、糖尿病、感染症ほか)が始まっています。特にがんシステムバイオロジーについては、米国NCI/NIH が非常に力を入れ、これまでに米国内9ヵ所にがんシステムバイオロジーセンターを設立した上、2008年からEU、 ドイツ、日本に共同研究を積極的に呼びかけています。
これらの動きの背景には、システムバイオロジーの大きな成果の実績があります。例えば、ドイツの肝臓細胞システムバイオロジーHepatoSys では、最近、肝臓細胞の薬物代謝機能の解明及び細胞再生メカニズムの解明の成果を挙げています。このような成果の発表は、米国や英国のプロジェクトやセンターからも、一流誌に次々となされており、影響の大きさが明らかになってきました。もう一つは、これらの研究過程で新しい人材―バイオとITの両方をこなす研究者が育ってきていることが見逃せません。
さらに最近の特徴は、解析対象が植物その他も含めてきわめて広範になってきていることと、分子レベルから細胞レベルへと移ってきていること、更には、生命システムの理解への理論的なアプローチが出てきていることです。システムの特性(ロバストネス)やネットワーク進化などの論文が目立ってきました。
色々な点で、この10年間の発展は目覚ましいものがあります。
 日本の動き
一方日本はどうでしょうか? 実は、日本は2000年以前からシステムバイオロジーについては世界に先駆的な動きを始めていたのです。1995年頃から、慶應義塾大SFCの冨田教授はコンピュータによる細胞シミュレーションモデルE-Cell の開発を始めており、京都大化学研究所の金久教授は代謝パスウエイネットワークデータベースの構築を始めており、ソニーの北野博士は、1998年からERATO北野共生システムプロジェクトを始めていました。これらはいずれも世界的な仕事としてその後の発展に繋がっています。
冨田グループは上述のように鶴岡IABへ展開して世界的なメタボロミクスセンターをはじめとして目覚ましい発展を遂げています。金久グループのKEGGは、システムバイオロジー研究の最初の段階でネットワーク解析に必須のデータベースとして世界中から使われています。北野グループは、システムバイオロジーのモデル作成言語の国際的開発の中心的役割を果たして来ただけでなく、国際会議 ICSB の継続的な開催に貢献してきました。また、生命システムの「ロバストネス」は、北野提唱の理論として広く受け入れられ始めています。
この10年間、日本国内では欧米のような国家レベルのシステムバイオロジーはなく、2003年にスタートした5大学による「細胞・生体機能シミュレーションソフトの開発」プロジェクト及び2004年にスタートした「ゲノムネットワーク」プロジェクトくらいが目ぼしいものでした。
しかし、最近2~3年で、日本にも大きな変化が現れつつあります。その一つは次世代スーパーコンピュータプロジェクトの中で「生命体統合シミュレータ」開発が進んでいることです。さらに近年次々と発足しているCOE (Center of Excellence) の内容をみるとシステムバイオロジー的なものが多くなってきました。また、ERATO, さきがけ、その他の研究グラントでも、システムバイオロジー的なものが増えています。(JST SPC 2010年12月八尾レポート参照)更に、本年からスタートする「生命動態システム科学」プロジェクトは、正に日本の得意とする先端生命計測技術を中軸において展開されようとしており、大いに期待しています。
7.合成バイオロジー
合成バイオロジーについては、2010年5月に大きなニュースがありました。C.Venter グループが人工設計・合成したゲノムを微生物に入れ増殖させることに成功したと発表しました。この技術は、完全に新規の微生物を創ったというものではなく、既存の微生物を入れ物として利用するものですが、その応用可能性は、従来の遺伝子組み換え技術とは比べものにならない位、きわめて広いと思われます。
本発表があった翌日オバマ大統領は、バイオ倫理委員会に対し、この技術の有用性と危険性を半年以内に検討するように命じました。この委員会は13人(科学者、倫理学者、社会学者)で構成され3度にわたる公聴会(各分野専門家36名の意見聴取)を経て、12月17日に検討結果が公表されました。この技術の社会的有用性を実現するイノベーションを促進する方策と危険性・悪用に対する歯止めについて議論がまとめられ、さらに今後の継続的な検討の場が必要であるとしています。
ここにおいて 現NIH長官の F.Collins博士が、欧米に根強い宗教界と科学界の対立・無理解を解消しようとして数年前に著した「ゲノムと聖書」(Language of God) ?科学と宗教-の存在意義は重要であると考えます。
