こんにちは。水曜のBTJ/HEADLINE/NEWSを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 例年1月は正月が開けたと思ったらすぐに三連休があってなかなかエンジンがかからないのですが、今年はロケットスタートで、年初からハイテンションで仕事をしています。そんな中、先週金曜の午後は時間が取れたので、お台場で開催されたグライコバイオロジクスの講演を聞きにいってきました。
 以前から、糖鎖の研究は日本のお家芸だという話は聞いていたのですが、数年前、バイオシミラー(バイオ後続品)のガイドラインの整備が進み始めた頃から、ちょっと力を入れて取材しています。糖たんぱく質性の医薬品においては、糖鎖の構造が活性や体内動態に影響を及ぼすことが知られていおり、先行品と同じ活性や体内動態を示すを持つバイオシミラーなどの開発では、糖鎖が重要になると思ったからです。
 実際、バイオシミラーの研究の中には、哺乳動物細胞を用いて遺伝子組み換え生産するのに代えて、ヒトと同じ糖鎖が付くように遺伝子を改変した酵母を用いて糖たんぱく質を生産するというものがあります。哺乳動物よりも酵母の方が培養しやすいため、安価に生産できますが、普通の酵母で糖たんぱく質を生産すると酵母型の糖鎖がたんぱく質に付いて、哺乳動物細胞で生産した場合と同様の活性が得られないからです。こうした研究が実を結べば、まさに安価なバイオシミラーが登場してくることでしょう。また、化学合成したたんぱく質にヒト型の糖鎖を付けて、人工的にバイオ医薬品を製造しようというコンセプトの研究も進められています。さらには、糖鎖構造を改変して、先行品よりも体内動態などで特徴を持つ“バイオベター”を開発しようという研究もあります。
 それ以前に、糖鎖構造を解析することは、たんぱく質医薬品の製造条件を検討したり、品質を管理したりという面でも重要です。つまり、バイオシミラーばかりでなく、抗体医薬や治療用酵素製剤など、たんぱく質医薬品の研究、開発、生産のすべてのプロセスにおいて、糖鎖構造解析を行うことが、研究開発の効率化や、安定した品質の確保などにつながると考えられるわけです。
 これまでは、糖鎖の構造解析は難しく、特殊なノウハウが必要といわれてきましたが、解析を容易にする試薬や装置なども幾つか出てきていますし、受託解析を行う企業も登場しています。抗体医薬やバイオシミラーなどの研究開発に乗り出す企業が増えるのに伴って、糖鎖構造解析ビジネスの引き合いも増えてきているということです。
住友ベークライト、糖鎖構造解析の前処理キットの売上高が順調に拡大、培養上清中の目的たんぱく質だけの糖鎖構造解析も可能に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6072/
島津製作所、質量分析計の分析データで糖鎖構造推定するシステム製品化、抗体医薬、バイオ後続品の研究支援
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2068/
 また、環境が異なると変化する糖鎖の構造をモニタリングすることで、iPS細胞やES細胞などの細胞の状態、分化度などを判別できる可能性もあり、そうしたコンセプトの研究も進められています。iPS細胞の状態をモニターする技術としては、エピジェネティクスの変化やマイクロRNAの発現を調べるといった手法も検討されていますが、糖鎖構造解析も有力な技術と思われます。
産総研、糖鎖構造で未分化のiPS細胞/ES細胞と分化した細胞との判別が可能に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6074/
 糖鎖研究は日本が海外をリードしている分野です。日本の製薬企業はバイオ医薬品の研究に取り組むに当たって、その地の利を生かせる立場にあります。今、日経バイオテク・オンラインでは、「日本の製薬企業のバイオ再参入」をテーマとする連載を掲載していますが、再参入した日本の製薬企業が次世代バイオ医薬品で世界をリードする立場に立つためにも、基礎研究者やバイオ研究支援企業と有機的な連携を図っていってもらいたいものです。
長期連載、我が国製薬企業のバイオ再参入は成功するか?
http://biotech.nikkeibp.co.jp/NEWS/sp_show.jsp?spid=93
 ところで、本誌コラムニストとして日経バイオテク本誌のパイプライン研究や、日経バイオテク・オンラインの【解説】記事を執筆していただいている伊藤勝彦さんに、契約記者としてこれまで以上に本誌で活躍してもらうことになりました。取材先などで皆様にお会いすることもあるかと思いますが、よろしくお願いします。
【解説】日本企業発のブロックバスター候補品、2010年に承認された薬剤では3製品を予想
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6099/
2011年・記者の目、日経バイオテク・コラムニスト・伊藤勝彦、大手製薬企業の正念場となる年
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5966/
 最後にお知らせです。日経BP社バイオ部で配信しているメールマガジンの一覧画面を作りました。これを機会に、ぜひお取りいただいていないメールマガジンがあれば、お申し込みいただければと思います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/mailmagazine.html
 本日はこのあたりで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
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2010年12月に神戸で開催の「BMB2010」を特集
「BTJジャーナル」2010年12月号を発行・公開
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年12月号を昨年末(12月24日)に発行・公開しました。
 “青”コーナー「リポート」では、2010年12月7~10日に神戸市で開催された、日本分子生物学会と日本生化学会の年次合同大会BMB2010を特集しました。1万人を超える参加者が、最終日の夕方のポスターセッションまで熱心な討議を積み重ねていました。2010年は、両学会の合同開催で日本の生命科学の領域を結集することが望ましいなどの理由により一昨年に続き3回目の合同大会となりましたが、2011年は別個開催が決まりました。2012年も個別に開催される見込みです。
BTJジャーナル2010年12月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1012
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。BTJジャーナル2010年12月号のBMB2010特集記事は以下の記事の一部を元にまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインのBMB2010関連記事リスト
BMB2010、生物研、ブタの肉質と肉量に係る椎骨数支配遺伝子を特定、遺伝子診断による人工授精用精液を2011年度に実用化段階へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5704/
BMB2010、論文61報でIF計588超の超高感度たんぱく質分析、「新世代ロボットにより通常ラボで可能に」と夏目AIST主任研究員
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5686/
BMB2010、神戸の理研計算科学研究機構で京コンピュータの搬入が1%超、ポートライナー駅名は「京コンピュータ前」に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5660/
BMB2010、1分子シーケンサーで再現性が0.65から0.99へ、理研OSCの林崎領域長がFANTOM5への参加呼び掛ける
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5584/
BMB2010、siRNAの導入が困難だった細胞種にHVJ-Eベクター、石原産業が阪大と共同発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5528/
日本分子生物学会と日本生化学会、2011年度年次大会は別個に開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5520/
BMB2010、日本分子生物学会と日本生化学会の合同大会が開幕、12月10日まで神戸で開催、市民公開講座は12月11日に東京で開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5517/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。
申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年12月号(第60号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2010年12月号(第60号)
●CONTENTS
学術論文数の国内外比較 BMB2010 ベルツ賞
P.2 アカデミア・トピックス
文部科学省NISTEPが
国内外の論文数推移を比較
P.6 リポート
神戸で4日間開催のBMB2010
来年は京都と横浜で別個開催
P.11 キャリア
ベルツ賞のテーマは心不全
P.12 BTJアカデミック・ランキング
多比良氏の控訴棄却がトップ
P.13 奥付け