こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。2011年最初の登場ですが、今年もよろしくお願いいたします。
 新年早々、バイオ業界にとって大きな影響を持ちそうな動きがありました。1月7日、内閣官房の中に、医療イノベーション推進室が創設されました。
医療イノベーション推進室を創設、日本発の医薬品・医療機器開発を支援
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6066/
 推進室の初代室長には中村祐輔・東大教授が就き、再生医療の代表的研究者である岡野光夫・東京女子医大教授と、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一・島津製作所フェローが室長代行に就任。そのほかにも多くの著名研究者や、武田薬品、エーザイ、富士フイルムなどの大企業が協力する体制になっています。
 推進室については、昨年秋に始まった検討段階から継続して取材してきました。その時から感じている疑問が、中村室長は事務方らの話を聞いてもなかなか解けません。それは、推進室で決まったことがストレートに実際の政策に反映されるのかという点です。
 最終的に推進室が目指すのは、米国のNIHのようにライフサイエンス分野の研究開発に関わる政策・予算を一元的に担うことです。ただし、当初は、現在は各省庁にまたがっている政策を横断的に見直し、効率化、重点化を図るために提言するということになりそうです。
 しかし、推進室が目指す方向性は、09年から総合科学技術会議(CSTP)が始めたアクション・プランのライフ・イノベーションWGが持つ機能とほぼ同じです。推進室の最初の提言は12年度概算要求の前に出てくる予定で、CSTPも同じタイミングで提言を出します。
 担当分野や機能が重複している点や、CSTPとの調整が必要な点は、中村室長や事務方も認めています。昨日は、科学技術政策担当の和田隆志・内閣府政務官の記者会見がありました。この会見では推進室に関する質問も出たのですが、両組織の位置づけや今後の連携について、和田政務官にはまだ確たる考えがないようでした。
 推進室は規制改革にも取り組むとしています。この点についても、内閣府の中にある行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」のライフ・イノベーションWG との調整が必要となってくるでしょう。
 推進室にはいわゆる御用学者ではなく、多少ラディカルでも傾聴すべき意見をこれまでに発信してきた研究者が多く集まっているようです。それだけに、せっかくの提言が、調整によりなまくらになってしまう懸念を捨て切れません。
 科学技術関連政策の省庁横断的な試みはこれまで何度もありましたが、いずれも中途半端か実効性のない形で終わってきました。そうこうするうちに、特にライフサイエンス分野で日本の研究開発レベルが地盤沈下を起こしていることは、だれもが感じているでしょう。今回こそは、その流れが逆転するきっかけになることを期待したいのですが。
                日経バイオテク副編集長 河野修己