合成バイオロジーの技術や進め方については、このC.Venter グループ以外に世界には数多くのグループがあります。それらについては、既にいくつかご紹介しておりますので、ご参照ください。(理研サイネス八尾レポート->KAST講座2009資料、東京理科大講座2009-2010ほか)
合成バイオロジーについて、日本でもこれまでに多くの動きがありましたが(加速進化工学、セルファクトリー、蛋白工学ほか)、数年前から新しい動きとして、「細胞を創る研究会」の発足、国際ゲノムデザインコンテストiGEMへの参加、日本発ゲノコンの開始(2010年発足)、生命動態システム科学プロジェクト内に細胞創製グループ設置(2011年)など、今後活発化の兆しがあります。
合成バイオロジーの社会への応用については、ELSI (Ethical, Regal and Social Issues) グループの設置と広範な討議が必須です。ゲノム関連で昨年から ELSI グループが活躍し始めており、今後この領域の人材が多くなることを望みます
(今後の展望)
以上のような動きをベースに今後を予測すれば、下記のような項目が挙がってきます。
1.次世代シーケンサーのインパクトの更なる増大
2.個人ゲノムへの適用事例の増大
3.システムバイオロジーの更なる広範囲への浸透
4.細胞システムバイオロジーの拡大
5.合成バイオロジーの展開
これらは、既に動きが始まっていることですが、全く未知の現象の発見や新規の技術開発は予想ができないことです。上述のように、10年の間には今想像もできないことが、あるいは今想像できない規模のことが、起こるのではないでしょうか? 更には、生命システムに対する統一的な見方や理論で大きなブレークスルーがあるのではないか、あるいはあってほしいと願っています。
私は2009年に、ダーウイン「種の起源」出版150年を契機に下記の設問を立ててみて、色々な方々と話し合ってきました。
生命科学の分野で、「21世紀初頭に」、どういう新しい理論が生まれたでしょうか?
  「ダーウイン、メンデル、ワトソン・クリック、そして今?」 という設問です。
これまでをふり返って見れば半世紀毎に大きな理論が生まれてきたことになっています。
  ダーウイン  19年 「種の起源」の出版      論」  約150年前  
  メンデル    1900年 メンデルの法則の再発見  「遺伝学」  100年前
ワトソン・クリックス 1953年 「DNA二重らせん構造」の決定      
そのあと 「セントラルドグマ」  約 50年前 
このような偉大な業績に匹敵するものが、21世紀初頭に現れているのでしょうか?これから現れるのでしょうか?上述しました「ゲノム解読」「システムバイオロジー」あるいは「合成バイオロジー」はいずれも21世紀初頭の10年間に大きく浮上してきたものですが、ここに挙げた「理論」のようなものとは異なっているように思えて仕方がありません。
このような設問に皆様からコメントを頂ければ幸いです。
更に、これからの10年、どのような発展があるかを楽しみにしております。
以上、新年に甘えていろいろなことを書いてしまいましたがご容赦ください。
どうぞ皆様お元気で良い年をお過ごし下さい。
                     2011年元旦 八尾 徹       
                        yao@rikenn.jp        
追記ですが、私達のテニス同好会は、今年35周年を迎えます。1976年(昭和51年)に近所の数人で始めたテニスですが、現在も10名ほどで毎週1回2~3時間程度を続けています。健康を与えられ感謝しています。宮田満さんのテニスはパワーフルでとてもついて行けないと想像しますが、一度ご指導頂きたいと思っています。
尚、「理研サイネス八尾レポート」は、2010年4月から私の国際動向報告・総説・講義講演資料などの登録・公開を進めているもので、現在約70編(重複あり)が載っています。今後も逐次追加して行きますので、時々アクセスしてみて下さい。
ご質問は、yao@riken.jp までどうぞ。
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「近代科学が見えなくなってしまった現実の1つは、生命現象そのもの」」
岩波新書 新赤203
中村雄二郎著「臨床の知とは何か」を読みました。
全文無料公開のBTJジャーナルもお楽しみください。
