こんにちは。水曜のBTJ/HEADLINE/NEWSを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 まずは下の記事をお読みください。1月18日に有料会員向けの記事として公開しましたが、読者の方からご意見をいただき、今回特別に無料公開の記事とさせていただきます。
若手期待の最先端・次世代研究開発支援プログラム、採択者の年度内決定に暗雲、和田政務官が申請書の追加提出を示唆
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6217/
 読者からのご意見は、「日本の科学研究の推進に必要な研究費の審査システムがたった一人の代議士のために崩れてしまう可能性を示唆している重要なニュースなので、広く配信して欲しい」というものです。
 記事から推測するに、和田政務官の考えは、「採択を、専門家の判断のみに委ねるのではなく、国民の意見を広く聞いて判断すべき」というものなのでしょうか。ただ、一方で長期間その分野に関わっていく専門家に比べて、国民の意見は刹那的で、無責任なものとなりかねません。また、応募段階で示されていた審査手順が後から変更されるのもどうかと思います。何よりも、こうした手順の見直しばかりで、予算執行がずるずると遅延していくことに危機感を感じます。科学技術関連施策の意思決定を巡っては、試行錯誤のさなかにあるということなのかもしれませんが、日本の科学技術が競争力を持つためにはスピードも重要な要素であることを認識すべきです。
 ちょうど、編集部内でも重要な記事はたまに無料公開してもいいのではないかという議論が出ていたところで(お正月の新春展望なども無料で公開していますが)、今回この記事を特別に無料公開させていただくことにしました。科学技術関連施策のあり方について、議論するきっかけとしていただければと思います。
 さて、昨日、武田薬品工業と京都大学は、協働によるオープンイノベーション創薬拠点「中枢神経系制御薬の基礎・臨床研究プロジェクト」(TKプロジェクト)を開始すると発表しました。京都大学は、産官学連携によるプロジェクトを効率的に運営する目的で、日本で初めての対等な協力関係に基づくオープンイノベーションに取り組む場として「メディカルイノベーションセンター」を医学研究科内に立ち上げていて、そこで、中枢神経系制御に基づく肥満症治療薬および統合失調症治療薬の創製を目的とする5年間の研究開発を行うということです。京大は、以前からキヤノンと、次世代の医用イメージング装置の開発を目指すCKプロジェクトを進めていましたが、今回のTKプロジェクトはその創薬版とでも位置付けられるのでしょうか(下はCKプロジェクトの記事です)。
京大、西本教授、キヤノンとのCKプロジェクトを紹介、OCT、超音波、低磁場MRI、分子プローブの4つに焦点
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/5778/
 国内のある製薬企業のライセンス担当者が、「武田薬品と同じことをやっても規模で負けるだけなので、違うことをやらなければ」と言っているのを聞いたことがあります。その武田薬品が、日本国内でのオープンイノベーションに本腰を入れてきた格好です。他社はもっとユニークな形のオープンイノベーションを考えなければならないかもしれません。
 いずれにせよ、ベンチャーや大学などの研究者との連携というと、日本の製薬企業は海外にばかり目を向けて国内のシーズには目もくれないといわれてきましたが、その風向きがこのところ変わってきたと感じます。日本の大手、中堅製薬企業がようやくオープンイノベーションに本格的に取り組む必要を感じ始め、さまざまなアクションを打ち出そうとしています。企業活動のグローバル化に伴い、研究開発の拠点を日本から海外にシフトする流れが一方ではありますが、海外企業と競り合って海外のシーズを手に入れるのに比べて、国内のシーズ獲得では日本企業が地の利を行かせる可能性があります。
 バイオベンチャーに対する投資家の見方も少し変化してきた印象を受けます。実際、上場しているバイオベンチャーの株価は、12月後半ぐらいから総じて上昇傾向にあります。2011年度の政府予算における科学研究費補助金(科研費)の3割増はちょっとバブルっぽい感じがしないでもありませんが、菅首相は恐らく科学技術に投資をしなければ将来がないと認識したのでしょう。そうした文脈の中で、バイオ産業に対する国民の期待が徐々に回復しつつあるのだとすればいい話です。
 とはいえ、国内のベンチャーキャピタルは完全に元気を失ってしまっており、ベンチャーキャピタルの資金がバイオには戻って来るまでには恐らく時間がかかることでしょう。それだけに、製薬企業を中心とする事業会社がそれに代わって基礎に近いシーズに資金を供給する役割を担うことが期待されています。将来の事業の種を育てるために、アカデミアの基礎的な研究に企業が投資する──そんなオープンイノベーションが日本に定着することを強く望んでいます。
 本日はこのあたりで失礼します。
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
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学術論文数の推移に決定版、文科省科学技術政策研究所が分析
「基礎生命科学」の論文数国別シェア推移と日本国内の機関種類別の論文シェア
推移のグラフも、「BTJジャーナル」2010年12月号に掲載
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年12月号を昨年末(12月24日)に発行・公開しました。
 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」では、国内外の学術論文数の推移に決定版が登場したことを特集しました。文部科学省の科学技術政策研究所(NISTEP)が2010年12月16日に発表した「科学研究のベンチマーキング2010─論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況─」がそれです。日本が産出する論文数やTop10%論文数は増加していますが、シェアは2000年代に入り低下していること、特に国立大学の失速がTop10%論文数の伸び悩みを招いていることが分かりました。
中でも臨床医学系の低迷が目立ちました。
BTJジャーナル2010年12月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1012
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。BTJジャーナル2010年12月号の記事は以下の記事の一部を元にまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
文科省NISTEPが学術論文分析で科学研究をベンチマーキング、日本は論文数増大もシェア低下
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5769/
文科省NISTEPの科学研究ベンチマーキング、8分野別分析で臨床医学は国立大学の失速分を私立大学がカバー、臨床医学系ジャーナルは中国が日本を上回る
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5798/
大学の研究開発費の政府負担比率が日本は低い、文科省NISTEPが「科学技術指標2010」で分析
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3224/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年12月号(第60号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2010年12月号(第60号)
●CONTENTS
学術論文数の国内外比較 BMB2010 ベルツ賞
P.2 アカデミア・トピックス
文部科学省NISTEPが
国内外の論文数推移を比較
P.6 リポート
神戸で4日間開催のBMB2010
来年は京都と横浜で別個開催
P.11 キャリア
ベルツ賞のテーマは心不全
P.12 BTJアカデミック・ランキング
多比良氏の控訴棄却がトップ
P.13 奥付け