昨年末に発行・公開したBTJジャーナル2010年12月号では、学術論文数推移の決定版
グラフ7点を掲載しました。ぜひご覧ください。
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けのスペシャルサービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日のバイオテクノロジージャパン(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今日の最初の話題は、哲学者の中村雄二郎さんの著書です。岩波新書で発行されているこの著書は、第1刷発行が19年前(1992年1月21日)です。何をいまさらとメール読者の皆様に笑われてしまいそうですが(購入した本は、2010年12月6日 第27刷発行です)、直近の日曜日の学会の講演会を聞いてすぐに読んでみました。
 「近代科学が無視し、軽視し、果ては見えなくなってしまった<現実>あるいはリアリティとはいったいなんであろうか。その1つは<生命現象>そのものであり、もう1つは対象との<関係の相互性>(あるいは相手との交流である)」という記載を、「序文─なぜ<臨床の知>なのか」の4ページ目に見つけました。
 この書籍を読むきっかけは、1月16日に横浜パシフィコで開催された日本病態栄養学会年次学術集会の特別企画2でした。「食事療法の広がりを阻むもの─慢性疾患医療の現状の問題─」と題した1時間余りにわたる講演を、昭和大学藤が丘病院の出浦照國氏がなさいました。「哲学を分かりやすく記載しているのがすごい」と出浦さんは中村さんの著書を紹介しました。
 「治療の失敗を患者のせいにするな」「おちおち死んではいられない」と始めた72歳の出浦さんの講演は、たいへんインパクトの大きいものでした。大学を65歳で定年退官なされましたが、現在もバリバリの臨床医師です。診察なさる患者は1日当たり5人ほどとのことで、来週の診療に備え、毎日5時間、5日間で25時間をかけて診察の準備をして、患者やその家族の病歴などを頭脳にインプットしておくのだそうです。
 診療のガイドラインやマニュアルは確かに必要だけど、その通りにやらないといけないというふうになっていまっている今の風潮は、困ったことだと強調なさいました。ガイドライン通りかどうかで判決が下るようになってきたことが、「散漫で杜撰な医療」につながってしまっているとお話しでした。「臨床医学を軽視する学会の風潮」を批判なさってました。
 「既成の理論と学問が現場や現実からずれている」「食事療法にはRCT(無作為割付比較対照試験)は不可能だし、やってはいけない」などと話した出浦さんの講演は、ニーチェやセザンヌ、カラヤン、ドストエフスキーらの著名人が続々と登場しました。その中で中村さんの著書も紹介なさっていたので、当日のうちに岩波新書を手に取ったのです。それで「生命現象」というキーワードが最初に出てきてびっくりしました。「臨床の知」という書名からは予想できなかったのです。ともかくも、日ごろの取材に役立てて参ります。
 さて、次の話題として、
BTJ/日経バイオテク・オンライン
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/index.jsp
で昨日から新たにお届けしている新コーナーを紹介させていただきます。
【アカデミアSelect】というコーナーです。
 社会との接点にも関心の高いアカデミアの研究者の方々に、注目される新たな論文発表と、その成果の位置づけについて解説していただくものです。
 まずは1本、下記の記事を掲載しました。
【アカデミアSelect】米Duke University松波宏明准教授ら、アセチルコリン受容体は嗅覚受容体のシグナル伝達の調整因子として作用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6327/
※この記事の第一パラグラフまでを、以下に示します。
【アカデミアSelect】米Duke University松波宏明准教授ら、アセチルコリン受容体は嗅覚受容体のシグナル伝達の調整因子として作用
 米Duke UniversityのMedical Centerの松波宏明准教授らは、嗅覚神経細胞に発現するアセチルコリン受容体が嗅覚受容体のシグナル伝達の調整因子として作用していることを2011年1月、Science Signaling誌で発表した。生物のもつ高感度な嗅覚は、単純なレセプターとリガンドの結合だけでは解明できない、非常に複雑なシステムによって構築されていることが分かってきた。嗅覚受容体をはじめとする嗅覚機構全体の解明が今後、ますます期待される(関連記事1、関連記事2)。
※編集部注)この記事は、東京農工大学工学部生命工学科生体分子プロテオーム分野の養王田正文教授らの研究室にてセレクトされた論文の解説です。写真は国立大学法人東京農工大学の本部です。
 アカデミアの最先端の研究者の皆さんが、どのようなテーマに興味を持って、どのような論文に注目しているかを、紹介してまいります。これから充実して参ります。第2パラグラフ以降は有料記事とさせていただきますが、ぜひお楽しみください。
 メール原稿の締切時間が迫ってきました。
 最後に、ここ2週間(2011年1月7日~21日)にとりまとめた記事8本の見出しリストに一言ずつ、■ポイント■をつけたものを紹介します。
※直近2週間のBTJ/日経バイオテクオンラインの記事
第15回安藤百福賞の表彰式は3月9日、副賞1000万円の大賞は完全養殖クロマグロの村田修・近大所長/教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6291/
■ポイント■ビジネスチャンスが拡大している水産・養殖分野は、日本が強みをもっている分野。今後ますます注目です■
旭松食品が納豆事業をミツカンへ譲渡、旭松が発売中止した初の納豆菌トクホ納豆にも再注目
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6290/
■1パック当たり20円や30円で購入できる納豆は、健康機能も優れものです■
マヨネーズ市場で健康訴求タイプが200億円規模に、シェア7割超のキユーピーは酸素吸収ボトルをトクホ以外の健康訴求全商品に採用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6288/
■キユーピーが健康訴求タイプで攻勢をかけています■
DNAアレイで品種改良を効率化する遺伝情報解析技術をトヨタが開発、九州沖縄農研と精度5倍のサトウキビ遺伝子地図を作成
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6252/
■フランスなどの先進グループが1000未満止まりだったサトウキビのDNAマーカーを、一気に4000以上に増やすことに成功しました■
京大白眉プロジェクトの齊藤博英・特定准教授らが今週、Nature姉妹誌に論文2報を相次ぎ発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6251/
■京大学長肝入りの白眉プロジェクトは、文系も理系も含んでいて、大注目です■
写真更新、卵黄レシチンは胆汁分泌抑制で弱くなった脂質吸収力を高める、キユーピーが病態栄養学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6156/
■レシチンの健康機能にも注目です■
2010年農林水産10大トピックス、1位は08年にも選定のウナギ、ゲノムが2件トップ10入り
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6065/
■ウナギの完全養殖も、社会の大きな注目を浴びています■
エーザイの通信販売ポリフェノールサプリが人気、同社初の栄養機能食品
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6063/
■もともとビタミンE大手のエーザイで、栄養機能食品はこれが初めてとうかがい意外でした■
 もう1つ最後に、先月末に発行・公開したBTJジャーナル2010年12月号を改めて紹介します。こちらはBTJ/日経バイオテク・オンラインのアカデミア関連記事で読者の皆さんの注目度が高かった記事などを、無料で全文ご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
BTJジャーナル2010年12月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1012
BTJジャーナル 2010年12月号(第60号)
●CONTENTS
学術論文数の国内外比較 BMB2010 ベルツ賞
P.2 アカデミア・トピックス
文部科学省NISTEPが
国内外の論文数推移を比較
P.6 リポート
神戸で4日間開催のBMB2010
来年は京都と横浜で別個開催
P.11 キャリア
ベルツ賞のテーマは心不全
P.12 BTJアカデミック・ランキング
多比良氏の控訴棄却がトップ